2019年11月7日 第45号

日本で発祥したビブリオバトルがバンクーバー公立図書館(VPL)で開催される。ビブリオバトルとは日本全国に広がっている話題の書評ゲーム。簡単なルールでパワーポイントなども利用せず、生の語りで本を紹介すれば読書がスポーツに変わる。

バンクーバーでは11月23日(土)、バンクーバー公立図書館 ダウンタウンにて、初のビブリオバトルが開催される。

 

 

ビブリオバトルとは?

 2007年、京都大学大学院の学生だった谷口忠大さん(現立命館大学理工学部教授)が、輪読会で読む本は自分たちで決めようと考案した。それまでゼミで行われていた輪読会は、課題図書を一冊決めてみんなで順番に読んでいくのだが、興味のない本が選ばれると大変なことになる。また誰かが発表して、みんなが聞くだけという勉強会も盛り上がらない。そこで『即興性』を大切にして、それぞれが探してきた本を5分間で紹介し、最後に投票でチャンプ本を決めるという現在のビブリオバトルの原型が誕生したのである。(ビブリオバトル公式ウェブサイトより)。

 2010年、正式に『ビブリオバトル普及委員会』が設立された。

 

ビブリオバトル 公式ルール

  1. 発表参加者が読んで面白いと思った本を持って 集まる。
  2. 順番に一人5分間で本を紹介する。
  3. それぞれの発表の後に参加者全員でその発表 に関するディスカッションを2〜3分行う。
  4. 全ての発表が終了した後に「どの本が一番読 みたくなったか?」を基準とした投票を参加者全 員で行い、最多票を集めたものを『チャンプ本』 とする。

 

プレゼン能力を向上させる

 初めてプレゼンをすると、うまくしゃべれない、5分間をもてあます、まとめられないなど感想はそれぞれ。ビブリオバトルは、とりあえず3回やってみることがお勧め。日本人はディベートやスピーチが苦手といわれるが、他人を批判するのではなく、ビブリオバトルは“読んだ本を紹介するだけ”。そしてチャンプ本に選ばれなくても自分が負けたのではなく、本が選ばれなかっただけ。

 「人を通して本を知る、本を通して人を知る」のキャッチフレーズ通り、読んだことのないジャンルの本に出会ったり、本を紹介する人と友達になることだってできる。

 5分という短い時間の中で本をアピールするプレゼンテーション能力、また観戦者からの質疑応答に答えるので、アドリブ力が身につくのも利点。

 現在日本では小中高校、大学、一般企業の研修・勉強会やコミュニケーション、図書館、書店、サークル、カフェ、家族の団欒などで広く活用されている。また、若い人たちがどのような本に魅力を感じているのか、出版社も全国大会の結果に注目するようになっている。

 

VPLでの試み

 「日本で英語の先生をしている方からメールをもらいました。教え子の川﨑咲花さん(15)がバンクーバーに研修に行くのですが、川﨑さんの提案でバンクーバーでもビブリオバトルを紹介してもらえないかと。ティーン・プログラムのアドバイザリー・グループで話し合い、これはいいアイディアだということになったのです」とVPLティーン向けイベント担当のイングリッドさん。

 お勧めの本についての感想を聞くことでVPLにある本の紹介にもなり、ビブリオバトルを通して新しい友達作りのきっかけにもなる。

 VPLでは毎年8月にティーン向けに『Writing & Book Camp』を開催している。読書好きだけでなく、自分で小説を書きたいティーン向けにワークショップ、小説家やイラストレーターと会う機会も設けている。この夏期講習にビブリオバトルを取り入れることも考慮中とのこと。また、ティーン以外の人たちを対象に、ビブリオバトルを広げていくことも考えているという。

 VPLでは11月23日(土)に初のビブリオバトルを開催する。対象は13歳から18歳の英語圏ティーン対象で、参加費無料。登録なしに、本を持ってきた人にその場で参加してプレゼンテーションをしてもらう。部屋はVPL内に新しくできた9階の『The Yosef Wosk Poets’ Corner』だ。「きっと楽しいものになると思います」とイングリッドさん。

 ティーンによる5分間の書評バトル。観戦者も大歓迎とのこと。

 

ティーン(13〜18歳)向けビブリオバトル(英語圏対象)
日時:11月23日(土)午後2〜3時
場所:VPLバンクーバー公立図書館ダウンタウン(350 West Georgia St. Vancouver V6B 6B1 )、9階 Yosef Wosk Poets' Corner
お勧めの本(英語)の紹介者募集中。参加費無料、登録の必要なし。観戦者歓迎。

(取材 ルイーズ阿久沢)

 

︎バンクーバー公立図書館(VPL)ダウンタウン(写真提供:VPL)

 

︎本を通して友達もできる(写真提供:VPL)

 

︎本を通して友達もできる(写真提供:VPL)

 

︎イベントポスター(提供:VPL)

 

︎『ビブリオバトルを楽しもう ゲームで広がる読書の輪』
谷口忠大【監修】
粕谷亮美【文】
しもつきみずほ【絵】
さ・え・ら書房
定価:本体1700円+税
対象:小学校上〜中学、教員
Amazon、楽天ブックスなどで購入可

 

︎『マンガでわかる ビブリオバトルに挑戦!』
谷口忠大【監修・マンガ原案】
沢音千尋【マンガ】
粕谷亮美【文】
さ・え・ら書房
定価:本体1200円+税
対象:一般
Amazon、楽天ブックスなどで購入可

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。