2019年5月23日 第21号

「スペシャリティーコーヒー」という比較的新しいコーヒーのジャンルを聞いたことがあるだろうか?

スペシャリティーコーヒーとは大量生産のできない高地で生産されたコーヒー豆をお店の中で焙煎、そしてその豆の特徴に合わせた方法でバリスタが抽出した極上のコーヒーを指す言葉で、全世界で生産されるコーヒーの中でも一部のみに許される名称だ。

実はバンクーバーは北米の中でもスペシャリティーコーヒー文化が活発な街で、スペシャリティーコーヒーを提供する店舗もかなり多いといわれている。そんなバンクーバーに住んでいると一度は見かけたことがあるチェーン店とは一味違うコーヒー店、「気になるし一度は行ってみたいけど少し敷居が高い…」なんてこともあるのでは?

今回はコーヒーの専門家であるバリスタの吉田優子さんに、初めての人でも楽しめる方法を聞いてみた。

 

エスプレッソ用の豆は注文ごとに挽いた新鮮なものを使用

 

 「働いている時はもちろん、休日でも常にコーヒーを飲んでいます」と語るのはブロードウェイ通りにあるModus Coffee Roasting Co.でバリスタとして働く吉田優子さん。サッカー選手としてバンクーバーに来て以来、コーヒー中心ともいえる生活をしてきた。「けがをしてしまってサッカーができなくなってしまった時に、大学時代からスターバックスでバイトしてきた経験を生かそうと思い、自分でいろいろ回って選んだお店でバリスタとして働き始めました」と語る彼女はバリスタ歴10年になった今でも、バリスタ仲間の知り合いから新しい豆が入荷したと聞けばすぐに飲みに行くほどコーヒーが好きだという。

 「答えがないというのが面白くて…例えば機械を使って圧力で抽出するエスプレッソは、絶対に同じ味が二度出ることがないんです。豆の挽き方、抽出時間や抽出する量を少し変えるだけで全く違う味になります。その日の湿度や気温にも左右されるので、その日最初にエスプレッソマシンを操作するバリスタが試飲して、最善のセッティングを決めてからその情報をマシンの横に書いておく決まりになっています」このプロセスは「ダイアルイン」と呼ばれ、毎回同じ味のコーヒーを提供するには必要不可欠なプロセスだという。「毎日同じ設定ではその日の気温差などによって毎日違う味になってしまうので…毎回一定の品質のコーヒーを出せるようにエスプレッソマシンを調整するのが一番難しいんですよ」

 コーヒーの専門家であるバリスタとしての訓練の一つが「カッピング」と呼ばれる特殊な試飲方法だ。同じ条件で抽出した異なる産地や焙煎の豆をスプーンですくい、すするように口の中に噴霧して味や香りの比較をする。「スタッフカッピング」といわれる従業員のみで開かれるカッピング会などもあり、細かい味の違いを見分ける感覚を養うために、バリスタはほぼ毎日カッピングの練習をするそうだ。

 吉田さんによると極上の一杯を追い求めるバリスタには、焙煎や抽出の違いをスプーン一杯の試飲によって見分けることが不可欠だという。またほとんどのスペシャリティーコーヒー店と同じくModus Coffee Roasting Co.では、ドリップコーヒーとして楽しめるコーヒー豆のメニューがあり、それぞれの豆に合わせた最適な濃さになるようグラム単位で量られたコーヒー豆をオーダー後に粉砕し、専用のはかりで時間と重さを見ながらカウンター越しの目の前で抽出してくれる。スペシャリティーコーヒーのおいしさの裏には、常にこのようにグラム単位での緻密な計算があるのだという。「同じ豆でも焙煎の仕方によっても全然味が違うので、その時の豆にあった抽出器具や抽出方法を選んでいます。スペシャリティーコーヒーは豆そのものの味がわかりやすい浅煎りが主流なのですが、これは標高の高い所で大切に育てられた品質のいい豆でないとできないんですよ」ドリップコーヒーは浅煎りの豆を丁寧に入れることにより、深煎りでは失われてしまう香りや味が引き立たつのが特徴だ。「食べ物と合わせてコーヒーを選ぶこともあるので、ワインに似たような楽しみ方かもしれません」

 スペシャリティーコーヒーの初心者に勧めたい飲み方は? と聞いたところ、それぞれの好きな飲み方でいろいろな産地のコーヒーを試して、そこから自分の好きな味を見つけてほしいとのこと。「どっしりとした重たい感じが飲みたければアジア産を、フルーティーで酸味のあるコーヒーが飲みたければアフリカ産を、バランスが取れて飲みやすいものを飲みたければ南米産。いろいろな国のコーヒーを飲んで、どの国のものが好きかを見つけてもらいたいです」とのこと。

 吉田さんの一番好きなコーヒーはエチオピア産で、「アールグレイの紅茶のようなフローラルな香りが強い」のが特徴だという。「エチオピア、コロンビア、ブラジルなどの有名な生産地の豆は基本的にどのスペシャリティーコーヒーのお店で楽しめるので、ぜひいろいろなカフェを回って飲み比べてみてほしいです」

 吉田さんによると、ロースターからスペシャリティーコーヒーの豆を購入して家庭で楽しむときは必ず豆の状態で購入し、コーヒーを入れる直前に豆を挽くのがオススメという。抽出方法もフレンチプレスかエアロプレス(2005年に開発された手動で圧力をかけて抽出する抽出器具)など、技術がなくても比較的一定の条件で抽出できる方法であれば、家庭でも好きな時においしいコーヒーが楽しめるとのこと。

 吉田さんの今後の展望は?と聞くと、いつかは自分のカフェを開業したいとか。「できれば全部1人でできるような小さいお店が良いですね…多分全部自分でやりたいんです。お菓子もコーヒーも自分で作ったものを提供したいです」過去には初心者向けのラテアート講座を開催するなど、とにかくコーヒーの楽しさを人々に伝えることをライフワークとしている。

 今回飲ませてもらったカプチーノは、小さめのグラスカップにミルクの甘みが出やすい低めの温度でスチームされていながらキメの細かいフォームとエスプレッソが絶妙なバランスで入っていて、「Modus」の看板メニューとして人気を集めている。カウンター席もあるので、コーヒーを入れてもらいながらバリスタとスペシャリティーコーヒー談義に花を咲かせるのもまた一興。

(取材 池田レイ)

 

 

吉田さんが働いているModus Coffee Roasting Co.は「コーヒー激戦区」ともいえるブロードウェイに店舗を構えている

 

一杯ごとに計量され瓶に密閉されたコーヒー豆

 

コーヒー専用のはかりで重さだけではなく抽出時間も見ながらお湯を注いでいく

 

お店の中で焙煎したコーヒーを購入することもできる(写真提供 林拓己さん)

 

スペシャリティーコーヒーらしいシンプルながら雰囲気の良い店内(写真提供 林拓己さん)

 

ミルクの甘みが出やすい低温でフォームを作るのは難易度が高く、それを用いたカプチーノは「Modus」の看板メニューとして人気を集めている

 

お店によって個性的なドリンクを楽しめるのもスペシャリティーコーヒーの特徴だ

 

 

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