2019年5月30日 第22号

スケートボードのフリースタイル競技の世界大会「ワールドラウンドアップ」が5月17日から20日にブリティッシュ・コロンビア州サレー市のクローバーデールのクローバーデール・ロデオ&カントリーフェアで行われた。今回で8回目の開催となった今年は9カ国からプロとアマチュア合わせて43名の選手が参加し、世界中のトップスケーターがそれぞれ個性あふれるパフォーマンスで観客を魅了した。日本からは7名の選手が参加し、山本勇選手が大会三連覇となるプロ部門総合優勝に加え、スピンの回数を競う『360スピンオフ』、一つの技で競う『ベストトリック』、スケートボードの上で逆立ちをする『ベストハンドスタンド』など合計4つのタイトルを獲得した。プロ部門2位には10歳の小学生スケーター川崎柚季選手、アマチュア部門では今大会唯一の女性選手として参加した土田ミレイ選手が4位につけるなど、日本勢が上位を占める結果となった。

 

見事三連覇を果たした高校生スケーター、山本勇選手

 

世界初のパフォーマンスで優勝した山本選手

 特に参加者の注目を集めたのは山本勇選手が決勝で見せた滑りだ。2本のスケートボードを使い、時には2本を重ねた上で技をするなど圧巻のパフォーマンスを見せた。大会のプロデューサーを務めるケビン・ハリス氏によると、「全ての演目を2本のスケートボードで滑ることはスケートボードの歴史での中でも前例がなく、世界初のパフォーマンスだった」とのこと。ハリス氏は今回の大会での山本選手の活躍について「フリースタイルスケートボードの歴史を変えた。歴史上初めての試みを審査員がどう評価するかがわからない中で滑りきったことはとても勇気のいることだったと思う」と終始、山本選手を含めた日本チームの躍進に驚嘆の声を上げていた。

 

オリンピック競技になれば

 今回の大会で競われたのが「フリースタイル」と呼ばれる競技で、様々な構造物を必要とする「ストリート」や「パーク」などの他のスケートボード競技とは違い、平たい地面のみで「ルーティーン」と呼ばれる一連の技で点数を競う。来年2020年からオリンピック競技として取り入れられるスケートボードだが、現在は障害物などを用いる「ストリート」と「パーク」の2競技のみで、今大会で行われた「フリースタイル」は競技としての採用がまだ決まっていない。ハリス氏にオリンピック競技として採用される可能性は?と聞くと、「もちろん競技として取り入れられる可能性は高いと思う。フリースタイルはフィギュアスケートのように誰が見ても楽しめる競技なので、もしオリンピックに採用されれば多くの人が見るようになる。もしオリンピック競技になればスポーツとしての認知度や普及度も上がるので、フリースタイルスケートボードの未来はとても楽しみ」と期待を隠せないようだった。

 

女の子のスケートボーダーを増やしたい土田選手

 今回日本チームだけではなく大会全体で唯一の女性選手として参加した土田ミレイ選手は昨年から7位順位を上げアマチュア部門4位という結果を残した。「準決勝から順位を下げずに4位入賞ができて良かったです」と話す彼女はストリート競技からフリースタイルに転向した。土田選手にフリースタイル競技の特徴について聞くと、「わずかな平たいスペースでできる気軽さと、ほかの競技では使わない(スケートボードの)部分や、ボードの上で逆立ちなど『フリースタイル』の名前の通り自由にできるのがフリースタイルの特徴と良さ」だという。「スケートボードは男の子が多いので、女の子のスケートボーダーを増やしていきたいのと、ストリートやパークの他にもフリースタイルのようにいろいろなジャンルがあるっていうことを広めていきたいと思います」と今後の展望を教えてくれた。

 

親子で参加した藤井裕大選手、雅博選手

 親子で参加し、それぞれ8位と9位入賞を果たしたのが藤井裕大選手と、その父である藤井雅博選手だ。藤井雅博選手は日本で選手として活躍するのみでなく、自身が運営するウェブサイトでの執筆や日本各地でのイベントの運営を通してフリースタイルスケートボードの普及活動に力を入れている。「他のスケートボード競技と比べてもフリースタイルは比較的安全なので、老若男女誰でもそれぞれのレベルで好きな技を磨き、自分の成長を感じられ初心者でも楽しめる。狭いスペースでも始められるので、他のジャンルのスケートボードにつながる基礎も付きやすい」とフリースタイルの魅力を説明してくれた。

 藤井雅博選手に日本チームの強さの秘訣を聞くと、「スケートボードを日本に持ち込んだ私たちの世代が、若い世代の選手に練習方法を教えたり、練習している姿を見せたりすることで、競技を始めてから早い時点でスポーツとしての練習の仕方を学べていることと、同じ世代でのライバルが多いので、自然にお互いから学べる土壌がある」とのことだ。日本チームを取材している中で選手たちが口を揃えて言っていたのが、このライバル同士での競争だ。国内外の大会の中だけではなく普段からお互いに切磋琢磨できる環境が日々新しい技の発展を生み、個性あふれる滑りを生み出している。

 今回初めてプロ部門に出場した13歳の中学生スケーター藤井裕大選手は「アマチュア部門とは比べものにならないくらいレベルが高く、技とかがかっこいい人が多くいたので、観客の数も多くてとても緊張しました」と決勝の様子を語り、「いろいろな個性のある技を見れたので、自分の成長につなげたい」とすでにオリンピックを視野に入れつつ、未来に目を向けている様子だった。

 

スケートボードの歴史を変えた16歳の現役高校生

 プロ部門優勝を含む4タイトルを獲得した山本勇選手は体調が万全でない中の参加ながら見事三連覇を果たし、まさに今大会の主役ともいえる活躍で注目を集めた。16歳の現役高校生ながら実力は世界でもトップクラスで、1975年からカナダにおけるスケートボードの歴史を選手として見てきたハリス氏に「もしフリースタイルがオリンピックに採用されれば彼は金メダルを取れる」と言わせるほどだ。「体調があまり良くなかったのであまり練習もできなかったのですが、それでもベストを尽くせたのでよかったと思います」と話す16歳の彼に2本のスケートボードを使うことについて聞くと、「難しいから、というよりオリジナリティー重視」でやっているとのこと。「決勝でやる予定ではなかったんですけど、予選で意外と高い点数が出たので決勝でも2本を使って滑りました。フィギュアスケートのように華麗なステップやいろいろな技があり、自由になんでもできるのがフリースタイルの好きなところです」今後は引き続きフリースタイルをオリンピック競技に含めるための活動や、日本でさらに広めていくためのパフォーマンスなどをしていきたいと語ってくれた。

(取材 池田レイ)

 

 

昨年から順位を上げ4位入賞を果たした土田ミレイ選手

 

年に一度の世界大会は選手同士の貴重な情報交換の場にもなっている

 

プロ部門2位の小学生スケーター川崎柚季選手

 

2本のスケートボードを用いて圧巻の滑りを見せた山本勇選手

 

技をデモンストレーションをする土田ミレイ選手

 

週末には親子で共に練習するという藤井裕大選手(左)と藤井雅博選手(右)

 

大活躍の日本チームは大会を通してとても良い雰囲気が印象的だった

 

大会プロデューサーのモンティー・リトル氏(左)、ケビン・ハリス氏(右)、山本勇選手(中央)

 

 

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