2019年4月4日 第14号

日系文化センター・博物館(以下日系センター)で年に数回行われる古本市。2012年に日系書店『BOOK OFF(ブックオフ)』が閉鎖されてから、ここで活字補給をしている人も多いのではないだろうか。最初の古本市が開催されたのは2012年8月。寄付された本の仕分け作業は、すべてボランティアたちで行われている。現在それをオーガナイズしているのが、小笠原行秀さんを筆頭とするボランティアチームで、連絡係の小山依里さんなのである。

 

古本市ボランティアチーム代表者の皆さん (左から)桜田ジョーさん、猪腰洋三さん、小笠原行秀さん、小山依里さん、金生(かのう)正男さん

 

小山依里(えり)さん(古本屋さん・古本市)
(在加14年、サイモン・フレーザー大学心理学科卒。2014年より日系センターでボランティアを始めた。趣味はボランティア、読書など。2017年に結婚したときは来加できない祖母に代わって、小笠原さん、猪腰さんはじめ古本市ボランティアメンバーが多数結婚式に出席した)

日系センターでボランティアを始めたきっかけは?

 大学に入った際に授業が忙しくアルバイトをする余裕がなかったのですが、少しでも外に出て何かしたかったので、自由のきく日系センターのイベント・ボランティアに登録しました。

 最初に本の仕分けと古本市のボランティアに参加した際に、その労力や本の多さに驚愕し、これはちょっと手が回らないんじゃないかと。片付けも深夜まで終わりませんでした。ただ本は好きだったので、次の古本市も手伝いました。学生時代は英語漬けで、時々触れる日本語や日本語の本に癒され(?)、本の仕分けボランティアを定期的にするようになったのです。

古本市の準備はどのようにしているのですか?

 基本的には日系センターのスタッフが日程を決めて、私や小笠原さん、猪腰さんと倉庫の本の量などを見て準備期間を決定します。だいたい2〜3週間です。その後小笠原さんからシニアの方を中心に声をかけていただき、私は古本屋さんのレギュラーメンバーに声をかけ、日系センターのボランティア・コーディネーターも登録者に連絡して、3ウェイで人集めします。

 小笠原さんは全体の舵取り、猪腰さんは主に片付ける際の旗ふり役や、本のセクションのレイアウトなどを考えるという感じです。私はおふたりのお手伝いみたいな感じです。

古本屋さんがオープンした経緯は?

 ブックオフの閉鎖に伴い約2万5千冊が寄付され、その後も寄付が増えていき倉庫がいっぱいになりました。そこで桜楓会のスポンサーもあり、日系センター2階の部屋の1つを本屋にすることになり、2016年4月に古本屋さんがオープンしました。

 小説の単行本、文庫本、マンガ、児童書、教育や趣味の本、他にもさまざまな本(約1万2千冊)を取り揃えています。部屋に入りきらない文庫、新書や政治・経済・自己啓発などの本、雑誌、CDやDVDは、年に3回行われる古本市と、日系祭りにて販売しています。

古本屋さんはどのように管理していますか?

 古本屋さんは99%ボランティアで運営しています。以前にベンチャー志向の会社で働いていた当時のノウハウなどを少し盛り込んで、どうやって効率良くお店(チーム)をマネージしていくかを考えながら、本を通じて日系コミュニティに貢献できるように頑張っています。

 基本予算も何もなく、ボランティアさんもいつも見つかる、毎回来れるというわけでもなく、私個人も他に仕事をしていますのでいろいろチャレンジですし、厳しいご意見もあると思います。3カ月以上ボランティアできる方でパソコンが使える、本の整理ができる日本語レベルの方はぜひ参加してください。

 

小笠原行秀(ゆきひで)さん(古本市)
(在加51年。神戸商船大学一期生卒業。1956年川崎汽船入社。1968年カナダへ移住。丸太の荷済み・船積み監督として働く傍ら、日本から練習船が寄港するたびに歓迎委員を買って出た。80歳で退職。現在85歳)

ボランティアを始めたきっかけは?

 古本市に行ったらテーブルの上にたくさん本が広げてあり、整理ができていなかったのです。2015年4月でしたか、日系センターの方とミーティングし、見やすいようにしようと本の整理を始めました。

本の出し入れも大変な作業と察しますが。

 今使っている空き箱はテーブルに6つ乗るし、陳列にも収納にも使っています。やっているうちにできた知恵ですね。本の出し入れは、日系センターのファシリティースタッフ(設備担当)と相談しながら行っています。

 お客さまから「本が探しやすくなった」とお褒めの言葉をいただくと、励みになります。整理をしながら、ほしい本があったらすぐに買えるのもいいですね。

 バンクーバーの日系人は知的文化レベルが高いと思います。何よりも、皆さんに喜んでいただけるのが一番です。

 

猪腰洋三(いのこしひろみ)さん(古本市)
(在加51年。主に鉄工所で働いたあと63歳で早期退職。その後は毎年旅行を主にしてきた。『歌声喫茶』世話役。現在72歳)

ボランティアを始めたきっかけは?

 2016年2月から古本市を手伝うようになりました。きっかけは小笠原さんからの勧誘でした。ちょうど何かをしてもよいかと思っていた時でしたので、加わりました。

やってみてよかったこと、またどんなことが大変ですか?

 シニアになると外出する事自体珍しくなりますので、ある面では自分のためと思っています。ほかの人たちとの交流もでき、休憩のお茶タイムも楽しいです。本を整理して、いかにして来た人たちにアピールし買ってもらうか、何をほしいと思っているのか。そういうことをみんなで考えるのは大変ですが、楽しいものです。

 本の仕分けはやり始めたらゴールがないような作業ですので、どこまでやるかが大きな課題と思います。もちろん、空き箱に詰めた本はかなり重たくて、運ぶには体力が必要です。決して自分だけがしているとは思っていなくて、みんなでワイワイガヤガヤやっていると思えば、気持ちの良い汗をかきます。他人のためにしていると思うより、自分のためと思えば気持ちが楽です。

 

古本屋さん:
水曜日午後1時から5時、土曜日午前10時から午後3時(予告なく時間変更の場合もあり)に日系文化センター・博物館2階の部屋で営業。選んだ本を店番の人に見せてから1階受付で支払い(現金)、領収書を持って2階に戻り本を受け取るシステム。本の寄付は1階受付もしくは古本屋さんまで。

古本市・古本屋さんボランティアの申し込みは:
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電話(604)777-7000(一般受付)。
本に関するお問い合わせはThis email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it.まで。

(取材 ルイーズ阿久沢)

 

 

古本市、準備中

 

仕分けされた本が並ぶ古本市

 

日系センター2階の古本屋さん

 

本の仕分けの合い間にみんなで休憩、お茶タイム

 

読者の皆様へ

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