2018年8月9日 第32号

バンクーバーの夏の風物詩ともいえるパウエル祭が、8月4日、5日の2日間にわたって開催された(メディアスポンサー:バンクーバー新報)。昨年の約1万7千人を超す来場者が訪れ、まぶしい夏の光の中で祭りの雰囲気を楽しんだ。

 

楽一による神輿。パワフルな担ぎに来場者の目は釘づけに

 

今年も盛大に開催

 8月4日の開会式は、日本語、英語、フランス語に加えて手話でも進行され、多様文化都市バンクーバーを象徴するかのようだった。式はスレイ・ワートゥス族のマーガレット・ジョージ氏による祝辞で始まった。その後、来賓として招かれた、岡井朝子在バンクーバー日本国総領事、メラニー・マークBC州政府議員(バンクーバー・マウントプレザント地区)、ジェニー・クワン連邦政府議員(バンクーバー・イースト地区)、ヘザー・ディール・バンクーバー副市長、レベリー・アーキテクチャー社の本間しのぶさん、そして、パウエル祭協会会長のエドワード・タカヤナギさんがそれぞれ挨拶に立った。岡井総領事は、日本文化をカナダの社会に紹介するために始まったパウエル祭が、歴史を重ねるうちにさまざまな文化団体や芸術家等が関わることによって、伝統的な文化にとどまらず、新しい形の文化を創り出していることを感じると語った。そして、バンクーバーの総領事として訪れるのは最後となる今年のパウエル祭を、来場者同様に楽しみたいと述べた。

 

盛りだくさんの内容

 車両通行止めになった通りに並ぶベンダーには人だかりと行列ができ、活気にあふれていた。オッペンハイマー公園に設置された子どもテントでは、折り紙、風車づくりなどのクラフト、フェイスペイントにたくさんの子どもたちが集まり、スイカ割りや綱引きなどのアクティビティを楽しんだ。

 ダイヤモンドステージ、デモエリア、ストリートステージ、ファイヤーホール劇場、バンクーバー日本語学校、バンクーバー仏教会など、オッペンハイマー公園周辺のあちこちで、多彩なパフォーマンスやデモンストレーション、展示が行われ、どれを見ようか迷ってしまう豊富なラインナップ。日本人、日系人だけでなく、多様な人種的バックグラウンドを持ったアーティストが多いのも特徴的だ。

 

日本からは「からころ」が出演

 大阪を拠点に活動する「からだとこころの出会いの会(通称:からころ)」の皆さんが出演、沖縄の伝統芸能であるエイサーを披露した。約100人のメンバーのうち、バンクーバーを訪れたのは68人。8月4日は伝統的なエイサー、5日は創作エイサーを踊った。中国の影響を受けているという沖縄の獅子舞や龍が登場するなど、多彩で圧巻のステージで会場を盛り上げた。この「からころ」の成り立ちについて、同会代表の松井洋子さんは、「日本がバブル期に入る頃、教師が子どもたちとうまく関われずに自信をなくして、うつ病などを患うケースを多く見ました。そんな先生たちが抱えている問題を、演劇やミュージカルでパフォーマンスすることになったのが始まりなんです」という。そのうちに、子どもたちも参加するようになって、幅広い世代を抱える大きな会に成長していった。その後、戦争という問題に関心を持つようになり、アウシュビッツを訪問していっそう平和への関心が高まった。その後、日本で唯一、地上戦が起きた沖縄に毎年のように訪れて、沖縄の文化とエイサーの勉強をするようになったのが、今のエイサーのパフォーマンスにつながっていく。カナダでの公演は10年ほど前からで、トロント、ナイアガラ・オン・ザ・レイクや、ウィニペグで公演を毎年行ってきた。バンクーバーには初めて訪れたという。カナダの観客については、「反応がストレートに返ってきますね。拍手もすごいし、スタンディングオベーションもあったりと、反応がこちらにもすごく響いてきて、やりがいがあります。お客さんと私たちが一緒に盛り上がっていく感じです。メンバーたちは1年間頑張って働いて、このためにお金を貯めて来ているので、このような反響はとても励みになります」と語った。

(取材 大島多紀子)

 

 

パウエル祭のデザイン・コンペティションで優勝した「からかさおばけ」。サイモン・フレーザー大学の美術学生たちが製作した。ハンドルを回すと傘が開く仕組みになっている

 

岡井朝子在バンクーバー日本国総領事

 

岡井朝子総領事(中央)、左からメラニー・マークBC州政府議員、マーガレット・ジョージ氏、ヘザー・ディール・バンクーバー副市長、1人おいて、 ジェニー・クワン連邦政府議員、パウエル祭協会会長のエドワード・タカヤナギさん、 レベリー・アーキテクチャー社の本間しのぶさん

 

武神館Taka Seigi道場(写真)など、武術のデモンストレーションも多数あった

 

場内にはダルマが歩き回り、来場者が一緒に写真を撮っていた。こちらの浴衣姿の女性たちは「青SHUN学園カナダ校」の出演者でもある

 

人気アクティビティーのひとつ、マクロ巻きインスタレーション。巨大スシの一部になってみる参加者たち

 

日系カナダ市民協会による豪快なサーモンBBQは毎年大人気

 

「日本の文化が大好きです」と日本語を交えて話してくれたシュウさん。パウエル祭も目いっぱい楽しんでいた様子

 

浴衣姿がとてもキュートな姉妹。左から華椰(かや)ちゃん、早紗(さしゃ)ちゃん、惠椎(けいしゃ)ちゃん。ヨーヨー釣りを特に楽しみにして来たとのこと

 

子どもたちに人気のスイカ割り

 

行列に対応すべくフル稼働のフードベンダーさん

 

音羽流日本舞踊会による舞踊ではステージ前にカメラを構えた人でいっぱいに

 

バンクーバー生け花協会の実演。生け花の展示も同時に開催

 

からころによるエイサー踊りに登場したのは、沖縄の獅子舞。体全体が毛におおわれているのが特徴

 

日本の民謡やイギリスの歌曲を熱唱したさくらシンガーズ(写真 Patrick Li)

 

2歳から70代までという幅広い構成員のからころ。楽しんで踊っているのが分かるような弾ける笑顔が印象的。沖縄の音楽がバンクーバーの青空によく合う

 

鬼花太鼓は2016年に結成。民謡や祭りなどのエッセンスとパンクの美学を取り入れたユニークな演出が特徴。舞台では阿波踊りも(写真 Miyuki Nakamura

 

VAJC日本語文化学院のバトン・ポンポンクラブのメンバーによるダンス(写真 Miyuki Nakamura

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。