2018年7月26日 第30号
カナダの歴史と文化がしっかり詰まった首都オタワ。夏になると、赤やピンクや黄色といった色鮮やかなハンギングフラワーが軒先にずらっと並び、ダウンタウンを歩くだけでも、童話の世界に飛び込んでしまった気分になる。ネオゴシック様式の立派な建築物や、ヨーロッパ風のカフェにショップ、そしてたびたび耳に入ってくるフランス語。西海岸から観光にきた人たちは「ここは本当にカナダ?」と驚くほどだ。本紙では、オタワのオススメ観光スポットを紹介する。
Sussexドライブ
大使館が立ち並ぶ地域で有名なSussexドライブ。日本大使館を含め各国の大使館を見ながら、最終目的地となる24 Sussex首相公邸まで行くのも興味深いだろう。街の中心部となる国会議事堂からは、約3キロの距離なので、車でなら5分と簡単に官邸にアクセスできてしまう。1950年にカナダ政府が購入し、首相公邸として使用されるようになっている。歴代の首相家族が任期中に住んでいるが、1868年に建築された歴史ある邸宅だけに、老朽化が進んでおり、現在は修繕中。アスベスト(石綿)問題もあり、ジャスティン・トルドー首相一家が任期中に公邸に戻る可能性は低いといわれている。現トルドー首相は、幼年期をここで過ごしている。
カナダ総督公邸「リドーホール」
前述した首相公邸(24 Sussex)の目の前にあるのが、カナダ総督公邸リドーホール。カナダ総督とはカナダ国王・女王(現在イギリスのエリザベス2世)の代理であり、5年の任期制。昨年10月2日にフランス系カナダ人の元宇宙飛行士であるジュリー・ペイエット氏が着任。無料で公邸内のツアー(所要時間45分)があり、夏には、衛兵交代式も行われている。1867年から、総督公邸として使われている。
カナダ国会議事堂
1858年にビクトリア女王がオタワを首都に選定し、1859年から1866年にかけて建築されたネオ・ゴシック様式の国会議事堂。毎夏午前中には、カナダ騎馬警官隊による衛兵交代が行われる。1959年からこの衛兵交代式が始まり、今もなお続いている。今年の衛兵交代は午前10時、6月25日から8月23日まで。
また国会議事堂内へも入館可能。無料ツアー(所要時間20〜50分)は、年間を通して行われている。当日の議事堂内の予定によってツアー内容は変わってくるが、上院、下院、国会図書館などを案内してもらえる。中心部にあたるピースタワーの展望台からは、オタワ市や対面側にあたるガティノ市(ケベック州)のパノラマビューが絶景。無料ツアーのチケットは、国会議事堂前にあるオタワ観光局(90 Wellington Street)で入手可能。今の時期、観光客で賑わっているため、議事堂内へのツアーに参加できない場合は、議事堂周辺を歩いてみるのも楽しいだろう。きれいな遊歩道が整備されているので、ゆっくりと観光できる。
バイワードマーケット
新鮮なローカル野菜や果物、メープル産物など、活気にあふれるバイワードマーケット。バンクーバーのグランビルアイランドに似ているが、大きな違いといえば、こちらは1826年から始まった古い歴史のあるマーケットであるのと、フランス語が頻繁に飛び交っていることだろう。ファーマーの多くがフランス系カナダ人であるので、売り手と買い手の間で、フランス語と英語のちゃんぽんで会話が成立しているのも、オタワならでは。衣料品やアクセサリーから、おしゃれなカフェにレストラン、パブにクラブなど、観光客だけでなくローカルの間でも人気のマーケットだ。
冷戦博物館
国定史跡に指定されているディーフェンバンカー冷戦博物館。1959年から61年にかけて、当時の首相ジョン・ディーフェンバンカーが、極秘に核シェルターとして建設。カナダが核攻撃を受けた場合には、政府と軍の高官のみがここへ移り、地下から国を動かせるように設計。広大な草原地帯に、ぽつんとある倉庫が入口となっており、外から見たら、地下4階建ての巨大なシェルターがあるなんて想像もできないだろう。冷戦博物館としては1998年にオープン。当時の緊張感漂う様子を現在に至るまで伝えている。国会議事堂から約40キロ、車で約30分ほどのカープ地区にある。
自然博物館
カナダの国立博物館の中でも一番古い歴史を持つ自然博物館。世界中の自然博物館を回っている友人のスイス人地球科学者が、「オタワ自然博物館のレベルの高さは世界一だ」と称賛していたほどなので、自然に興味があるのなら、足を運ぶ価値はあるだろう。恐竜の化石のコレクションが有名だが、それ以外にもカナダならではの地質、水、化石、鉱物、ほ乳類、鳥類、昆虫といった、カナダの自然を楽しく学べるシステムになっている。
歴史博物館
カナダの歴史に触れたいなら、歴史博物館に行ってみたい。原住民の歴史に焦点を当てた1階は壮大なトーテムポールが立ち並び、迫力満点。2階は子供博物館。遊びを通して人類史が学べるようになっている。畳張りの趣のある日本の部屋には、折り紙で遊んだり着物を着てみたり、ちょっとした日本の文化に触れることができる。エジプトセクションに行くと、ラクダの上に乗ってから、迷路のようなピラミッド内へ入れるようになっていたりと、なかなか工夫されていて面白い。IMAXシアターも併設してある。
現代に至るまでのカナダ史が学べるのが3階と4階。3つの時代カテゴリーに分けて紹介され、ストーリーパネルやバックグランドミュージック、そして展示物を通して当時の生活を上手に再現。タイムトリップした気分になる。子供も大人も、一日中楽しめる博物館である。
(取材 小林昌子)
24 Sussex 首相公邸(Photo/ National Capital Commission)
カナダ総督公邸リドーホール(Photo/ National Capital Commission)
カナダ総督公邸リドーホール内(Photo/ National Capital Commission)
国会議事堂前(Photo/ Canadian Heritage)
国会議事堂(Photo/ Canadian Heritage)
バイワードマーケット
ローカル野菜が立ち並ぶバイワードマーケット
ディーフェンバンカー冷戦博物館
遊びを通して人類史を学ぶ子供博物館
歴史博物館(Photo Credit: Canadian Museum of History)
子供博物館では折り紙の体験もできる(Photo Credit: Canadian Museum of History)
自然博物館(Photo ; Martin Lipman, Canadian Museum of Nature)
自然博物館(Photo ; Martin Lipman, Canadian Museum of Nature)
自然博物館(Photo ; Martin Lipman, Canadian Museum of Nature)