2018年2月22日 第8号
「がんばーっ!」―かけ声が体育館に響き渡る。
UBC Japan Association(ジャパンアソシエーション)主催の「運動会」が、2月10日、ブリティッシュ・コロンビア州のブリティッシュ・コロンビア大学(University of British Columbia)で行われた。参加者は52人。寒さが際立つ2月に、温かい声援が響き渡った。
甲子園球児のように、試合開始前に宣誓をする、立命館大学の交換留学生で椿チーム代表の高橋さん(右)と、桔梗チーム代表の成本さん(左)
UBC Japan Associationはブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)で、日本文化を発信する団体である。その活動は1963年から始まり、現在に至るまで約55年の歴史がある。創立当初は「日本人学生団体」として、UBCに通う日本人留学生の交流を活動目的とするものだった。しかし、時代とともに交流の幅を広げ、「日本に興味のある人たち」に日本文化を発信するまでに拡大した。その活動の一環として、今回運動会が行われた。
運動会は参加者を「椿」、「桔梗」、「銀蘭」の3チームに分けて、全部で4競技が行われた。最初の競技は、二人三脚リレー。チーム内でペアを組み、体育館の端から端まで走り、次のペアにバトンタッチをする。ころぶ人たちが多数いる中で、軽快なリズムで激走し、一際目立つペアもいた。うまくできず苦戦するペアには「がんばれ!」と温かい声援が送られた。
競技の2つめは、日本の小学校に通ったことがあるなら誰しも経験したことがある、ドッジボールだ。速球を投げる人もいれば、俊敏な動きで球を避ける人もいる。そんなスーパープレーはこの日の参加者たちを魅了した。
3つめの競技となった綱引きでは、他競技とは違い、チーム全体で同時に動くため、チームワークが重要なかぎとなる。「エイサー!ホイサー!」のかけ声で綱を引くリズムを図るチームもあれば、試合直前に「オーッ!」と円陣を組むチームもあったりと、チームそれぞれの結束の仕方を見せた。勝ったチームが全員でハイ・タッチをする光景は、とても印象的なものだった。
そして、競技のフィナーレを飾ったのは、「借り物競争」ではなく「借り人競争」だ。各チームで選ばれた代表者がスタートラインに立ち、合図とともに「お題」の書かれた紙に向けてダッシュする。そして、お題に合った人を参加者の中から「借りて」、ゴールへ走らなくてはならない。お題には「自称面白い・かっこいい人」「一番スポーツが上手そうな人」などがあり、参加者は、がむしゃらにゴールを目指した。
4つの競技全てを終えるまで、会場は笑顔と歓声に包まれていた。今回何よりも際立ったのは、参加者の多様性である。UBCに通う日本人の学生もいれば、立命館大学や青山学院大学などの留学生も多数参加した。その他にも多人種の学生たちが参加し、国境・人種を超えたイベントとなった。
実は、この「多様性」に今回のイベントの本来の目的が隠れている。UBC Japan Associationの幹部であり、このイベントの主催、企画・運営の指揮をとった高橋レイナさんは「言葉が喋れなくてもスポーツを通して友達ができた」という自身の経験が、今回のイベントを主催するにあたって大きく関与していると話した。彼女は幼少期は日本で育ったにもかかわらず、中学校、高校ではベトナムのインターナショナル・スクールに通った。高橋さんは急に英語の教育環境に身を置くことになり、日本語しか話せず、当時は言語の壁を感じていたと言う。「日本人と日本に興味がある異国の人々を、くっつけるにはどうすればいいか」と自問したところ、自身の経験を生かした「運動会」という発想にたどりついたそうだ。
「日本に興味があって参加した」というカナダ人のフォックスさんは、「日本人との交流が楽しかった」と運動会を満喫した様子だった。「いままでUBC Japan Associationのイベントに来ていた人も、初めて参加した人たちも楽しめたようだ」と、高橋さんは語った。
(取材 周 センジェー)
(写真提供 UBC Japan Association)
ドッジボールの試合前に円陣を組む椿チーム
ドッジボールの試合前に円陣を組む銀蘭チーム
ドッジボールで奮闘する桔梗チーム
軽快なリズムで二人三脚をする様子
「エイサー!ホイサー!」とかけ声を出しながら、綱引きで奮闘する椿チーム
「エイサー!ホイサー!」とかけ声を出しながら、綱引きで奮闘する椿チーム
綱引きで最後尾を任されたフォックスさん
ドッジボールで活躍するフォックスさん
今回のイベントの企画・運営を指揮したUBC Japan Association幹部の高橋レイナさん