2018年2月15日 第7号

9歳でカナダ政府にギフテッドと認定され、12歳で小学校からハイスクールに飛び級進学。さらに14歳でハイスクール卒業およびブリティッシュ・コロンビア大学 (UBC)、マギル大、トロント大など5大学に奨学金付きで合格した大川翔さん。現在UBCサイエンス学部4年生の大川さん(18)に勉強法や将来の夢について聞いた。

 

大川 翔さん

 

勉強法や将来の夢

カナダに来てから英語を学んだそうですね?

 5歳の春から毎日、近所のお姉さんたちから大量の読み聞かせをしてもらい、夏休みが終わったころになんとか光が見えてきたのだと思います。僕の経験からすると、語学のマスターに必要なことは、読み聞かせ・読書による大量のインプット、そして人前で話す・書くといった大量のアウトプットということになると思います。量は質に変わるという感じです。

9歳でギフテッド(天才児)と認定されたときはどう受け止めましたか?

 特別な気持ちはありませんでした。ちょっとだけワクワクしましたが。特別理解力が高かった自覚はありません。ただ、ほかの生徒と比べて算数が異常にできる状態ではありました。でもこれは日本の中学受験の勉強をしていたためだと思います。

 ちやほやされるなんてこともありませんでした。そもそも、ESLとか算数やリーディングの苦手な子用とかいろいろな取り出し授業があるので、僕がギフテッドでその取り出し授業に行っているってことを知らない子も結構いたかもしれません。

ギフテッドプログラムではどんな勉強をしましたか?

 小学校時代は、例えばシェークスピアを原文で読んでイギリス発音をまねて劇を演じたり、シェークスピア劇を観に行ったり、数学コンテストの準備のための講義を受けて問題をみんなで解いて発表し合ったり、うそ発見器を作ったりなど。現役の作家や大学教授の話を聞きに行くなんていうのもありました。

空手は黒帯。運動神経もよいほうですか?

 自分では特にそうは思いません。空手は週3回道場に通い、型の練習は国際明武舘剛柔流空手道連盟舘長の八木明人先生をイメージして毎日稽古していました。ピアノと同じく、毎日続けるのが大事だと思います。空手で呼吸法も習ったのですが、集中力を上げる、健康、脳を鍛えるという意味でも良かったと思います。

自分から進んで勉強するのですか?

 小学校時代は母が立ててくれた中学受験の勉強計画を実行しました。毎日やることが決まっていたので、あまり考えずに勉強できたと思います。高校に入ってからは徐々に自分で計画を立て、実行していました。わからない箇所があるとそのままにしておけないタイプです。

 僕は親から「勉強しろ!」って言われたことはないんですが「早く寝ろ!」っていうのはよく言われてました。普通、子供が勉強したり本読んだりしたら親は喜ぶもんだって聞くんですが、うちの親はその点ちょっとおかしいのかもしれません(笑)。

日本の中学に合格したものの、カナダでの飛び級を選択しましたね?

 渋谷幕張中学(帰国子女枠)に合格したときは大変悩みましたが、カナダで飛び級を選択したのも、高校時代に生徒会の選挙に出たのも、大学で学生会の選挙に立候補したのも、失敗してもいいから挑戦してみようという気持ちからです。

 僕の座右の銘はジャンコクトーの言葉 “青年はけっして安全な株を買ってはならない” です。リスクを取って挑戦すること、これが僕の信条です。

大学生としてどんな生活を送っていますか?

 1年のときにサイエンス学部の学生代表に選ばれ、その後は仲間と一緒にボランティア団体を立ち上げたり、学生研究を支援する団体に所属して活動してきました。

 研究の方は1年の夏はバンクーバー総合病院でpathology分野で、2年の夏からはUBCのMedical Genetics分野の教授の下、研究に携わらせていただいています。3年からはオナーズの課程に入りました。3年(2017)の1月には幸運なことに選ばれて、ハーバード大学で学部生研究発表をさせてもらうことができました。

 また日本に一時帰国したとき、京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授を訪問し、3年の5月から6月にはサンフランシスコにあるグラッドストーン研究所で山中伸弥教授のもと、NAT1(*)の研究のお手伝いをする機会を得ました。最先端の研究の仕事という貴重な体験でした。その際は高橋和利先生から直接、実験技術を教えていただき、とても感謝しています。

 スケジューリングは得意な方なのかもしれないですが、なかなか思うようにはいきません。1日24時間では時間が足りないです。

(*)NAT1山中伸弥教授の研究グループによりNat1というタンパク質がマウスES細胞において、分化を誘導するタンパク質の翻訳translation(生合成)を促進することが解明された。この研究成果は、ヒト多能性幹細胞(iPS/ES細胞)をより安定的で多能性の高い基底状態へ性質を変化させるという研究を、さらに進めると期待されている。

勉強法をアドバイスをするとしたら、どんな点でしょうか。

 僕はグレード1のとき、英語クラスで最下位グループでした。結局、ネイティブと同じ量を読んでいても追いつけないと感じたので、その後は英語の本を読んで読んで読みまくりました。いつも本は持ち歩き、いつでも読めるようにしていました。

 結果として、英語クラスで最上位グループに昇格することができ、スピーチ・コンテストやライティング・コンテストで優勝、本屋さんから棚に置く書評を書くというアルバイトが舞い込むほどになりました。ここまでできたのは、このままではまずいという危機感だったと思います。危機感というのは、自分の能力を引き出すきっかけになります。アドバイスするとすれば、危機感を持つことでしょうか。「艱難汝を玉にす」Adversity makes a man wise.ですね。

将来の夢は?

 夢は世界にある謎を解くこと。つきたい職業は研究者ということになるんでしょうが、謎解きができるならどんな職業でもいいんです。

 日本に一時帰国したときに、神の手と呼ばれる心臓外科医の南淵明宏先生、将来のノーベル賞候補といわれる金髪ロンゲの天才物理学者、多田将教授、楽天の執行役員で理論物理学者でもある北川拓也博士、エピジェネティクスの第一人者、九州大学副学長・九州大学防御医学研究所の佐々木裕之教授、京都大学iCeMS教授の斎藤通紀教授に、またアメリカでは、スタンフォード大学で中内啓光教授にお会いすることができました。先生方がどういう研究、活動をしているのかについて、いろいろ教えていただきました。素晴らしい機会をいただけて、深く感謝しています。

 

お母さまからのコメント:カナダでは18歳で大人扱いですが、日本人感覚では20歳までは親の責任。それまでは生活習慣を含めしっかりと、と思っております。20歳の段階で、自分の進む道を自分で見つけられるようになってほしいですね。大事なことは、皆と協力して新しいことに挑戦していくことができるようになること。翔が好きな道に進んで社会に貢献できるのであれば、こんなに幸せなことはないと思います。

 

大川 翔(おおかわしょう):1999年生まれ。5歳のときカナダへ。9歳でカナダ政府にギフテッドと認定されて以降12歳で公立高校に飛び級進学。2014年6月に14歳で高校卒業およびUBC、マギル大、トロント大など5大学に奨学金付きで合格し話題となる。2015年1月、カナダ政府からカナダ総督アカデミック・メダル賞を受賞。現在UBCサイエンス学部4年生。 著書に『ザ・ギフティッド 14歳でカナダのトップ大学に合格した天才児の勉強法』(扶桑社)がある。学研ジュニア新聞で『大川翔のアイディア発明所』連載中。2018年2月6日に『僕が14歳でカナダ名門5大学に合格できたわけ』(学研プラス)を出版。

 

(取材 ルイーズ阿久沢 写真提供 大川翔さん)

 

 

著書『僕が14歳でカナダ名門5大学に合格できたわけ』(学研プラス)Amazon (日本) で購入可

 

エピジェネティクスの第一人者、九州大学副学長・九州大学防御医学研究所の佐々木裕之教授より説明を受けた。 (注)epigeneticsとは「DNAの配列に変化を起こさず、かつ細胞分裂を経て伝達される遺伝子機能の変化やその仕組み」または「それらを探求する学問」のこと

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。