2018年1月11日 第2号
ブリティッシュ・コロンビア州の州都、ビクトリアを拠点に活動して15年目のバレエ・ビクトリア(以下BV)。ポール・ディストルーパー氏(以下D氏)が2007年より芸術監督:ディレクターに就任し、多くの卒業生がBVに入団している、ビクトリアのバレエ学校:ビクトリア・アカデミー・オブ・バレエ(以下VAB)も運営している。現在は5名の日本人ダンサーが在籍し、バレエ公演に出演している。BC州レベルストークへ『くるみ割り人形』公演ツアーで訪れた皆さんに、話を聞いた。
レベルストークに『くるみ割り人形』公演ツアーで訪れたバレエ・ビクトリアの皆さん
(前列左より)篠田萌音さん、渡辺優衣さん、(後列左より)早田ひめさん、小林莉沙さん、加藤亜実さん
質問1. ダンサーへの経緯やカナダに来たきっかけ、今も同地で活動している理由は?
質問2. 現在のダンサーとしての活動内容や信条は?
質問3. 仕事以外の活動(趣味など)は?
質問4. これからの抱負は?
小林 莉沙(こばやしりさ)
小林莉沙さん (写真提供:小林莉沙さん)
東京都出身。3歳からバレエを始める。中高生時代に北米への短期留学を何度か経験。腰の故障により一時期バレエを中断するも、一年半後のバレエ復帰後にカナダのVABに入学する。同校卒業後2011年にBV入団。
質問1.私にとって踊ることは、なくてはならない大切なことです。辛いこともたくさんありますが、バレエなしの人生は考えられません。ここカナダで、バレエダンサーとして仕事ができることを誇りに感じると共に、多くのサポートがあってここに居られることに心から感謝しています。
質問2. BVは毎年ダンサーの入れ替わりがあり、ダンスパートナーの男性ダンサーが変わることが多いです。新しい相手との息の合った踊りができるようになること、信頼関係を築くことは大きなチャレンジであり、とてもやりがいを感じます。
質問3.BVの附属スクールのバレエ・ビクトリア・コンサバトリーで、子供たちにバレエを教えています。指導するということが、いかに自分自身の成長にも繋がっているかを実感しています。自分も初心にかえってバレエを学び直す気持ちで、これからも未来のバレリーナたちのサポートができるよう全力で生徒と向き合いたいです。
質問4.感謝の気持ちを忘れず、自分にしかできない踊りをいくつになっても貪欲に探求して成長し続けたいです。また、今まで培ってきたプロとしての経験と知識をより多くの人と共有し、バレエの素晴らしさを知ってもらえるよう、指導者としての活動の幅を広げていきたいです。
小林莉沙さん:『Beauty and the Beast』のthe Rose Enchantress役(写真提供:小林莉沙さん)
渡辺 優衣(わたなべゆい)
渡辺優衣さん (写真提供:渡辺優衣さん)
新潟県出身。4歳でモダンバレエ教室でバレエを始める。高校は新潟から京都バレエ専門学校に入学し、バレエを基礎からしっかりと学ぶ。高校卒業後にアメリカのミスティクバレエ団に入団。2015年よりBVに入団。
質問1.バレエでやっていきたいと思い、高校で京都バレエ専門学校に入学しました。そして、卒業後にコンテンポラリーが盛んな海外のバレエに興味を抱き、ミスティクバレエ団に入団が叶いました。BVにオーディションビデオを送り、D氏が受け入れてくださり、今のカンパニーに移りました。
質問2.バレエを仕事にできるとは思ってなかったので、自分の好きなことを続けられ、とても幸せです。BVの作品にはモダンやジャズなどの動きもありますが、D氏が丁寧に教えて下さるので踊りの幅が広がりました。今の環境で踊れることに本当に感謝しています。ツアーや地元ビクトリアの公演などで、さまざまな演目に出演でき、小さいバレエ団だからこそ、たくさん踊れるチャンス、また、いろいろなレパートリーがあり、とてもやりがいを感じています。
質問3.スウィーツめぐりとショッピングが好きです。
質問4.カナダという大きな外国で踊ることができるなんて、子どもの頃は夢にも思っていませんでした。ここにいられることは、夢が叶い、自分の大きな成長に繋がりました。バレエ・ダンサーとしてお客様に喜んでもらえるような踊りをしたいです。そして、気持ちの面では強い意志を持って、踊りが成長するように日々努力を重ねたいです。
渡辺優衣さん: Paul Destrooper 振付けの作品『Shine』(写真提供:渡辺優衣さん)
篠田 萌音(しのだもね)
篠田萌音さん (写真提供:篠田萌音さん)
愛知県出身。5歳からバレエを始め、19歳でサンフランシスコ・バレエ・スクールの夏季講習参加後に入学許可を受け、2年間留学。後にミルウォーキー・バレエⅡ、サンノゼ・バレエへ入団し、多くのクラシック、コンテンポラリー他のレパートリーを披露する。その後、2016年にBVに入団。
質問1. 本格的にバレエに打ち込むようになったのは高校を卒業してからです。それまでは、学業、クラブ活動、バレエを続けていました。バレエは小さい頃から始めており、バレエのレッスンは、嫌なことがあった後でもひたすら打ち込める時間でした。
質問2. ダンサーとして身体を通してお客さんに感動を与えられたり、喜んでいただけることがやりがいになっています。BV入団後はディレクターが求めているものを素早くキャッチするというのがチャレンジです。
質問3. 自分の使い古して使えなくなったポワント(トゥ)シューズを自分でペイントしたり、デコレーションすることが好きです。何も考えずにひたすら集中できるので、気分転換になり気に入っています。
質問4. 自分の持っているものを全て生かせることができる表現力豊かなダンサーに憧れます。ひとつの国に限らず、いろいろな国を回ってパフォーマンスしていきたいです。お客さんに幸せを与えられるダンサーになれるように、もっと日々自分と向き合っていきたいです。
篠田萌音さん:2017年3月BV公演ゲスト振付家Peter Quanzの作品『Luminous』(写真提供:篠田萌音さん)
加藤 亜実(かとうあみ)
加藤亜実さん (写真提供:加藤亜実さん)
東京都出身。8歳より地元のバレエ研究所にてバレエを始める。2013年にプロ養成学校オーストリアン・バレエ・スクールに入学し、奨学金生徒となる。また、ABC東京バレエ団の研修生にもなる。2017年にBVに入団。
質問1. 回答なし。
質問2. 私にとってバレエとは、なくてはならない情熱を捧げられるもの。毎日が自分との闘いであり、厳しい中にもそれ以上に踊る喜びを感じ、新たな自分に気付ける。私の感情を表現する手段であり、ストーリーを伝えるツール。そこに完成や完璧はない。バレエは繊細で儚く、奥が深い芸術だからこそ、追い続ける価値がある。日々努力する中で思うことは、「立ち止まることはできない」ということ。自分を磨き、何よりもレッスン、基礎が大事。毎朝のレッスンは、欠かせない大切な時間。今後も多くの舞台に立ち、お客さんに感動や希望を与えられる魅力的なダンサーになる。日々の小さなことの積み重ねが成長に繋がり、舞台に出てお客さんに拍手を頂くときにやりがいを感じている。素晴しいダンサー仲間、隠れた能力を引き出してくれる先生、喜んでくださるお客さんに出逢えたので、これからも挑戦し続けたい。
質問3. 趣味はピアノ、書道、舞台鑑賞。音楽鑑賞。映画鑑賞。
質問4. バレエを踊り続ける。自分に嘘をつかない。周りの人に感謝の気持ちを持ち、貢献する。続けることでしか見えてこないものがあると思うから、今日できることを精一杯し、それを続ける。どんなときでも失敗を恐れず挑戦する。希望を持ち、自分に自信を持つこと。そして、決して諦めないこと。
加藤亜実さん:『VIENNESE POLKA』のウィーンの娘役 (写真提供:加藤亜実さん)
早田 ひめ(はやたひめ)
早田ひめさん (写真提供:早田ひめさん)
名古屋市出身。8歳よりバレエを始める。2013年、2014年ロイヤル・バレエ・スクール・アントワープの サマースクールに参加。2015年よりブリュッセル・インターナショナル・バレエ・スクールに留学。2017年 にBVに研修生として入団。
質問1. 日本にいる頃は、学校に通いながらバレエの他にも習い事をしていたので、バレエ一筋ではありませんでした。今までバレエを続けてきたのは、バレエが大好きで、生活の一部だったからです。カナダの人はみんな優しいので、観客の方たちの温かい拍手や言葉、踊っている時に客席から感じるエネルギーが好きです。
質問2. ダンサーは身体だけでなく、とても頭を使う仕事です。時には難しい振り付けや、表現があって苦労することもありますが、ディレクターからの要求に応え、それにプラスして観客の方に喜んでもらえるよう工夫することがとても重要で、そこを評価してもらえた時に、やりがいを感じます。
質問3. 料理が好きです。毎日の食事を作るのはもちろん、食材を工夫して消費したり、BVが休みの日は、オーブンを使ったり、少し凝ったものも作ります。
質問4. バレエだけではなく、視野を広げて、いろいろなことに挑戦してみたいです。
早田ひめさん:Tanzolymp Berlin コンクール出演時の『海賊』のバリエーション(写真提供:早田ひめさん)
日本人ダンサーの皆さんからバンクーバー新報読者の方々へのメッセージ
まだバレエを観たことがない方は特にBVの公演へ来ていただきたいです! 公演をご覧いただけたら、ちょっと堅苦しいバレエへのイメージが一転します。映画やライブなどに行く気楽な感覚で、バレエ鑑賞していただきたいです。劇場でお待ちしています。
(取材:北風 かんな)