2017年12月21日 第51号
北極や南極といった極圏に現れることが多いため極光、あるいはカナダではノーザンライト(Northern Light)と呼ばれることが多いオーロラ。ローマ神話の暁の女神、Aurora(アウロラ)が語源だという。スカンジナビアの神話では、死者の世界とをつなぐ神々が築いた炎の橋とされているほか、一部イヌイットは、きらめくオーロラの中で自分たちの祖先の魂が踊っていると考える。古代より、オーロラに対して、人々は畏怖の念を抱いてきた。神秘的な美しさのオーロラを自分の目で見たいと、オーロラ鑑賞で有名なカナダには世界中から旅行者が訪れる。
ホワイトホース(画像提供 Northern Tales Travel Services/ Stefan Wackerhagen)
オーロラのメカニズム
オーロラは、1億5000万キロの彼方にある太陽が放出する太陽風によってつくられる。太陽風中のプラズマ粒子(荷電粒子)が地球の大気中の分子や原子と衝突した際に発光して、出現するのがオーロラだ。そして、地上から100〜500kmの高さの場所で発生する。
赤や緑、紫に輝くオーロラだが、色が異なるのはなぜだろう。プラズマ粒子は酸素原子とぶつかると緑や赤、窒素分子とぶつかると紫や青に光る。つまり、プラズマ粒子が衝突する分子や原子により色が変わるということになる。高度の高い位置では、酸素原子の割合が高いため、緑や赤、少し低い位置になると、窒素原子の割合が高いため紫や青となる。
オーロラ鑑賞の時期
雪景色を緑や赤、青と様々な色に照らす幻想的なオーロラ。冬のイメージが強いが、一年中、出現している。ただし、5月から7月の夏至前後は北極圏では白夜に近く、日が長い。オーロラは暗くないと、よく見えないため、5月から7月、そして雨が多い秋を除く時期が観賞シーズンとなっている。
そして、もう一つ注意したいのが月光だ。弱いオーロラの場合、満月だとほとんど見えない。ただし、強いオーロラだと満月でもしっかり見える。何が何でも見たいという人は、満月は避けるほうがいいかもしれない。 月齢をチェックできるサイト▶ http://koyomi.vis.ne.jp/moonage.htm
オーロラ鑑賞のデスティネーション
オーロラ鑑賞と言えばイエローナイフかホワイトホースだ。近年ではフォートマクマレーも観光局が力を入れて知られるようになってきたが、発展途上の感がある。メジャーなイエローナイフとホワイトホースについて、ここでは触れたい。
イエローナイフ
ノースウエスト準州の州都
人口約1万9569人 (2016年世論調査)
バンクーバーからエアカナダが直行便を運航しているが、一日1本のみ。カルガリーやエドモントン経由なら、エドモントンかカルガリー経由で約5時間〜。エアカナダ、ウエストジェット、エアノースが定期便を運航していて、合わせると一日、約8便。経由便は時間がかかるが、直行便と比較して運賃がお得だ。
カナダでのオーロラ鑑賞の先駆者的存在で、充実したサービスを提供する会社、ツアーがあることでも知られている。
あまり観光するところはないが、入館無料のプリンス・オブ・ウェールズ・ノーザン・ヘリテージセンターでは、小さいながらもイエローナイフの歴史や住民の暮らしが分かる。また、ビジターセンターのノーザンフロンティア・ビジターセンターでは北緯60度到達証明書を発行してもらえて、記念になる。
プリンス・オブ・ウェールズ・ノーザン・ ヘリテージセンター
4750 48th Street Tel: 867-767-9347 ext. 71472
www.pwnhc.ca
ノーザンフロンティア・ビジターセンター
4807 49 St Tel: 1-877-881-4262
www.visityellowknife.com/member-information/northern-frontier-visitors-centre
ホワイトホース
ユーコン準州の州都
人口2万5085人(2016年)
ゴールドラッシュ時代に一攫千金を狙う人らが、ドーソンシティへの中継地点として集まり、発展したホワイトホース。ユーコン川の白波が白馬のたてがみのようだったことから、ホワイトホースと名付けられたという。
バンクーバーからエアカナダとエアノースが一日2便ずつ直行便を運航している。つまり合計4便。直行便なので2時間半足らずで到着。
カナダ北部最大の街ということもあり、カフェやレストランのクオリティも高い。ユーコン野生動物保護区では、ムース、カリブー、ジャコウウシなど、カナダ北部に生息する10種類の野生動物を、広大な敷地の自然な環境の中で観察できる。タキーニ温泉では、極寒の中、温泉に入ることで髪が凍り、面白いことから、2月にHair Freezing Contest (凍った髪のコンテスト)が行われる。マックブライド博物館はユーコンの歴史を知ることができるほか、べリンジア博物館にはマンモスなど氷河期の動物の骨格標本がある。
ユーコン野生動物保護区
Kilometre 8 Takhini Hot Springs Road
Tel: 1-867-456-7300
www.yukonwildlife.ca
タキーニ温泉
Kilometre 10 Takhini Hot Springs Road
Tel: 1-867-456-8000
www.takhinihotsprings.com
マックブライド博物館
1124 Front St
Tel: 867-667-2709
www.macbridemuseum.com
べリンジア博物館
冬は日曜と月曜のみのオープン
Kilometre 1423 Alaska Highway
Tel: 867-667-8855
www.beringia.com
旅のプラン
冬にオーロラ鑑賞旅行に行く場合、マイナス30℃と極寒の土地であることから、何らかのツアーに参加するのが安全だろう。とにかく想像を超える世界。ガイドのアドバイスはありがたい。
バンクーバーから航空券込みのツアーがある。また、航空券を別で購入して、現地発のツアーに参加することもできる。バンクーバーの日系旅行会社もオーロラツアーを催行している。
服装・持ち物
冬のオーロラ鑑賞にはしっかりした防寒着が必要だ。マイナス30℃の世界では、スノボの装備やダウンジャケットでは不十分。ツアーに参加するとレンタルもあるので安心だ。
①カメラの三脚 オーロラ撮影の際、ぶれを最小限に抑えるため。
②5本指の手袋 (ミトンは温かいが指が思うように使えないので、外でカメラを扱うときなどのために5本指の手袋)
③トゥークなど帽子
④使い捨てカイロ
⑤デジカメの予備電池 アクティビティ
真冬にオーロラ鑑賞に訪れる場合、犬ぞりやアイスフィッシングなどのアクティビティにもトライできる。
(取材 西川 桂子)
オーロラビレッジのヒーター付きリクライニングシートの野外鑑賞席(画像提供:オーロラビレッジ)
先住民文化に触れることができる、プリンス・オブ・ウェールズ・ノーザン・ヘリテージセンターの展示(画像提供:J.F.Bergeron/NWT Tourism)
冬のユーコン野生動物保護区では真っ白なホッキョクキツネにも出会える(画像提供:Government of Yukon / Cathie Arc)
ホワイトホース(画像提供:Canadian Tourism Commission yukon)
雪景色の中での温泉。カナダなので水着着用(画像提供:Government of Yukon / Cathie Arc)
顔をすっぽり覆うフェイスマスクでしっかり防寒(画像提供:オーロラビレッジ)
極地仕様のブーツ(画像提供:オーロラビレッジ)
オーロラツアーで有名なオーロラビレッジの防寒着レンタル。カナダグースのジャケット、ウィンターパンツ、ウィンターブーツ、ミトン、オーロラビレッジロゴ付きのフェイスマスクの、合計5点セット(画像提供:オーロラビレッジ)
アイスフィッシング(画像提供:Gov't of Yukon/Fritz Mueller)
イエローナイフ (画像提供:YG/Robert Postma)