2017年12月14日 第50号

クリスマスの定番『くるみ割り人形』。今年もバレエBC主催でアルバータ・バレエ団がバンクーバーにやってくる。

舞台は20世紀のロシア皇帝時代。エミー賞受賞デザイナー、ザック・ブラウンによる豪華な衣装をつけた雪の結晶やねずみの兵隊が夢の世界に誘ってくれる。

同バレエ団の佐々木瑠菜さん(25)と櫻井芳哉さん(29)にバレエの魅力を語ってもらった。

 

『くるみ割り人形』より(撮影:Darren Makoivichuk)

地元バレエ学校の生徒もねずみや兵隊役として参加(撮影:Paul McGrath)

 

佐々木瑠菜(ささきるな)さん

佐々木瑠菜さん。『くるみ割り人形』では金平糖の精とクララの2役を踊る(写真提供:アルバータ・バレエ団)

バレエのお稽古で好きだったこと、苦手だったことは?

 一番好きだったのは発表会や公演のための練習でした。何か作品をやっているときが一番楽しかったですね。苦手だったことはストレッチです。身体が硬くて、今となっては小さい頃もっとストレッチをしっかりしておけば良かったと後悔しています(笑)。

 12歳まで習っていたピアノは、音感を養うのにとてもためになりました。

16歳でバレエ留学したそうですね?

 毎年夏に開かれるJapan Grand Prixというバレエコンクールに出場したとき、ヒューストン・バレエ・アカデミーからいらしていた審査員の先生から奨学金をいただいたことがきっかけです。ちょうど高校2年生で大学進学について考えていた時期でしたが、全額奨学金をいただけるなんてまたとないチャンスだと思い、両親にも背中を押されて留学を決めました。

大変だったことは?

 数え切れないほどあります(笑)。初めての家族以外との共同生活、食事・体調管理、言語の壁など。幸いなことにバレエの動きは全世界共通なのでレッスンで苦労することはあまりありませんでしたが、それでもわからない英語が出てくると反応できなかったり、うまく返事を返せなくて悔しい思いをしたことがあります。

 あとは、まわりの欧米人の子のスタイルの良さと比べて落ち込むこともありました。留学時代の辛かったり悔しかったりした経験があったからこそ、精神的にだいぶタフになりました。

アルバータ・バレエ団では5年目とのことですが。

 入団当時からソロや準主役をいただき、ジャンルを問わずいろいろな経験をさせてもらえるので、とてもありがたいです。

 『くるみ割り人形』では今までは最多で5役ほど兼ねて踊っていたのですが、今年は金平糖の精とクララの2役に集中する予定です。

 後輩ですか? 基本的にみんなしっかりしているので私が教えてあげることはあまりないです(笑)

カルガリーはどんな町ですか?

 バンクーバーのように賑やかな所ではないですが、のんびりとした雰囲気が気に入っています。冬は寒さも厳しいし雪もかなり降りますが、さすがに5年目になり慣れてきました。むしろ最近ではカルガリーの乾燥している気候のほうに慣れてきてしまって、毎年夏に日本に帰国する時が大変です(笑)。

 最近ハマっているのは色鉛筆画のスケッチをすることと、おいしいチャイティーのあるカフェ探しです。

『くるみ割り人形』の見どころを。

 個人的に一番好きなのは第一幕の最後の雪の精たちのシーンです。シーン後半の舞台上に雪が舞うところは本当にきれいです! 踊りももちろんですが、煌びやかな衣装や、バンクーバー・シンフォニー・オーケストラによる生演奏のチャイコフスキーの魅力いっぱいの音楽も楽しんでいただけると思います。

 

佐々木瑠菜(ささき・るな):神奈川県出身。6歳からバレエを始め、16歳で出場したJapan Grand Prixにてヒューストン・バレエ・アカデミーへのスカラシップを受賞し渡米。その後ボストン・バレエ・スクールのトレイニーを経て、2013年よりアルバータ・バレエ団に入団。現在までに『ロミオとジュリエット』のジュリエット役、『不思議の国のアリス』のアリス役など数々のプリンシパル・ソリスト役を踊る。

 

クララ役を踊る佐々木瑠菜さん(撮影:Paul McGrath)

 

 

櫻井芳哉(さくらいよしや)さん

くるみ割り人形役の櫻井芳哉さん(写真提供:アルバータ・バレエ団) 

バレエを始めたきっかけは?

 親がバレエの先生だったため、知らずのうちにバレエを習ってました。小さいときはまずお稽古自体が嫌いで、バレエは女の子が習うものだと思っていたので、なぜ僕だけ!? と思いました。タイツは苦手でしたね(笑)。でも、舞台は楽しかった思い出があります。

『第2回ジャパン・グランプリ』(ジュニア部門)で第5位になり、外国の2つのバレエ学校から奨学生として招待されたとのことですが。

 ロイヤル・バレエスクールはイギリスのロンドンにあり、歴史のある世界有数のバレエ名門校です。ジョン・クランコ・バレエスクールはドイツのシュツットガルトにあり、シュツットガルト・バレエ団の学校です。結局、カナダ国立バレエ学校に入り、13歳から4年間在学しました。

ではカナダでハイスクールに通ったわけですね?

 最初は英語が話せずコミュニケーションがむずかしかったです。寮生活だったので、共同生活も大変だった記憶があります。カナダ国立バレエ学校は世界でも数少ない学校の勉強とバレエが両方学べる学校ですので、ここでカナダの高校課程を卒業しました。

男性ダンサーとして思うことは?

 女性に比べたら人数が少ないのは有利かもしれません。主に気を遣っている点は、においのケアです。女性と一緒に踊るので距離が近いことが多く、なるべく不快感を与えないように努力しています。

 憧れのダンサーは特にいませんが、舞台に出て来て空気を変えられたり、お客さまを自分の空気に引き込めるダンサーはすごいと思います。

バンクーバー新報の読者にメッセージを。

 くるみ割り人形役をやらさせていただいてますアルバータ・バレエ団にはたくさんの日本人ダンサーが所属し活躍していますので、ぜひご来場いただけるとうれしいです。

 皆さまにとって素晴らしい年末年始になりますように。

 

櫻井芳哉(さくらい・よしや):新潟市出身。3歳より新潟バレエスクールでバレエを始める。2003年『第2回ジャパン・グランプリ』ジュニアB部門で第5位受賞。同年9月よりカナダ国立バレエ学校に留学。2006年カナダ芸術協議会/カナダ国立バレエ学校よりPeter Dwyer Scholarshipを受賞。2007年『第35回ローザンヌ国際バレエコンクール』セミ・ファイナリスト。同年に米国アメリカン レパートリー・バレエ団に入団し、翌年ボストンバレエ団IIに移籍し数々の公演に出演。2010年カンザスシティ・バレエ団入団。6年間の在籍で『Les Gentilshommes』の主役、『Fancy Free』に抜擢され好評を得た。2016年よりアルバータ・バレエ団に移籍。また、元アルバータ・バレエ団プリンシパルで振付け師の服部有吉主催『Blue Gala』にゲストとして抜擢され出演する。

 

櫻井芳哉さん(写真提供:アルバータ・バレエ団)

 

 

アルバータ・バレエ団『くるみ割り人形』

12月28、29、30日 7:30PM
12月29日、30日 2:00PM

クイーン・エリザベス劇場
$25〜$95+Tax
チケット・マスター www.ticketmaster.ca
電話 (604) 682-8455

 

(取材 ルイーズ阿久沢)

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。