カリフォルニアロールの生みの親、東條英員氏とホームクッキング

ホームパーティーを開く時には、気の利いた美味しい料理を数品作り、家族や友人に振る舞いたいものだ。しかし、料理に興味はあるけれどあまり自信がないという人は多い。特に、そんな悩みを抱える中高年の男性を対象に企画されたのが、日系センターの新しいプログラム「有名シェフによる料理教室」だ。9月から12月まで、毎月一人の有名シェフを迎えて、ホームクッキングの料理教室が開催される。その記念すべき第1回目を飾ったのは、Tojo'sのオーナーシェフの東條英員氏だ。今や日本にも逆輸入され、世界中で知られる「カリフォルニアロール」の生みの親であり、類まれな技術と斬新なレシピで注目を集め続ける東條氏。その東條氏と交流しながら料理を学ぶ贅沢な機会とあって、女性からの応募も多く、チケットはすぐに売り切れたという。
この日の料理教室で作ったのは、東條氏が日ごろTojo'sで提供しているメニューとは全く違う、ホームクッキングを意識した料理の数々だ。料理教室が始まる前に、すでに用意されていたのは、マグロとアボカドと野菜が絶妙に調和した前菜「東條アボカド・サラダ」。25人の参加者はこの前菜とワインを楽しみながら、目の前で繰り広げられる東條氏の料理の実演に見入った。
献立は、「鮭と豆腐と茄子の味噌焼き」、「肉じゃが」、そして、「東條シーフード・ササミ・ソバ・ヌードル」。この「東條シーフード・ササミ・ソバ・ヌードル」は、茶そばと、新鮮な魚介類とササミを組み合わせたオリジナリティあふれる一品だ。「肉じゃが」もユニークで、鶏肉と乾燥糸こんにゃくが使われていた。「美味しい料理を作るには、良い食材を使うこと」と語る東條氏が推薦する乾燥糸こんにゃく「ぷるんぷあん」は、無農薬で、食物繊維が普通の糸こんにゃくの1・5倍だという。その他、だしの取り方や、味噌焼きを作る時の白味噌と赤味噌の割合など、東條氏は参加者に美味しい料理を作るためのコツを伝授していた。
また、東條氏は料理をしながら、ニューヨークやドバイなど、さまざまな場所で料理をした時のエピソードなども紹介した。豊富な経験を持つ東條氏の話の中で、特に印象に残ったのは、「一番大切なのは、体に良くて、美味しい料理を作ること」というシンプルな言葉だった。例えば、人は揚げたものを食べると美味しいと感じるものなので、揚げ物をすれば、楽に「おいしい料理」を作ることが出来る。しかし、それでは、健康に良くない。常に、良い食材を使って、体に良いものを作ることが重要だ。そして、それに加えて、オリジナリティがあれば良い。
最後は試食会となり、参加者は大満足の様子だった。参加者の一人、ニール・リッシーさんは、「とても良い雰囲気でした。肉じゃがの作り方がわかって良かったです」と話した。12月まで続く「有名シェフによる料理教室」は、料理を通して日本文化への理解を深めることができる、日系センターにふさわしいプログラムだ。

 

日系プレース・コミュニティ賞授賞式および募金晩餐会

午後6時からは、日系プレースに貢献するたくさんの人の中から、その年に特に活躍した人たちを表彰するための日系プレース・コミュニティ賞授賞式および募金晩餐会が、NNM&HCのイベントホールで盛大に催された。在バンクーバー日本国総領事の伊藤秀樹氏やドン・キャンベル元駐日カナダ大使らを含む、約220人の参加者が一同に集った晩餐会は、日系コミュニティの絆の強さを確かめ合う貴重な機会となった。
挨拶の中で、NNM&HC会長の林光夫氏は、日系センター、日系ガーデン、新さくら荘、日系ホームで構成される日系プレースについて、「いろいろなグループが一つになって、一つの敷地で共存するということは、小さいながらもここに立派な日系コミュニティがあるということです」と話し、これがいかに素晴らしいことかを強調した。
その後、ゲスト・スピーカー、ナオミ山本州議会議員のスピーチがあり、参加者は熱心に聞き入った。アーサー原氏に紹介され、壇上に上がった山本氏は、「家族がたくさん来ているので、緊張します」と笑顔を見せながら、日系プレースのために時間と労力をかけ、多様なコミュニティをつくることに貢献してきた人たちに感謝の意を表した。BC州高等教育担当大臣として活躍する山本氏は、スピーチの中で、教育の重要性にも言及した。BC州は世界の中でも特に高い教育水準で知られ、多くの外国人留学生がBC州で学んでいる。このことは、教育だけでなく、BC州の経済にも非常に良い影響を与えているという。
高等教育担当大臣として、BC州の中で山本氏が果たす役割は大きい。しかし、大役を任された山本氏を、温かい日系コミュニティがいつでも支援していることは確かだ。
山本氏のスピーチの後は、日系プレース・コミュニティ賞授賞式となった。さまざまな賞があり、賞が授与されると同時に、事前に用意された受賞者のインタビュー映像が、会場に設置されたスクリーンに映し出された。インタビューの中の受賞者の言葉を通して、一人一人が自分の仕事を全うし、日系プレースにとって無くてはならない存在となっていることを実感できた。受賞者は下記の通り。

 

多くの人の働きや助けが日系プレースを築き上げ、日系コミュニティをより豊かなものにしている。その人たちについて知り、感謝する機会があることは、コミュニティのさらなる発展のために、とても重要なことだ。晩餐会の会場は終始和やかな雰囲気に包まれており、参加者はそれぞれに感謝の言葉を交わし合っていた。
また、この日のオークションの売り上げと参加者からの寄付金は、7万5千ドル以上にのぼり、目標額の7万ドルを超えた。これらは、日系プレースのさまざまなプログラムのために使われるそうだ。日系プレースが、今後もコミュニティと共に発展し続けていくことは間違いない。

 

リーダーシップ・アワード(Leadership Award)
リンダ大浜氏

スペシャル・イベント・アワード(Special Events Award)
広沢延寿氏  / 小林浩美氏

コミュニティ・サービス(Community Service)
ジョイス及川氏

クワイエット・エンデバー・アワード
(Quiet Endeavor Award)
トム寺西氏 / 西村咲弥氏

フィランソロピー・アワード(Philanthropy Award)
ロバート新見氏

ヘリテージ・アワード(Heritage Award)
村上陽子氏

アワード・オブ・ディスティンクション(Award of Distinction)
鴨下宏則氏

 

(取材 船山祐衣)

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