2017年7月20日 第29号

圧巻の完全優勝だ! 初戦からひとつの星も落とすことなく、日本代表は今大会全勝で優勝。同大会6連覇を飾った。7月11日から17日までブリティッシュ・コロンビア州サレー市ソフトボールシティで開催されたカナダカップ2017。14チームが参加し、真夏の熱戦が繰り広げられた。

 

優勝杯を持って全員で記念写真。毎年おなじみの光景となった

 

9戦全勝で大会6連覇達成

 7回フルイニングまでいった試合は決勝を含めて4試合。あとの5試合はコールド勝ちと、他を寄せ付けない圧倒的な戦いぶりだった。

 山田恵里主将はアメリカ不出場で優勝が当たり前という中で「バッティングの面で結構点数が取れたというのは収穫があったと思います」と振り返った。若い選手が多い中、ベテランとしてチームを引っ張る立場。それで今回若手選手が結果を出したことについて「逆に負けてられないなっていう気持ちにさせてもらっている」と目を細めた。

 宇津木麗華監督も攻撃では「日本は今回調子よすぎた」というほど。「よく打ったと思いますね。ピッチャーもよく投げましたし」と総括した。

 

アメリカ不在の日本1強大会

 今大会の日本の優勝は始まる前からほぼ決まっていた。今年はアメリカが不参加。現在の女子ソフトボール界で日本と互角に戦えるのはアメリカしかなく、日本にとっては、優勝は当たり前、どう勝つかが大会の課題だった。

 監督が一番に挙げたのは藤田倭投手。上野由岐子投手に次ぐ投手として、ピッチング、体力など連投でも勝てる試合感覚を課題とし、よくやったと思うと語った。野手ではバントや相手のミスで次の塁を狙うなどの「日本の伝統プレー」の徹底を課題とし、後半から実践できたことを評価した。「これをしっかり習慣にして、帰ったらもう少し細かいプレーをしていきたいなって思ってます」。

 若手にはとにかく国際試合の経験を積むことで次に生きてくると宇津木監督。「まず来年の世界選手権に向けて目標にして、なんとか優勝できるように。それから、2020年をしっかり考えていきたいなって思ってます」と語った。

 山田主将は「(チームとしては)もっと技術とか精神的なレベルを上げていかないと。東京オリンピックは地元開催なので、プレッシャーがかかってくると思うので、それに打ち勝つ強さをどんどん練習で、一日一日の積み重ねで、自信をつけていく必要があると思います」。個人的には「一番はケガをしないことですね」と笑った。

 カナダカップは常連の日本代表。今年も優勝で幕を閉じた。宇津木監督は選手時代からほぼ毎年参加している。「バンクーバーはいいですね。この場所、日本人の皆さん、こうして毎日毎日応援していただいて、喜んでくれる顔を見るとやっぱりうれしい。日本はソフトボール強いっすよって、みんなの自慢できるようなチームで今回できて良かったなって思ってます」。

 

2020年東京、そしてその先へ
‐上野由岐子投手インタビュー‐

 「ここに帰ってきたなって感じがいっつもします」と笑った。昨年、同会場で開催された世界選手権にはケガのため同行しなかった。しかし、このカナダカップへの出場回数は今回出場した選手の中では最も多い。

 「毎年来ているわけではないですけど、もう私はここに来て17年なんで」。チームでも最年長だ。「やっぱり過ごしやすいですね。私は結構好きです、この気候。この時期しかいないから、この時期しか知らないですけど。この時期にいつも来るこのカナダカップは私は結構好きですね」。

 2013年には決勝を含め4連続完封試合でMVPを受賞。その日が誕生日だったことからバースデーMVPとなった。いろいろと思い出もある。

 この大会の色が変わったのは、やはり2008年北京大会を最後にオリンピックから女子ソフトボール種目がなくなってからだ。世界のレベルが目に見えて落ち、試合に緊張感がなくなった。

 「昔からこういう大会に出て感じているのは、オリンピック種目から抜けたことで全体的なレベルがちょっと下がっちゃったなって。それがすごい残念だし、2年、3年後にオリンピックだからって、ここから強化することはすごい難しいなって。昔を知ってるだけに、昔の方が白熱した試合っていうか、拮抗した試合が多かったですね」。

 現在は日本とアメリカの2強で、そこに追いつけるチームは今のところない。今回、日本が圧倒的な強さで優勝したのはそれもある。「強い国は強化してくるけど、そうじゃない国との差がだんだん出てきてるかなって。逆に低いレベルで均等化している感じはありますけど。ずば抜けてるところ以外はすごい互角の戦いが増えてきました」。

 そして世界2強体制のスポーツはオリンピック競技としては歓迎されない。次期夏季五輪は2020年東京で開催される。開催都市提案によるその大会に限り5競技の実施が国際オリンピック委員会(IOC)により決定された。その5競技の一つに女子ソフトボール・男子野球として選ばれた。つまり2020年以降に正式種目として実施される保証はないということだ。

 東京五輪は「ソフトボールにとってはいいことだと思います。東京で終わらないように頑張らなきゃなって思いますよね」と語った。2020年で終わってしまっては、せっかく盛り上がった機運がまたしぼんでしまう。その危機感はそれを体験しているだけに誰よりも強いに違いない。

 2008年北京大会でのアメリカとの死闘は今でも語り草だ。しかし上野投手にしてみれば、選手として最高潮の時に世界最高峰の大会をもぎ取られた悔しさは誰よりも強かったに違いない。その後もソフトボールの名前が五輪に浮上しては消え、消えてはまた浮上を繰り返した。

 そしてようやく2020年1度きりで正式種目に復帰する。その時は38歳となっている。東京までは「いかなきゃいけないかなっては思ってます」。プレッシャーはと聞くと「ありますね」と笑った。「背負っているものの大きさは自分でも感じてますし、ただもう、やらなきゃいけないのは分かっているので、しっかり自分のできることをやって、評価云々は周りがしてくれると思うので、やれることをがんばります」と言ってまた笑った。

 そして東京で終わるわけにはいかないとも言う。「ソフトボール界としてはすごい、いろんな意味でプレッシャーもありますけど、でもやっぱり(東京五輪は)いいことだと思うので、ここでしっかり注目してもらえるように。ソフトボールもだいぶメジャーになってきたと思うし、認知度も広がってきたので、うまく使っていきたいじゃないですけど、もっともっと広めていけたらなって思っています」と2020年の先を見据えた。

 それまではカナダカップにもできるだけ参加したいとも。「毎年こうやってここに帰ってこれるように、自分もしっかりケガのないように、コンディションに気を付けたいと思いますし、東京オリンピックがあるので、そこに向けてしっかりチーム作りしながら、またみなさんに応援してもらえるように頑張りたいなぁって思ってます」と、バンクーバーのファンにメッセージを送った。

(取材 三島 直美)

 

試合結果

予選リーグ・ファーストラウンド
7月11日 日本 14ー2 NJCAA (6回コールド)
7月12日 日本 13ー0 ケベック・リーベル(4回コールド)
7月12日 日本  8ー1 メキシコ(5回コールド)

予選リーグ・セカンドラウンド
7月13日 日本 4ー1 カナダ
7月14日 日本 11ー2 カナダ・エリート(5回コールド)
7月14日 日本 10ー0 オーストラリア(3回コールド)

決勝ラウンド1回戦
7月15日 日本 2ー0 プエルトリコ

決勝ラウンド2回戦
7月16日 日本 14ー2 オーストラリア(3回コールド)

決勝
7月17日 日本 7ー1 オーストラリア

優勝 日本 2位 オーストラリア 3位 ベネズエラ

 

カナダカップ・ショーケースゴールド・トーナメント(16歳以下) 同期間に開催されていた16歳以下のトーナメントでは、女子GEM2(U16)日本代表が決勝で台湾を下し優勝した。

 

カナダカップ優勝杯を贈られた山田主将とティム大会会長

 

中野投手。7月14日カナダ・エリート戦に先発。勝利投手となった

 

今大会同数で最多勝の藤田投手。決勝でも勝利投手となった

 

今大会同数で最多勝の藤田投手。決勝でも勝利投手となった(Photo by D. Laird Allan / Sportswave.ca)

 

今大会、上野投手は決勝戦の2イニングに登板。名前が告げられると会場から歓声が沸き起こった(Photo by D. Laird Allan / Sportswave.ca)

 

試合終了後、カメラマンのリクエストに応えてにっこり笑う上野投手(Photo by D. Laird Allan / Sportswave.ca)

 

今大会最多打点、打率3位で最高打者賞を受賞した江口未来子外野手

 

7月14日カナダ・エリート戦で1回表3点本塁打を放った渥美内野手

 

インタビュー後に会場で。上野投手

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。