第１回 バンクーバーインターナショナルファッションフェスティバル アジアの伝統衣装と欧米のモダンファッション

2017年3月23日第12号

第１回バンクーバー・インターナショナル・ファッション・フェスティバルが３月18日と19日、ブリティッシュ・コロンビア州リッチモンド市のパシフィック・ゲートウェイ・ホテルで開催された。 18日のショーでは６人のデザイナーによる、日本の着物（40点）と中国の伝統衣装（42点）、ニューヨークファッション（25点）の３回のステージがあった。会場には約400人の観客が詰めかけ、計90人のモデルが身につけたファッションを眺めながら約１時間半のショーを楽しんだ。

中国の伝統衣装

　このショーをプロデュースしたデイビッド・チェン（David Chen）さんは、米国のロサンゼルスを中心にファッション関係の仕事をしているが、バンクーバーに在住している関係から今回のショーが実現した。バンクーバー在住のケイコ・ボクサウェルさんがモデルの指導、彩月会のカオリ・リトンさんらが着物の着付けを担当した。

　「ショーのコンセプトは複数の国のファッションを見せるステージを同時に開催することで、民族衣装をモチーフにした新たなファッションも多くの人たちに見てもらいたい」とデイビッドさん。

　ファッションショーはチームとしての力が問われるため、学ぶことが多く、やりがいがあるという。しかしモデルのスケジュール調整が一番苦労するところで、今回も本番の前日まで確保に追われたそうだ。

　デイビッドさんは、「開催にあたり、各国のコミュニティーが力を合わせて協力してくれました。多民族が共存するバンクーバーならでは価値観が実現でき、がんばってくれた皆さんに感謝します」とお礼の言葉を述べた。

　実は、愛娘のソフィー（Sofy）ちゃん（８歳）も今回のショーにモデルとして登場している。ソフィーちゃんの母親の摩里子さんは日本人だが、2012年に乳がんが原因で他界した。

　子どもの才能を尊重してほしいという摩里子さんの思いを受け継ぎ、デイビッドさんはソフィーちゃんにモデルやコマーシャル女優などの仕事をさせている。そのことは結果的に、彼自身の仕事の幅を広げているという。　

　友人と一緒にショーを見に来たバンクーバー在住の船戸愛さんは「着物のステージが印象的でした。繊細な模様や色合いに意味があることも改めて感じました。日本人以外のモデルが着こなしているのも新鮮でした。中国人デザイナーの服もそうですが、服によってそれぞれの国の文化や国民性を感じることができるのは、すてきなことだと思います」、日本でショー関係の仕事をしていた青木耕平さんは「デザイナーの世代が異なっていることと、各国の伝統的な衣装から最新のトレンドまで見られたのは面白かったです。ひとつのショーの中でこれだけ幅広く、違う種類の作品を見せるステージは初めてです。アットホームな雰囲気もよかったと思います」と感想を述べた。

　デイビッドさんによると、来年以降はトロントやモントリオールなどでもショーを開くのが目標で、いずれはバンクーバーだけでなくオールカナダのファッションフェスティバルにしたいそうだ。

（取材　古川透）