今夏もバンクーバーに日本代表の元気な声がこだまする。サレー市ソフトボールシティで毎年7月に開催されるソフトボール女子の国際大会。今年は第15回世界選手権大会として15日から24日まで開催されている。

今年の夏は、日本代表にとって、世界のソフトボール女子選手にとって、特別の夏となる。8月には2020年夏季オリンピック東京大会でのソフトボール女子復帰が採決される。そうなれば2008年北京大会以来の五輪復帰。あの日本中を歓喜の渦に巻き込んだ熱い夏が帰ってくるのか。その直前の世界大会。日本代表がかける思いも熱い。

残念ながらエース上野由岐子投手はケガで欠場だが、エースを欠いても優勝できる底力を見せることが五輪へとつながることを証明する絶好の機会。この直前にアメリカで開催されたUSAワールドカップでも優勝した。今夏はこの地でどんな試合を見せてくれるのか。

予選リーグのプールA1位通過が決まったフランス戦の後、福田五志監督、坂元令奈主将に意気込みなどを聞いた。

 

対フランス戦の後、記念撮影する日本代表選手、岡井総領事と夫君の岡井知明(ともあき)氏と応援団

 

経験と結果を積み重ねる大会に

 世界選手権は第13回、14回と日本が優勝。現在世界ランク1位の日本は、今大会でももちろん優勝候補。今月10日までアメリカで行われていたUSAワールドカップでも3年ぶりに宿敵アメリカを下し優勝。いい形でカナダ入りした。

 それでも大会初戦7月16日は、ベネズエラ相手に7回表まで0ー1とリードされ、その裏に逆転サヨナラ勝ちというヒヤヒヤな勝ち方だった。

 福田監督は「アメリカでのワールドカップで非常に良かったんで、少し疲れがあったのかなって思いますけど」と連戦の選手たちを気遣った。坂元主将も「昨日はほんとに、USカップが終わって世界選手権がいよいよ始まるって形で入ったんですけど、初戦でみんな硬くなったりとかもあって」と、世界選手権の緊張感を語った。

 ソフトボール女子世界選手権大会とは2年に一度行われる世界大会。ソフトボール女子が五輪種目から外れてからは、この大会が世界最高峰の大会となる。

 その中で優勝を期待される日本代表。第2戦フランス戦は早い回から得点を重ね7ー0の5回コールド勝ち。主将は「(初戦は)ああいう試合になったんですけど、あの反省も生かして、しっかり今日は早い回に1点取れたんで、そこから自分たちの攻撃ができて、点数も入って、コールドで勝つことができたんで良かったかなって思います」と安堵の笑顔を見せた。

 「状態が少しずつ上がりながら、勝ち星が重ねられればいいなって思いますけど」と福田監督。若い選手も使いながら、「経験と結果と出してくれるといいなって思います」と語った。

 

2020年を見据えて

 今大会では優勝狙いはもちろんだが、若い選手の育成も兼ねている。昨年までは若い選手で構成されるTAPーA日本代表を率いていた福田監督。「確実に若い子たちを2020年に向けての強化と、我々は正しい評価をしながらつなげていかないといけないんで、いろんな視点でこの大会に臨んでいます」と先を見据える。

 2020年五輪でソフトボール女子復帰が見えてきた。五輪復帰が決まれば、各国も強化を図る。世界は「打倒日本」を目指してくる。「世界もオリンピックが決まると、強化の仕方も取り組みも変わってくると思うんで、そういう意味ではいろんな国によっての伸びしろなどは気にしてやらなくてはいけないかなって思います」。

 ソフトボール女子が正式種目となるかは今年8月3日、リオデジャネイロ五輪開催前の国際オリンピック委員会(IOC)総会で採決する。

 坂元主将は「オリンピックが決まるという一番最後の世界大会になるんで、これが終われば帰って1週間後には種目復活がどうなるかっていうのも決まりますし、そこでは日本に帰って優勝したっていうのを報告できるのはソフトボール界にアピールできるところだと思うので、しっかり結果を残して帰れるようにしたいです」。

 ソフトボール女子五輪といえば、北京大会決勝でアメリカとの死闘を制した日本代表の柱、上野投手。今回はケガのためチームに同行していないが、チームは2020年に向けベテランに頼ってばかりもいられない。「今までは上野さんが引っ張ってくれったていうところがあるんですけど」と坂元主将。「今回はいないということで、若い選手が今回は代わりをやるんだってすごいがんばってますし、上野さんの分も結果を残して日本に帰ろうという意思で、チームでそうやって話し合ってやってるんで、そこはプラス思考で自分たちがこれからチームを引っ張っていくっていう気持ちでやっていこうという話はしてます」と頼もしい。

 ソフトボール女子が五輪正式種目から外れた後も世界ソフトボール界を引っ張ってきた日本代表。悲願の五輪復帰前最後の世界選手権でその実力を発揮し、2020年、そしてその先に向けた新たな第1歩を刻みたい。

 

ここは自分たちにとってホーム

 第1戦、第2戦が行われた16日、17日の試合では、多くの日本代表ファンが応援に駆け付けた。17日はバンクーバー沖縄太鼓も加わって盛り上げた。この会場は「最高ですよ。準フランチャイズみたいな感じですからね」と福田監督は笑った。昨年もここでTAP-A代表を率いている。「これだけ日本人の方とか、日系人とかお見えになるんで、ほんとに選手も準フランチャイズみたいな感じで」と、ほとんどホーム状態。

 このソフトボールシティで開催される女子ソフトボール国際大会は10年以上続いている。宇津木妙子元監督時代から数え日本代表は最多出場数を誇る。ここ5年は優勝で、日本人だけではなく、日本代表、そして日本のソフトボールのファンも多い。試合後には選手たちが子供たちにサインをせがまれるのはおなじみの光景だ。

 「日本の方もいっぱい来てくれてますし、会場もきれいになって」と坂元主将。「これから、どんどん強いチームと当たっていくんで楽しみです」と王者の風格を漂わせた。

 17日に応援に駆け付けた岡井朝子在バンクーバー日本国総領事は、試合後には選手に言葉をかけエールを送った。日本のファンには自身のフェイスブックでも応援を呼びかけている。この日の勝利で「これでようやく予選通過ですけど、まだまだこれから目が離せません。最後まで決勝戦までみなさん応援してください」と、笑顔で呼びかけた。

 日本代表の優勝はバンクーバーの夏の風物詩。これがないとバンクーバーの夏が始まらない。ようやく暑い夏が始まったこの地で24日まで熱い戦いが繰り広げられる。 大会の結果・予定は世界選手権大会HPを参照。
https://www.surrey2016.com/live/index

(取材 三島 直美 / 写真 古川 透)

 

7月19日(火)までの試合結果
7月16日(土) 日本2ー1ベネズエラ
7月17日(日) 日本7ー0フランス
7月18日(月) 日本6ー1台湾
7月19日(火) 日本4ー2イギリス

試合予定
7月21日(木)の対ニュージーランド戦は午後8時から。
その後のスケジュールは未定。

 

2回裏、2死1、2塁、長崎選手が右越えに3点本塁打を放つ(17日、対フランス戦)

 

先発の山根投手(17日、対フランス戦)

 

リリーフで好投した平原投手(17日、対フランス戦)

 

福田五志監督

 

主将の坂元令奈選手

 

応援に駆け付けた岡井朝子在バンクーバー日本国総領事

 

3塁側のスタンドは、日本チームを応援する人たちでいっぱいになった(17日、対フランス戦)

 

投手前のゴロをさばく浜村投手(中央)(16日、対ベネズエラ戦)

 

7回裏、サヨナラのホームを踏んだあとガッツポーズをする山田選手(16日、対ベネズエラ戦)

 

外野席から声援を送る日本の応援団

 

応援する岡井総領事

 

応援で沸いた観客席から

 

2回裏、3点本塁打を放った長崎選手(中央①)を出迎える、日本ベンチの選手と応援席(17日、対フランス戦)

 

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