出演する 日本人ダンサーたち

アルバータ・バレエ(以下AB)は1966年に公式に創設されたカナダ有数のバレエ団。 このバレエ団では、休団中の近藤麻理子さんを含めて、現在4人の日本人ダンサーたちが活躍している。 アルバータ州のカルガリーとエドモントンを中心に公演しているABが、ツアーでBC州にやってくる。 年末のバンクーバー公演『くるみ割り人形』は見逃せない!

演目 :『くるみ割り人形』

日時 :12月29日(火)7:30pm、 30日(水)2:00pm & 7:30pm、 31日(木)2:00pm

会場:バンクーバー市内クィーン・エリザベス劇場

チケット: 1-855-985-ARTS (2787) http://www.ticketmaster.com

 

 

舞台の岩本靜羅さん

 

バンクーバー新報から3人の日本人バレエダンサーに尋ねたのは以下の項目。

質問1:ダンサーになったきっかけや経緯は?

質問2:カナダのバレエ団に入団したきっかけは?

質問3:ダンサーとして大変なこと、気を付けていることは?

質問4:ダンス以外の余暇(趣味など)はどのように過ごしていますか?

質問5:これからの抱負は?

 

服部有吉(はっとりゆうきち)さん

服部有吉さん (Photo by Paul McGrath)

 

東京都出身。6歳からクラシック・バレエを習い始め、13歳時にドイツのハンブルグ・バレエ団(以下HB)のスクールに入学する。1999年に研修生として同団に入団し、翌年はコールドバレエ、そして2003年にはソリストになり、数々の舞台を踏む。HBにおける東洋人初のソリスト。2006年にカナダのABに入団。ABでは『シンデレラ』『ロミオとジュリエット』『くるみ割り人形』『真夏の夜の夢』のPuck役などを好演しているプリンシパル・ダンサー。また、ABの作品の振付けも手掛けている。

質問1:子どもの頃にミュージカルを観に行った時、興味を示したのがキッカケですね。

質問2:HBを離れた際にオーディションをたくさん受けましたが、受かったのがここだったまでのことです。(笑)

質問3:よく遊び、よく食べ、よく寝ることですね。

質問4:二人の子供と遊びます。

質問5: 今の時代に合ったダンスパフォーマンスの形を作っていくのが今一番の課題です。劇場に限らず、既成の価値観にとらわれず。

質問6:昨シーズンは服部さん振付の『カルメン』が初公開されました。 ダンサーとしての経歴が長い服部さんですが、この振付けをしてどうでしたか? 僕にとっては、踊り手であることと振付家であることは紙一重です。振り付けそのものは初めてではないのですが、『カルメン』という有名な題材に取り組むということで、かなり緊張はしました。もうすでにいろいろな巨匠たちが作品化しているので、僕が改めて振り付けする意義がないといけない。それを見つけるのに苦労しましたね。戯曲を何十回読み返したことか。

質問7: 今シーズンは服部さんの振付作品はありますか? 2月には僕の新作、『春の祭典』(演目名は未定)を発表します。これもまたダンス界では超有名作品です。しかし、決まったストーリーはありません。これはもう音楽と僕の真剣勝負という感じですか。少しでも気を抜くと音楽の巨大さに飲み込まれてしまうような緊迫感を感じます。

 

佐々木瑠菜(ささきるな)さん

佐々木瑠菜さん (Photo by Paul McGrath)

 

神奈川県出身。6歳からバレエを始め、16歳でアメリカにバレエ留学し、ヒューストン・バレエ・アカデミー(以下HBA)とボストン・バレエ・スクール(以下BBS)でバレエを学ぶ。2011年のユース・アメリカン・グランプリの地区予選で1位となり、ニューヨーク開催の同グランプリで決戦出場を果たした。好きな演目は、『ジゼル』『ドンキホーテ』ジリ・キリアンの『ベラ・フィグラ』、バランシンの『フー・ケアーズ?』など。2013年にABに入団。

質問1:バレエを始めたきっかけは、友人が近所のバレエ教室に通っていてチュチュ姿に憧れたからでした。きちんとプロを目指そうと思ったのは16歳の時。バレエを続けるか大学進学かを賭けて参加したコンクールでアメリカのHBAから1年間の全額奨学金をいただき、そこでバレエの道に進もうと決心しました。アメリカでの2年間の内、BBSで1年間トレーニングを受けている間に海外での就職を意識し始め、数多くのオーディションを経て今に至ります。

質問2:アメリカにバレエ留学していたのもあり、北米または英語圏での就職が希望でした。日本で同じバレエ教室だった先輩が当時ABに所属していたのもあり、ABを含めたカナダのオーディション・ツアーを計画し、幸運にもABに入団できました。

質問3:疲労を溜めないように日々の体調管理には気を使っています。特にツアー中は外食がメインになるので食事管理が難しいですが、なるべくビタミンやたんぱく質をしっかり摂れるよう意識した食事を心がけています。1日の終わりにはセルフ・マッサージや、時間があればエプソム・ソルトのお風呂にゆっくり浸かってその日の疲れを翌日まで残さないようにしています。あとはストレスを溜めないことでしょうか。

質問4:基本的には家でのんびりと過ごすことが多いです。冬になって最近また編み物を始めたので、今年の冬はかぎ針編みで何か大きな物でも作ろうかと考え中です。週末や時間がある時にベーキングや、ちょっと凝った料理を作るのが好きですね。

質問5:さまざまなスタイルの作品に柔軟に対応できるようになるのが大きな目標です。クラシックだけ、コンテンポラリーだけ、という偏ったダンサー、もしくは、どちらも中途半端なダンサーではなく、どんなジャンルもうまくこなせるダンサーになりたいですね。現時点の自分に満足することなく常に上達することにハングリーでいたいです。

 

岩本靜羅(いわもとせいら)さん

岩本靜羅さん

 

福岡県出身。父の転勤先のイギリスで3歳の頃にバレエを始め、帰国後日本でもバレエ教室に通い始める。17歳でアルバータ・バレエ付属スクール(以下SAB)に1年半留学後、2年間オランダ国立バレエ学校(以下NBA)へ留学。2014年にアルバータ・バレエ団のセカンド・カンパニー(以下AB2)に入団。2015年秋よりABに入団。

質問1:17歳の頃SABに1年半留学し、その後2年間をNBAで過ごしました。SABではチェケッティというイタリア流のメソッドとイギリス流のメソッドを合わせたトレーニングでしたが、NBAではワガノワ・メソッドというロシア流のメソッドとフランス流のポアント・ワークのトレーニングを受けました。1年目はワガノワスタイル独特の姿勢や決まりに慣れるのに苦労し、世界中から集まったクラスメイトたちと自分を比べて落ちこむことも多々ありました。アムステルダムではほとんどの人が英語を流暢に話すので日常生活であまり困ることはありませんでしたが、学校でのレッスン中、オランダ人はオランダ語でアドバイスを受けることが多く、何を注意されているのかを理解したかったので、ある程度勉強しました。

質問2:NBA時代に怪我で思うようにオーディションが受けられなかった頃にSABの恩師アラーム・マヌキャン先生より来シーズンから新設されるAB2に誘っていただき、卒業後にAB2に入団しました。昨年のAB2はメインカンパニーの『ドンキホーテ』『三銃士』『くるみ割り人形』のリハーサルや公演に出演したり、アルバータ州内の小・中学校をまわって公演しました。AB2では、『ドンキホーテ』『三銃士』『くるみ割り人形』に出演しました。ABのリハーサルに参加していない期間でも週に1度はABの団員と一緒にクラスを受けることができ、大変刺激を受けました。

質問3:常にバランスの良い食事と十分な睡眠を心がけています。体力、集中力のどちらかでも欠けては成り立たない仕事です。

質問4:友人と映画やテレビを観たり、音楽を聴きながらリフレッシュしています。最近自転車を買ったので、近くの公園に散歩に行ったりもします。

質問5: 作品ごとに全く違う表現のできる、型にはまらないダンサーになれるよう日々前進していきたいと思っています!

 

ABの来年の公演予定

2016年2月の3つのコンテンポラリー・バレエ作から成る『ダイナミック・ディレクションズ』というプログラムには、服部有吉さん振付の新作も含まれている。3月にはABの芸術監督振付けのシェークスピアの名作『ロミオとジュリエット』、5月にはエルトン・ジョンのストーリー『ラブ・ライズ・ブリーディング』の公演が予定されている。

(取材 北風 かんな)

 

『ジゼル』公演での服部有吉さん (Photo by Paul McGrath)

 

『ジゼル』公演での佐々木瑠菜さん (Photo by Paul McGrath)

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。