ヴァイオリニストの カレン五明さん

 

日系指揮者の準メルクルさんと共演

 

日本生まれ、モントリオール育ちのヴァイオリニスト、カレン五明さんが5月29日、30日、6月1日にバンクーバー・シンフォニー・オーケストラ(VSO)と共演する。 指揮者はカレンさんと同様、日本人を母に持つドイツ出身の準メルクルさん。 日系アーティストふたりの共演を、お見逃しなく!

  

カレン五明さん(写真提供 VSO) 

   

ストラディヴァリウスの謎

 史上最高のヴァイオリンとされるストラディヴァリウス(通称ストラド)。17世紀イタリアの天才職人アントニオ・ストラディヴァリ(1644 - 1737)が製作したもので、約600挺が現存し、その多くは数億円以上の値で取引されている。

 一昨年秋、自らもストラディヴァリウスを使用するカレン五明さんが出演した、NHKスペシャル『至高のバイオリン ストラディヴァリウスの謎』が放送され、話題になった。

 

ストラディヴァリウスを使用するカレン五明さん(写真提供 VSO)

指揮者の準メルクルさん(写真提供 VSO)

 

ヴァイオリン作りの街を訪ねて

 「その旅は、ミラノから電車で1時間ほどのクレモナからスタートしました。ストラディバリが住んでいた街です。街のあらゆるところにヴァイオリン関係のおみやげや楽譜が売られていて、びっくりしました。ヴァイオリン博物館や、職人の工房を訪ねて製作過程を見学しました」。

 「クレモナから3時間かけて、ストラディバリが木材を選んだと思われる森へも行ってきました。ここには神話も残っていて、神秘的な感じがしました」。

 

クレモナのヴァイオリン工房を訪ねたカレン五明さん(写真提供 カレン五明さん)

クレモナの街でNHK撮影班とカレンさん(写真提供 カレン五明さん)

 

純粋な音と温かいパワー

 世界の名手を惹きつけてやまない名器。カレンさんが使用しているのは、1703年ストラディヴァリ製ヴァイオリン『エクス・フーリス』(Ex Foulis)。

 「幸運にも14年間使わせていただいております。純粋な音、温かいパワーにとても愛着を持っています。ストラドが優れているのは、楽器自体に性格や独自の声が備わっている点です。幸せな感情を表現するのにも、たくさんの表現の仕方をストラドは持っているのです。お互いを知ることで人間関係と同じような関係が生まれています」。

 2年前のVSOとの共演では演奏中のアクシデントを乗り越え、素晴らしい演奏だったとバンクーバー・サン紙が絶賛した。

 「あのときはブラームスの『バイオリンとチェロのための二重協奏曲』を演奏中に、チェロ奏者の弓がヴァイオリンのペグ(糸巻き)に当たってしまい、恐ろしく大きな音が響いてしまいました。幸運にも楽器は両方とも無事でした」。

 

ドイツ人の父はヴァイオリニスト、日本人の母はピアニストという音楽一家に育った準メルクルさん(写真提供 VSO)

 

“心の宝石”と呼ばれる作品

 今年は、チャン・センターとノース・バンクーバーで3つのコンサートを行う。

 「今回弾くのは、メンデルスゾーンの『ヴァイオリン協奏曲 ホ短調』で、19世紀のヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒムが“心の宝石”と呼んだものです。心から心へと語りかける音楽で、流動感もあります。純粋で美しい感情を伝えたいと思います」。

 「VSOとは長いおつきあいですし、バンクーバーは私にとって特別の場所です。そんな温かなところで演奏できるのは、とても楽しみです」。

 

かれん・ごみょう:1982年東京生まれ。2歳の時、モントリオールに移住。5歳でヴァイオリンを始め、7才の時『イ・ムジチ・ド・モントリオール・コンクール』で審査員特別賞受賞。翌年、ケベック・シンフォニーと共演。9才の時『カナダ音楽コンクール』で1位入賞。10歳の時に、故ドロシー・ディレイに招かれジュリアード音楽院で学ぶ。15歳の時、ヤング・コンサート・アーティスト国際オーディションで優勝。現在、ヨーロッパや北米で演奏活動を続けている。ニューヨーク在住。

 

5月29日(金)、30日(土)チャン・センター(UBC)8:00開演 6月1日(月)センテニアル・シアター(ノース・バンクーバー)8:00開演 VSOバンクーバー・シンフォニー・オーケストラ 準メルクル(指揮)、カレン五明(ヴァイオリン) プロコキエフ、メンデルスゾーン、シュトラウス www.vancouversymphony.ca または電話604-876-3434

 

(取材 ルイーズ阿久沢) 


 

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