「だからこの時代に生まれた〜フクシマを描く〜」

バンクーバーに上陸!

 

UBCのLOOKOUT GALLERYにて、5月7日(木)、9人の日本人アーティストによる展覧会 『FUKUSHIMA TO VANCOUVER 2015』 が始まった。昨年3月に福島で開催されたアート展『だからこの時代に生まれた〜フクシマを描く〜』が太平洋を渡り、バンクーバーにやって来たのだ。

この日のオープニング・レセプションには参加アーティストのひとり、ガラス造形作家の尾崎稔成(おざきねんせい)さんが、単独で日本から駆けつけていた。

片面の壁は総ガラス張り、吹き抜けの中二階に設けられた明るい空間には、9人のアーティストたちがそれぞれの思いを込めて、独自のスタイルにて製作した作品の数々が展示されている。

この日、会場には多くの日本人の姿も見られた。質問やコメントを受け、忙しく対応していた尾崎さんに話を聞いた。

  

尾崎稔成氏。3つの作品「Past,Present,Future」の一つと

   

福島原発事故から今日まで

 2011年3月11日の東日本大震災による福島第一原子力発電所(1〜4号機)の事故により、約30万人の一般市民が避難を余儀なくされた。災害から4年後の今もなお放射性物質が放出されている。

 2013年8月までに、推定で272トンの放射性物質を含む汚染水が太平洋に流れ出た。そして避難を余儀なくされた人々は、今現在も20km避難区域外の仮設住宅に住んでいる。

 

「だからこの時代に生まれた〜フクシマを描く〜」

 2013年11月、9人の日本人芸術家たちが、全国から集まり、地震・津波・原発の災害を受けた福島の、第1原発から5キロ地点の立ち入り制限地区内を訪れた。放射線防護服に身を固め、その地で祈り、その場で感じたインスピレーションを作品に現した。作品の中には喪失・悲しみ、そして希望と回復の両面が描かれている。

 ガラス作家である尾崎さんは、「声なき者の会」の発起人のひとり、神田英輔さんから新しい会堂のステンドグラス製作の依頼を受けることになった。そんな関係から神田さんに、福島でのアート展のプロジェクトに参加しないかと誘われたのがきっかけとなったそうだ。福島の被災地を訪れたことは、尾崎さんにとっては、衝撃的な体験になったようである。「震災から約2年後、9人のアーティスト全員で立ち入り制限地区内を訪れた。放射線防護服を身にまとって歩いたその町は、家はそのままなのにまったくの無人と化した、かつて見たこともない異様な風景。ガイガー・カウンターを見ると、空気中よりも地面近くでもの凄い量の放射能が確認できる。町を出る時にも3回ほど念入りなチェックを受け、放射能を浴びてしまった所持品は全てその場に置いて、持ち帰ることは許されなかった」と当時の様子を語った。

 東日本大震災・福島原発事故から3年後の2014年3月、作品は福島県いわき市で展示された。福島でのアート展は、困難の只中における共同の祈りと創造の重要性を示し、将来に希望のメッセージを伝えるものとなった。

 

FUKUSHIMA TO VANCOUVER 2015

 福島でのアート展を通して、日本にいる人たちだけではなく、環太平洋地域の人々と共に希望と和解を見出したい。このような観点をもとに 『FUKUSHIMA TO VANCOUVER 2015』 のプロジェクトは企画された。

 この展覧会では、ただ単に、福島の大災害をバンクーバーの人々に知らせるのではなく、祈りと希望で1つに結ばれ、民族・異文化間の一致と和解を将来の世代に繋げることを目的としている。

『FUKUSHIMA TO VANCOUVER 2015』 は6月25日までLOOKOUT GALLERYにて開催。また、6月10日、午後12時〜1時には9人の参加アーティスト全員がギャラリーを訪れる、というイベントも企画されている。アーティストに会い、話が聞ける良いチャンスだ。ぜひとも足を運んでみてほしい。

 

尾崎稔成さんプロフィール

1947 横浜に生まれる

1965 明治学院大学 経済学部 <商学科専攻>

1976 〜79 Albert Carpentier に師事。 A.C.美術研究所に学ぶ

1980 山梨に工房を移す

1990 Pilchuck Glass Schoolに学ぶ <Seattle. Washington>

1995〜96 海外奨学金を得て、P. Signorettoの工房に学ぶ<Murano. Italy>

1981 山梨造形美術展<山梨県立美術館>特別 奨励賞

1990 現代ガラス造形美術展<箱根彫刻の森美術館>

1990 国際ガラス工芸美術展<RUNを出品>

1990 東京ガラスアート展<FLYING SPACEを出品>

1991 〜97 嬬恋高原現代美術展<屋外彫刻 「風」を出品>

1993 朝日現代クラフト展<GAIA・1を出品>

1993 日本伝統工芸展<金銀零彩器を初出品>

1994 〜98 WILL50人展<風・樹・水を出品>

1997 高島屋<立川>にてガラス器展を開催

1998 〜2000 三越<新宿、仙台>にてガラス器展を開催

            八ヶ岳倶楽部にてガラス器展を開催

 

尾崎 稔成

-ガラス造形作家-

山梨県北都留郡 上野原町芦垣592

TEL/FAX:0554-66-2204/2904

MAIL: This email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it.

Web: www.gem-glass.jp

www.noelglas.server-shared.com

 

LOOKOUT GALLERY

5800 UNIVERCITY BLVD, VANCOUVER, BC

604-224-3245

MON-FRI 8:30AM~5:00PM

SAT 12:00PM~4PM

 

Past,Present,Future 尾崎稔成作

Past,Present,Future 尾崎稔成作

His Eyes 町田俊之作

Dedication to Fukushima 法月純代作

Heven Sent 溝口徳子作

Double Flowered Cherry Tree-The Hidden Gospel井上達夫作

The Time You and I Meet 早矢仕宗伯作

Boader 林美蘭作

Children Who Paint The Future 亀岡亜希子作

 

(取材 M.N) 


 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。