シンガーソングライター
広瀬香美さんインタビュー
4月4日、バンクーバー・コースタル・ハーバー・ホテルで行われたチャリティーイベント「サクラ・ベネフィット・イベント」（日系プレース基金主催）出演のためにバンクーバーを訪れた歌手の広瀬香美（ひろせこうみ）さん。 バンクーバー・メトロポリタン・オーケストラ（VMO)の演奏で歌う本番を前に、VMO首席指揮者のケン・シェさんと共に取材陣の前に姿を現した。
シンガーソングライター、ボイストレーナー、音楽監督と幅広く活躍中の広瀬さん
ミリオンセラーのシンガーソングライターが生まれるまで
絶対音感を持つという広瀬香美さん。５歳の時から英才教育を受け、進学先は国立音楽大学作曲学科。その学業の傍ら、ロサンゼルスにてマイケル・ジャクソンやホイットニー・ヒューストンのボイストレーナーだったセス・リッグスに師事した。デビューのきっかけはロサンゼルス滞在中に製作した自作のデモテープだったという。
「冬の女王」
１９９２年にデビュー。ミリオンセラーとなった『ロマンスの神様』（１７５万枚）で一躍有名に。この『ロマンスの神様』と『ゲレンデがとけるほど恋したい』がスキーをはじめとするスポーツ用品メーカー「アルペン」のテレビCMに起用されたことで「冬の女王」とのイメージが定着。
歌手として活動しながら、郷ひろみや少年隊ほか数々の歌手に曲を提供する作詞・作曲家としても活躍してきた。今回のサクラ・ベネフィット・イベントで歌う曲目も、VMOのオーケストラのために自らが楽譜を書き起こしたという実力派だ。
ボイス・トレーナーとしても活躍
さらに活動は歌唱の指導にも及び、独自のメソッドに基づくボイス・トレーニング、ボイス・レッスンを行うスクール「広瀬香美音楽学校」を１９９９年に創設し、現在も人気を博している。その指導力を買われてNHKの番組『趣味Do楽―誰でも歌はうまくなる！広瀬香美のボーカルレッスン』（２０１２年放送）ほかでボイストレーナーとしてのテレビ出演も。２０１１年には初著書『今日から歌がうまくなる！広瀬香美の歌い方教室』、昨年の12月には『絶対音感のドレミちゃん』というエッセイ本を出版し、現在もコンサートツアーやテレビ、ラジオの出演と精力的に活動中。そんな幅広い活躍を続けている広瀬さんは、アメリカ人と結婚し、ロサンゼルスに拠点を置きながら、日本と行き来する生活を行っている。
この日の記者会見ではバンクーバー各紙の記者を前に、英語と日本語でインタビューに答えてくれた。
日常生活で美声を保つために気をつけていることはどんなことですか？
風邪をひかないということにものすごく気をつけています。日本でマスクをするのは普通ですけど、こちらでマスクを着けると変な人に思われますから、マスクを着けたくても着けられないので苦労しています。
そして毎日３時間、発声の練習をしていますが、そうした練習を欠かさずすることが自信にもつながっています。
広瀬さんといえば伸びやかなハイトーンの歌声が印象的ですが、高音をきれいに歌うちょっとしたコツを伝授してもらえますか？
高い音はたくさん体の筋肉を使います。なので私は運動をよくしています。毎日はできていませんが、週に３回くらいはインナーマッスルをつける運動をしています。 高音をきれいに出したかったら、水泳でも、ウォーキングでも、ランニングでもいいですから、運動をするといいですよ。
バンクーバー・メトロポリタン・オーケストラ首席指揮者のケン・シェさんと共に記者会見に登場
たくさんの人たちの歌唱の指導を経験してわかってきたことがいろいろあると思います。そのなかでどの人にも生かせる歌の上達のポイントをひとつ聞かせてください。
楽しんで歌うことですね。「体調が悪かったり、心配事があったりしても、歌うときにはその事を考えないでくださいね」と生徒の皆さんに語っています。
現在、歌の生徒さんたちの数が４００人を超えていて、私が直接、具体的に指導できるのは、生徒さんたちの講師となっているトップレベルの人たちだけになっていますので、皆さんには「楽しんで歌ってね、練習たくさんしてね、風邪ひかないでね」—そんな感じで伝えています。
曲作りについても話を聞かせてくれますか？
作った曲はものすごくたくさんあります。でもその中から日の目を見たのはほんのわずかです。自分にとって曲作りはとても大変です。寝ないで書いたりしますけど、いいものが書けるととてもうれしいですね。
作詞と作曲、どちらに対しても同じような熱の入れ具合いですか？
うーん…作詞のほうが大変です。詞をみんなが理解するのは難しいですよね。曲のほうが自由に作ることができるので、私は作曲の方が好きですね。
曲作りのうえで、アメリカに住んでいることは影響がありますか？
日本にいるときにはコンサートツアーとか、テレビやラジオの仕事をしますから、日本では曲作りに集中する時間がないんです。ロサンゼルスに戻ってくるとそうしたお仕事がないので曲作りに専念できます。日本とアメリカの両方で時間を過ごすことでバランスが取れます。
バンクーバーに来られたのは初めてですか？
はい、今回が初めてです。
こちらの印象は？
カナダはなんて大きいんでしょう。食べ物がおいしいし、人も親切だし。とっても気に入りました。
他の街には行きましたか？
いえ、３日間だけの滞在で今回はバンクーバーだけです。ぜひ今度はゆっくり来たいです。
バンクーバーはロサンゼルスから近いですよね！
「サクラ・ベネフィット・イベント」で歌われる歌は？
『ロマンスの神様』『ゲレンデが溶けるほど恋したい』『Dear –again』など、カナダに住んでいる方が懐かしいなと感じていただけたらいいなと思って歌わせていただきます。
「カナダが気に入ったので３分の１はカナダにも来られるように工夫したいです」と魅力的な言葉を残していった広瀬さん。きりっとした姿勢でハキハキと誠実に回答する姿は、テレビの画面で観る印象と変わらない清々しさがあった。
広瀬さんを迎え、リハーサルを行ったVMO指揮者のケン・シェさんは「VMOにとって日本のポップスの演奏は初めてのことでとても新鮮。香美はとても素晴らしい」と感動ぶりを語った。会見中、広瀬さんが「ケンがバンクーバーに招いてくれたのよね」とジョークまじりに語ったり、対するケンさんが「コウミは自分の妹分だ」と紹介するなど二人が懇意にしている様子が伝わってきた。
この度のバンクーバーの人々との交流が、広瀬さんの再来加に向かう力になることを期待したい。
（取材 平野香利）
