日系少年野球チーム「新朝日」いざ日本へ!

 

2014年12月19日は、映画『バンクーバーの朝日』の再上映の開始初日だった。バンクーバーのバン・シティ・シアターの劇場の舞台に並んだのは、あどけない顔つきの少年から、落ち着いた雰囲気の青年までの17人。結成間もない日系ユース野球チーム「新朝日」のメンバーは少しはにかんだ表情で観客の前に姿を見せた。映画の再上映決定、チーム紹介の機会、このフレッシュなチームには、さらにいくつもの幸運な巡り合わせがある。

  

日本遠征に意欲満々の新朝日のメンバーと在バンクーバー日本国総領事岡田誠司氏(2列目右から5番目) 

 

情熱あふれる新朝日発起人とサポーターの皆さん 

 

  

「バンクーバー朝日軍」ふたたび

 第2次世界大戦前までの27年間、バンクーバーで活躍していた日系野球チーム「バンクーバー朝日軍」。カナダ野球殿堂入り(2003年)、ブリティッシュ・コロンビア・スポーツ殿堂入り(2005年)を果たしたうえ、日本での小説や漫画、さらに昨年の映画化で注目を浴びている。その朝日軍の栄誉を称える記念試合を行おうと、2014年10月に結成された日系の少年たちの野球チームが新朝日(カナディアン日系ユース・ベースボール・クラブ)だ。

 

 

 

 

映画再上映の場で

 上映前、情熱いっぱいに新朝日をリードする発起人のひとり、 エミコ・アンドウさんの挨拶に続いて岡田誠司在バンクーバー日本国総領事がチームメンバーを観客に紹介。チームを代表してコール・ダラザナ君とアレック・カミング君が「日本へ遠征に行くのが楽しみです」と挨拶すると、観客は拍手でエールを送った。

 館内のロビーでは、鮮やかな紅白の新朝日の帽子やユニフォームが並べられた。これらの売り上げが日頃の活動費や日本遠征の資金となる。こうした募金活動と、劇場でのチーム紹介について、新朝日運営メンバーが劇場側に相談したのは、上映のわずか3日前。幸い承諾が得られて、急いで準備を間に合わせた。「映画の再上映は私たち発起人も望んでいたことでしたが、まさかこんなに早く再上映となるとは思いませんでした」と福村十三郎(とみお)さん。映画の再上映は、新朝日の少年たちに映画を観てもらう機会であると同時に、新朝日を地域の人々に紹介し、サポートを呼びかける絶好の機会にもなったのである。

 

挨拶に立ったコール・ダラザナ君

アレック・カミング君も日本行きへの期待感を語った。 

帽子やTシャツを販売しての寄付集めも 

 

 

新朝日結成の経緯

 発起人のメンバーはそれぞれに「日系ユースの野球チーム結成」の夢を描いていた。ある人は野球の上手な日系の少年が何人もいることに注目。「彼らを集めたら強いチームができる」。ある人は、当地の日系ホッケーチームが日本に遠征を行っていることをうらやましく思っていた。「野球でも同じことができたら・・・」。それぞれのアイディアに、「朝日」の栄光と功績を引き継ぎ、日系コミュニティを盛り上げたいとの思いが重なった。その夢を形にと動き出したのはちょうど『バンクーバーの朝日』初上映と同じ、2014年の9月だった。ジョッシュ・カワードさんの呼びかけで、エミコ・アンドウさん、サミー高橋さん、福村十三郎さん、ジョン・ウォンさん、小川学さんが集まり、チーム結成に向けて動き出した。そしていち早く協力に乗り出したのが岡田総領事である。

 そこからの行動の早さは驚きだ。発起人ミーティングの初回の日から、チームメンバーを募り、ユニフォームを作った。10月11日の「第6区セインツ」との記念試合までは、わずか11日間だった。

 

記念試合の様子

 試合の日まで雨続き、当日も雨で始まった1日だったが、試合直前の朝10時、天気が一気に好転。少年たちは太陽の下でプレーすることができた。試合に招待された岡田総領事は、自らも揃いのユニフォームを着て観戦。この日の新朝日の試合ぶりをこう語る。「最初は1回の表で相手チームに4点取られて勝てないと思ったんですけど、映画『バンクーバーの朝日』よろしく、バントと走塁で点を取り始めたんですよ。結果的には12対11で勝ちました。まさにかつての朝日軍を彷彿とさせる試合ぶりでしたね」。

 

日本各地の大きなサポートを受けて

 3月5日から11日間の予定で新朝日は日本遠征へと旅立つ。最初の対戦相手は横浜市の中学生。「チームのコーチのかつての野球仲間が、横浜で対戦相手や滞在先を手配してくれました。横浜はちょうど2015年がバンクーバーとの姉妹都市50周年の年ということで、先日バンクーバー市担当者と面会したところ、今回の横浜のチームとの交流試合を50周年記念行事の一環として組み込んでもらうことができました」とアンドウさん。

 次に予定している愛知県大府市・大府高校の野球部との交流試合は、昨年11月に来加した大府市市長との出会いから発展したもの。「大府高校は甲子園に7回も出場したことのある強豪チームなんです」(アンドウさん)。新朝日の子供たちは日本で大きな刺激を受けてくることだろう。  

 

 

寄付集めにひと工夫

「アサヒ・スシ・ロール・チャレンジ!」

 発起人とチームメンバーのまっすぐな思いから、絶妙なタイミングと周囲のサポートに恵まれ、ぐんぐんと邁進している新朝日に、資金集めのアイディアも生まれている。その一つが2月8日に予定しているアサヒ・スシ・ロール・チャレンジだ。(別枠参照)。サポート面では現在、ANAやフジヤ、エンジェルシーフードなどの企業や個人から支援が集まってきている。 「チームメンバーには日系1世から3世といろんな子供たちがいて交流できるのがいいところだと思います。皆、最初はシャイだったんですが、だんだんお互い慣れてきていますね」。若い世代の日系人の交流は将来どのように発展していくのだろう。新朝日は、そんな楽しみも未来の日系コミュニティにもたらしてくれそうだ。

  

 

新朝日応援企画 「アサヒ・スシ・ロール・チャレンジ!」

日時:2015年2月8日(日)午後7時〜

会場:日系センター 6688 Southoaks Crescent, Burnaby

会費:一人25ドル

出場する寿司シェフたちが、新朝日をイメージした巻き寿司作りに挑戦。入場者は寿司シェフが腕をふるって創作する朝日ロールを楽しみながら、その誕生を祝うというイベント。利益は新朝日の活動費に充てられる。

 

新朝日チームメンバー募集

対象年齢は9歳から15歳。

問い合わせは This email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it.

チームの情報はフェイスブックのCanadian Nikkei Youth Baseball またはCNYBCから参照できる。

 

メンバー募集と「アサヒ・スシ・ロール・チャレンジ!」のお知らせ 

 

映画『バンクーバーの朝日』

バンクーバー朝日軍を題材とした映画『バンクーバーの朝日』が、2014年9月にバンクーバー映画祭で日本に先がけプレミア公開され、観客から最も人気の高かった映画に贈られる賞「観客賞」を受賞し、同年12月19日から日本での公開に合わせて再上映された。

「日本でこの映画が公開後に遠征できることもタイミングとしてはありがたいことだと思います」と福村さんは語る。

 

 

 

(取材 平野香利) 


 

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