島の名所は他にもたくさん!

 

カナダで一番小さな州プリンスエドワード島(PEI)は、日本の愛媛県と同じくらいの大きさである。セントローレンス湾の中に位置しているこの島は、その形からファーストネーションの言葉で、「波間に浮かぶゆりかご」と呼ばれた。 周りを海に囲まれているので、島のどこからでも20分も車を走らせれば海岸につくと言われている。美しい海岸が多く、島の北と南ではビーチの砂の色が違うので見える景色も違ってくる。北海岸のビーチは波が荒いことが多く、長い年月をかけて、赤かった砂が洗われて白くなってきたそうだ。反対に南海岸は穏やかな海のため、赤い砂のままである。 今回は赤毛のアンだけではないPEIの見所を紹介しよう。

 

鳴き砂のビーチ Basin Head 

 

 島の北東にBasin Headと呼ばれるビーチがある。ここには世界に3つしかないと地元の人がいう、鳴き砂のビーチがある。鳴き砂は日本には150カ所ほどあるそうだが、このビーチを誇りに思っている彼らの前ではその事実を話すことはできない。しかし、その事実を言わなくても、カナダの旅行サイト「Vacay.ca」で、このBasin Headがカナダの美しいビーチの1位に昨年選ばれたので、地元の人たちには言おうと言わざると関係ないだろう。なにせ、カナダで1位なのだから。ちなみにBCはバンクーバーアイランドから2つのビーチが3位と5位に入った。

 Basin Headビーチは南海岸に位置しており、驚くほど赤い砂が印象的だ。英語でSinging Sandと呼ばれる鳴き砂は、不純物が入ると鳴かなくなってしまう。ここも出入りが多いビーチの入り口近辺は鳴かないが、50メートルほど歩くと音が鳴り出すので、探してみてはいかがだろう。裸足で歩いても靴で歩いても鳴く音に変わりはない。州都シャーロットタウンから車で90キロほど。1時間半も走れば赤い砂浜が広がる素晴らしい景色に出会える。

 

 

小さな漁港French River 

 

 もう一つのお勧めは北海岸に位置している、キャベンディッシュビーチとダルベイビーチ。両方とも国立公園の中にある。前回、アン関連の観光地としてキャベンディッシュを紹介したが、実はキャベンディッシュは夏の避暑地として多くのカナダ人、アメリカ人でにぎわう場所で、コテージやB&B、キャンプ場、アトラクションが道沿いに立ち並んでいる。

 その中心ともいえるキャベンディッシュビーチは白砂と砂丘が広がる美しいビーチだ。夏は多くの海水浴客でにぎわうが、芋の子を洗う状態ではない。水温が真夏でも19度前後と冷たいので、泳いでいるのは元気な子供ぐらいである。約5キロ続くビーチは、海に沈む太陽を眺めながらのんびりと歩く散歩にはうってつけだろう。また夜は満点に輝く星空を楽しむこともできる。天の川はもちろん、人工衛星が動いているのを見ることもできる。誰もいない静かなビーチで波の音を聞きながら星空を眺めてみてはどうだろう。

 

PEIではぜひ試したい!ロブスター

 

新鮮な牡蠣も楽しめる

 

 もう一つの国立公園の中の美しいビーチはダルベイだ。こちらはビーチよりもその側に立っているDalvay by the Seaというホテルが有名である。ロックフェラーとともにアメリカの石油会社の社長も勤めたことがあるアレクサンダー・マクドナルドという人物によって1895年に建てられた。もともとは別荘として建てられたものだが、今は美しいホテルとしてよみがえった。

 「赤毛のアン」の映画や、「アボンリーへの道」の撮影でも使われ、2011年、イギリスのウィリアム王子とキャサリン妃がPEIを訪れた際には、このホテルとそばのビーチで午後を過ごした。残念ながらこのホテルは宿泊客かレストラン利用者以外は入れないことになってしまったので、行くときは気をつけて欲しい。7、8月はレストランで本格的なアフタヌーンティーが楽しめるので、窓の外に広がるダルベイレイクを見ながらゆったりした時間をおいしい料理とともに楽しめるだろう。

 

 

ダルベイ・ビーチにあるホテル「Dalvay by the Sea」

 

 PEIは海に囲まれた島なのでシーフードもお勧め。特にロブスター漁は夏の風物詩であり、カナダで捕れるロブスターの20%はPEIが占めている。冷たい海水のため、身が引き締まっており、歯ごたえがプリプリとしていて、とても美味。溶かしバターにつけて食べるのがPEI流だ。今でこそ、高級食材の仲間入りをしたロブスターだが、1960年代ごろは海岸に打ち上げられるほどおり、畑の肥料として使われていたこともある。子供が学校にロブスターサンドイッチを持っていくと貧乏人の子供としてからかわれたそうだ。毎年5月1日 がロブスター漁の解禁日であり、5月の母の日にロブスターを家族で食べるのがこの島の伝統である。旅行者はロブスターサパーを楽しむと良いだろう。ロブスターを頼むとムール貝、シーフードチャウダー、デザートなどが食べ放題になるレストランが島の各所にある。ムール貝と牡蠣の養殖も盛んなので、ぜひ新鮮なものを食していただきたい。毎年9月には、シェルフィッシュフェスティバルという海の幸を堪能できるイベントがある。

 

カナダ本土とPEIを結ぶ全長約13キロメートルのConfederation Bridge

 

 PEIの産業の中で、一番を占めているのは農業だ。島の 46%が農場で1900もの農家がある。特にカナダで採れるじゃがいもの30%がこの島で採れ、Spud IslandといったらPEIを指していることは有名な話だ。現にカナダ人には「赤毛のアン」より、「ポテトの島」といったほうが分かりやすいらしいし、ジャガイモ博物館なるものもある。鉄分が多く含まれミネラルもたっぷりの赤土は、じゃがいもの育成に適しており、毎年8月になると島がジャガイモの白い花で埋め尽くされる。

 PEIは赤い土でも有名だ。酸化鉄というサビと同じ成分が含まれているため赤い大地となり、雨が上がった後はより鮮やかな赤になる。この赤土は洋服につくと取れなくなってしまう。その特性をいかし、島の赤土で染めたTシャツも土産物屋で求めることができる。しかし、田舎なので歩くときはくれぐれも泥跳ねに注意しよう。

  「赤毛のアン」が世界で一番美しい島とこの島を形容したが、それぞれの時期によって美しさも景色も変わる。作者のモンゴメリがPEIの色をルビー、エメラルド、サファイアと3種の宝石に例えている。ルビーは島全土で見られる赤土を、エメラルドは広大なジャガイモ畑や、なだらかな牧草地など島に54種類あるといわれている緑を、サファイアはどこまでも続く紺碧の海と抜けるような空の青を表しているそうだ。

 PEIを訪れるのであれば、6月から10月の紅葉の季節までがお勧めである。特に今年は、カナダ建国のための会議がPEIの州都シャーロットタウンで開催されてから150周年の節目の年にあたり、島をあげてのイベントが5月から12月まで各地で開催されている。

 観光業も盛んなところだが、観光地化、商業化されていないところがPEIの魅力でもある。昔から変わらず、これからも変わることのない景色があなたを待っているだろう。そして「赤毛のアン」を読んだ後にこの地に降り立てば、誰の心の中にもある昔懐かしい郷愁があなたの心に広がることだろう。 

 

四ノ宮嘉代さん

  

四ノ宮嘉代

プリンスエドワード島在住。

B&B「Cavendish Breeze Inn」経営

Cavendish Breeze Inn

www.cavendishbreezeinn.com

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1-866-963-3385

 

(文・写真 四ノ宮嘉代)


 

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これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。