スライドを使って中医学について説明
西洋医学との違い
中元先生は、中国伝統医学(以下中医学)を説明するにあたり「バランス」という言葉を何度か強調した。病気を治療する西洋医学と違い、中医学は体全体を診る。例えば、ひどい頭痛に悩まされたとする。問診の後、レントゲンや血液検査後、痛み止めなどの薬が処方され必要な場合は手術をするのが西洋医学だが、中医学では脈、舌、顔色、体質などを診て原因がどこから来ているのかをつきとめる。原因が見つかれば鍼、漢方薬、そして食事、運動、睡眠など体全体のバランスを整えるようにする。
また、中医学は西洋医学と治療や薬の処方の仕方も違う。例えば、若い人とお年寄りでは処方される薬が違う。実際に体調の悪かったおばあさんが自分と同じ漢方薬を孫にあげたところ、3日後孫の鼻血が止まらなくなったそうだ。女性も生理中と生理後では治療が違う。漢方薬には副作用があると信じている人もいる。確かに飲んではいけない時期や体調の時に飲んで反対の悪い作用が出ることもある。同じ患者でも、その日の体のバランスで薬の処方、鍼を打つ場所が変わるそうだ。朝、何時に起きるのか、子どもはいるか、働いているか、夜のシフトはあるか、趣味はあるかなど漢方薬の先生はいろいろな質問をする。それは患者の生活を詳しく知ることでよりよい治療ができるからだ。
たくさんの人が訪れた薬膳料理講習会の様子
陰陽説と五行説
陰陽説では身体に陰(いん)と陽(よう)のバランスがあるとされる。2つの物質は固定されず、たえず変わっていくとみられる。陰は暗く重く静かで、下にさがるエネルギーであり、陽は明るく軽く活動的で、上にあがるエネルギーである。宇宙のあらゆる物がこの相反する陰と陽で成り立っている。またこの2つが調和して自然が保たれる。陰の中に陽があり、陽の中に陰がある。陰が陽に変わり陽が陰に変わる。どちらかが欠けるともう一つは存在しないと考えられる。
バランスを重んじる五行説では自然界の質として5つの要素(木、火、土、金、水)が身体の中で互いに作用していると考えられる。講習では五味、五色、五悪、五季、五臓、五根、五腑などがあげられた。例えば「木」の項目には「怒」と「肝」と「酸」があり、怒ってイライラすると肝臓が悪くなる。また、肝臓が悪くなると怒りっぽくなるそうだ。そんなストレスの溜まる肝臓には、酸味のあるものをとるのが効果的というようにわかりやすく説明された。
薬膳料理について
陰陽説では身体に陰(いん)と陽(よう)のバランスがあるとされる。2つの物質は固定されず、たえず変わっていくとみられる。陰は暗く重く静かで、下にさがるエネルギーであり、陽は明るく軽く活動的で、上にあがるエネルギーである。宇宙のあらゆる物がこの相反する陰と陽で成り立っている。またこの2つが調和して自然が保たれる。陰の中に陽があり、陽の中に陰がある。陰が陽に変わり陽が陰に変わる。どちらかが欠けるともう一つは存在しないと考えられる。
バランスを重んじる五行説では自然界の質として5つの要素(木、火、土、金、水)が身体の中で互いに作用していると考えられる。講習では五味、五色、五悪、五季、五臓、五根、五腑などがあげられた。例えば「木」の項目には「怒」と「肝」と「酸」があり、怒ってイライラすると肝臓が悪くなる。また、肝臓が悪くなると怒りっぽくなるそうだ。そんなストレスの溜まる肝臓には、酸味のあるものをとるのが効果的というようにわかりやすく説明された。
中元先生が「薬膳料理についてどんなイメージを持っていますか?」と質問すると会場から「おいしくない」と声が聞こえた。その答えに思わず笑いながら、「スープの中に漢方薬というようなイメージは捨ててほしい」と言う。そして、「日常の料理が薬膳料理です。意識を変えると薬膳料理になるのです」と続けた。
今回講習者に一週間分の食事記録表が配られた。朝、昼、晩の食事の種類を記録していき、品目を数えて足していく。量でなく種類のみが数えられる。一日の目標はなんと30種類。25種類を超えるとほぼバランスが良いそうだ。
さらに自分の書いた品目に表の「五色」と「五味」があるかどうか確かめる。五色では、ほうれん草などの葉野菜は緑、トマトやイチゴは赤、芋類やとうもろこしは黄、チーズや豆腐は白、ゴマ、ナッツ、椎茸類は黒である。五味では酢の入ったすし飯などは酸味、メロン、ケールなどの瓜系は苦味、大豆やかぼちゃは甘味、生姜やしそは刺激のある辛味、海藻、わかめは塩辛いとなるそうだ。また「まごはやさしい」の食品も大切。
体質、症状、体調、季節に合わせる薬膳料理に関して特に大事な五色と五味
朝ごはんは7品目あるとよいとされる。コーヒーとパン以外にヨーグルト、豆乳、蜂蜜、果物、何種類かのナッツ、ドライクランベリー、レーズン、チーズなどがおすすめ。みそ汁なら薬味や具の種類を数える。中元先生は、毎週3種類の果物を購入するそうだ。できればバナナ、リンゴのような定番でだけでなく、なるべく翌週は違う3種類が好ましいとのこと。
中元先生は「体は2週間で変わるのでがんばってほしい」と勧める。慣れてくるといろいろな物をスープに加えたくなり、料理も楽しくなるそうだ。しかし体に良いとされるものも、摂り過ぎはよくない。自分の体質を把握して、自分には何が必要かを習うとよいということだ。
最近は肉料理を減らす傾向があり、たんぱく質が減ってきているので豆乳がおすすめだという。豆乳は高たんぱくで低カロリー。コレストロールも低下させる。整腸作用があり便秘にも効く。しかし、体にいいからとたくさん摂り過ぎては五悪となる。バランスが大事で一日200〜400mlを目安とする。
豆乳スープの作り方を説明する中元先生
患者の立場で指導
中元先生のクリニックでは、鍼と漢方薬の治療の他に、「かっさ」と「カッピング」も行う。血液は体全体に流れているが、血行が悪いと表面の毛細血管までいきわたらない時がある。血行を促進するために皮膚を水牛の角のプレートでこするのが「かっさ」で「カッピング」は空気を抜いたカップを皮膚の上にのせる。悪い所があると皮膚が赤色や赤紫色になるが、3日ほどで元に戻るそうだ。
個々の食事療法の指導では「魚が足らない」「この色がない」と指摘し「それではこれを入れましょう」と一対一で具体的なアドバイスをしてくれる。ストレッチ、ヨガについても詳しいアドバイスが聞ける。男性でも肩こり、腰痛、更年期障害のため、また子どもの心理療法のために訪れる患者もいるという。
中元先生はスティーブストン日本人学校で14年間教師と校長を務めたが、地元で有名な胡蓓玉(フー・バイユウ)医師に出会い、感銘を受け、大学で勉強したという。フー先生のもとでいろいろな実践指導を受け、今でも毎週アシスタントとして勉強しているという。CTCMA(College of Traditional Chinese Medecine Association)のドクターとして登録されている先生は、クリニックの他にもボランティアとして健康講座を定期的に開催している。収益金はすべて寄付であり、次回もスティーブストンの日本語学校で5月22日に英語での講習を行うそうだ。自分自身が患者だったため、患者の症状を一日も早く治したいと語ってくれた。
人間には本来治癒力がある。ストレスなどでバランスが崩れ体調が悪くなると治癒力も落ちてくる。中医学はそれを上げる役目をするそうだ。気持ちを楽にして、自分用の薬膳料理を作ってみるのも良いかもしれない。
(取材 ジェナ・パーク)
リッチモンド・アバディーンセンターに直結するクリニック
■ 問い合わせ ■
Dr. Yuko Nakamoto
Sea Island Wellness Clinic
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Aberdeen Square, Richmond
BC V6X 0J8
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