インタビューに答えるマツダさん
ワークショップで質問の魔法効果を実感
2014年1月20日、「夢がかなう魔法のしつもん」と掲げられたバンクーバー中央図書館の会場には71人が集合した。参加者にマツダさんが最初に投げかけた質問は「この2時間であなたが得たいものは何ですか?」。各自が紙に答えを書き、席の近い人たちがグループとなって発表しあった。発表を聞いたら「『いいね!』と言って拍手」がルールだ。どのグループもすぐに打ち解け、笑い声が飛び交った。その後、参加者は現在うまくいっていることや過去の失敗経験、失敗から学んだことなど、九つの問いかけへの回答を発表しあった。このような形式を取っているのは、「インプットとアウトプットがセットになってはじめて学びとなるから」とマツダさんは語る。 ワークショップを終えた参加者に感想を聞くと「失敗への不安が減った」「10年後の理想の自分の姿のイメージができた」「自分をサポートしてくれるファン作りのヒントを得られてよかった」「普段自分が避けてきたことに対面することできた」と皆、興奮気味に語ってくれた。
講演翌日、マツダさんに話を聞いた。
Q:マツダさんの活動はその人の中に答えがあることが前提ですね。そうした「人間観」を表現するものとして、「人間って○○な生き物だよね」と言うとしたらどんな言葉が当てはまりますか?
A:「人間って答えを探し続ける生き物だ」です。多くの人は答えを外に求めて、悩みを人に相談しますが、相手からアドバイスを受けても「そんなこと言われても……」と何もアクションしない。自分が持っている答えがあって、それを相談相手が語ってくれた時に「そっか」と納得できる。結局自分の中に持っている答えというか、腑に落ちることしかしないんですね。
Q:なるほど。では人のやる気についてはどのように考えますか?
A:僕は、やる気は起こさなくてもいいと思っているんです。無理やりやる気を起こすと不自然ですからね。たとえば算数の九九が覚えられない子供でも、ポケモンの名前はすべて覚えられたりする。興味があることは言わなくてもどんどんやるわけです。「しなきゃ」ではなく「したいな」というものが大事で、そこにやる気のもとがあるんです。
お互いが知り合うための「しつもん」の力も手伝って、わきあいあいとワークが進んでいった
Q:この仕事は好きだけど、ある部分でやる気が出ないというときはどうしたらいいと考えますか?
A:なぜやる気が上がらないんでしょうね。原因がその日の環境や心情の問題なのか、そもそもの能力・素質の問題なのかで対策が違う。たとえば記者の仕事だったら、インタビューする人を探す、アポを取る、話を聞く、書き起こす、それぞれが違う能力なんですよね。ある部分では能力・素質があるけれど、ある部分では不得意という人もいる。だったらそこだけ誰かにお願いして自分が得意なことをやり、チームで取り組めば、自分の思う最大のパフォーマンスが発揮できるんじゃないかな。まあこれは理想ですけど、なるべくそこに近づけるというか。会社でやらなければいけないことがある人でも、あらためて自分の得意なこと、やりたくないことがわかっていると少し楽になると思います。
Q:では、生き生きしている人とそうでない人との違いはどこにあると思いますか?
A:生き生きしている人は「やりたいこと」をしている人。そうでない人は「やらなきゃいけないこと」をしている人。でもやりたいことと、やらなきゃいけないことが10対1というわけでなくて、それもバランスであって、やりたいことが50%以上といった感じですよね。
Q:ところで学んだことを外に出していく、しかもビジネスとしてとなると、その最初の一歩が大変と思っている人が多いと思います。マツダさんの場合、それをどうスタートしましたか?
A:まず、「習い終わったらやる」は順番が違っていて、インプットばかりしていて、それが終わったら一人前ではなくて、インプットを10したら、アウトプットを10しないと学びにならない。だから学んでいるそばからアウトプットしないといけないんですよ。だから完璧はない。それを前提に僕はそのアウトプットとして、1日1個の質問をブログで配信することを始めました。小さな一歩が大事で、それは情報を発信でもいいし、学んだことを使って人に何かをしてあげるでもいい。小さなアウトプット、それを継続するのが大事。
日本では、あることを毎日毎日3年やったらごく狭い範囲で業界一で、5年やったら日本一と言われています。それだけ継続する人がいないということ。それはレベルが高いことではなくて、誰にでもできることなんです。そして日本一になると、他の業界で日本一の人たちとつながれるんですよ。つながるとコミュニティもできるし、ネットワークもできる。そして違うステージに行けるんです。
Q:継続が大事なんですね。
A:でもその継続が難しい。なぜ継続できないかと言えば、それは毎日できないようなことにチャレンジしているからですよ。なので僕が何をしたかと言うと、毎日できることしかしなかった。ここはすごく大きなポイントです。たとえば毎日ジョギングすると決めて「せっかくジョギングするんだった5キロぐらいは走ろう」と思ってしまうと続くわけがない。だから「風邪をひいても地震が起きても何があっても必ず続けられるジョギングのボリュームはどのくらいか」と考えるんですよ。そうすると「じゃあ10メートルにしましょう」と。そしたら1週間必ずできるじゃないですか。次の週も絶対できるんですよ。続ける力を身につけることが重要なので、小さく小さく続けるのが大事なんです。
Q:最後に読者の皆さんに毎日自分に投げかけたらいい質問を教えてもらえますか?
A:実際僕が毎日自分にしているんですけど、「今日はどんな素敵な一日にしよう」。朝か晩に問いかけるといいかも知れませんね。
どうもありがとうございました。
バンクーバーのワークショップを主催した主催Body Mind Organic Inc.のハートレー明子さんと共に
ゆったり穏やかなトーンで語る自然体のマツダさん。質問家となる以前はデザイン会社を経営。そのデザイン会社時代に依頼ベースで仕事を受け、自分らしいビジネスができないことにフラストレーションを感じたという。その経験から生まれた「多くの人がその人らしい活動やビジネスができるような世の中にできたら」との願いが活動の原動力だ。
(取材 平野香利)
マツダミヒロさんプロフィール
「魔法の質問」主宰。しつもん財団代表理事。マツダミヒロ事務所株式会社代表。2004年に開始した一日一つの質問を紹介するブログとメールマガジンが人気となり、現在は毎日2万人の購読者を持つ人気ブロガー。著書は20冊以上、アマゾンで総合1位となったものもある。企業や一般、小中学校、高校、幼稚園から依頼を受けて、年間約200回のワークショップを開催。2013年にはユニセフから魔法の質問の絵本版が出版され、全国幼稚園に配られている。今回のバンクーバーワークショップは、バンクーバー在住のミヒロさんファン、ハートレー明子さんの要望から実現となった。現在、出身地の山形と東京を拠点に日本全国と海外で活動中。普段週に1回程度しか会えない8歳の愛娘とは、学校の長期休み中、仕事を休んでしっかり遊ぶと決めている。<魔法の質問>ウェブサイトhttp://www.shitsumon.jp/