コミュニティへの恩返しとしてのボランティア

バンクーバーにあるカナディアン・ブラッド・サービス(CBS)のクリニックで20年以上ボランティアをしているHさん。献血後に休憩するエリアでクッキーや飲み物をサービスしながらドナー達の様子を見守っている。以前より、Hさんの両親の双方の家系が日本赤十字社に縁があったという。それでカナダに移住後コミュニティに貢献できることがないかと考えた時、自然な流れでレッドクロスでのボランティアに従事することになったとのことだ。レッドクロスからCBSに血液事業が移ってからもHさんは引き続きボランティアをしている。
ボランティアに従事するだけでなくHさん自身も献血をしている。現在までの献血回数は185回。「1ユニットで3人分に行きわたるそうなので私が死んだ時、三途の川原で多くの見知らぬ人達が待っていてくれ『どちら様でしたっけ?』と尋ねたら『私はあなたから血を貰った者です』なんて言われる光景を想像しながら、200回を目標に頑張っています」という。また、Hさんの以前の飼い犬も献血に通っていたという。現在飼っている犬たちの血液型はユニバーサルではないため、輸血が緊急に必要になったときのオンコール状態で登録しているとのこと。まだまだ献血をしてくれる犬の数は少ない現状で「より多くの人に興味を持ってもらって、もっと献血をする人や犬が増えてくれるといいですね」とHさんは希望を語った。

 

人間の献血

CBSのコミュニケーション・スペシャリスト、マルセロ・ドミンゲスさんに話を聞いた。2011~2012年度にCBSがBC州とユーコン準州で受け付けた献血の量は13万ユニット(1ユニットは500ml)、カナダ全体では91万弱になるという。献血で採血された血液は、冷蔵保存され42日間の消費期限があるが、血液の需要は常に高く消費期限よりもはるかに早く輸血へと回されるそうだ。献血ができる条件は、17歳から61歳(初めて献血する場合)までの健康な人で体重が50㎏以上あることが条件。1回に採血する血液の量は約500mlで、それに合わせてこのような条件がつけられているそうだ。献血の当日に具合が悪いとか風邪やインフルエンザにかかっている人は治るまで待つ必要がある。

 

献血には全血を採血するものと、血小板や血漿だけを取り出す成分献血とがある。成分献血の場合、献血者の血液を採血したあと機械で血小板や血漿を取り出し赤血球を再び体内に戻すので、全血献血よりも時間がかかる。CBSでは献血前のスクリーニングの際に健康状態をスタッフが確認した上で、成分献血を勧めることもあるそうだ。全血献血をした場合は、56日間あければ次の献血ができ、成分献血の場合はこの待機期間が14日間と短くなる。ただし、妊娠の経験がある人は成分献血をすることはできない。
献血をしたいと考えている人は予約を取ることが勧められる。予約するには1-888-2DONATE(1-888-236-6283)に電話するか、ウェブサイト(www.blood.ca)でも可能。受付を済ませたら問診、血圧測定、血液を少量採取してヘモグロビン濃度や鉄分のレベルを検査する。献血後は休憩室で少なくとも5~10分ほど休むことが勧められる。飲み物やスナックも用意されており、訓練を受けたボランティアがついていてくれるので、もし献血後に具合が悪くなった場合でもすぐに看護師が呼ばれきちんとケアしてもらえるので安心だ。
カナダではO型とA型あわせて、人口の88%を占めているそうだ。どの血液型も常に必要とされているが、特にO型のRH-という血液型はどのタイプの人にも輸血できるそうでいわゆるユニバーサルと呼ばれる。
マルセロさんは「現在カナダでは、1分間に1度の割合で輸血が必要とされていますし、献血された血液には消費期限もあります。カナダの人口の半分は献血をできる条件を備えていると推定されるのですが、実際は4%の人にしか献血をしていただいてません。CBSでは献血者の安全を守ることを第一に心がけており、カナダは世界でももっとも安全な献血ができる国の1つです。自分自身や家族の誰かが輸血が必要となる事態になることがあるかもしれません。献血をしてくれる人が常に求められているのです」と語る。

 

Canadian Blood Services

住所:4750 Oak St., Vancouver
電話:1-888-236-6283

ウェブ:www.blood.ca

 

犬の献血

バンクーバー・アニマル・ブラッド・サービスは、バンクーバー・アニマル・エマージェンシー・クリニック内で犬の献血を受けつけている。献血の担当をするキャス・クラッセン医師に話を聞いた。
犬の血液型は人間のものより種類も多いのだが、人間同様、どのタイプの犬にも輸血できるユニバーサルというものがある。早急に輸血が必要となる時に備えてこのユニバーサルの血液を保管している。献血された血液は赤血球から血漿を分離し、それぞれを2つのパッケージに分けて保存する。つまり1回の献血から最大4匹の犬への輸血が可能になるということだ。血漿は冷凍保存できるが、赤血球は冷蔵で40日間ほどしか保存できない。人間の血液と同様、献血される血が常に必要とされることが分かる。

 

献血ができる犬の条件は、生後1歳以上から8歳までの体重が50lb(約22.5kg)以上の健康な犬で、加工されていない生の食品を食べていないこと、となっている。特に生肉はバクテリアを含んでいる可能性があり、病気や怪我をした犬がこうした血を輸血されると状態の悪化が懸念されるからだ。また、輸血の経験がない、過去に大きな病気をしたことがないといったことも条件に含まれる。

 

犬の献血にはまずスクリーニングがおこなわれる。健康状態だけでなくその犬の性質もチェックされる。攻撃的だったり他人に触られるのを極端に嫌がるようだと献血にもむかないからだ。また、その犬がユニバーサルの血液型ではない場合は、定期的な献血ではなくて必要に応じて献血をすることを勧められることもあるという。
献血の当日はまず犬に鎮静剤を注射してリラックスさせた後、血圧測定、血液のスクリーニングをする。首の横の部分の毛を少し剃ってそこに注射針を入れて献血が開始される。採血そのものはそれほど時間がかからないが、前後のスクリーニングや準備などを合わせると2時間近くかかるという。そのため多くの飼い主は犬をおいてまた戻ってくるのこと。鎮静剤のおかげで献血後もしばらく眠そうにしているが、健康上には何も問題はない。ただし、献血後1週間は激しい運動をしないように指導される。こちらのクリニックでは約3ヶ月あけてから次の献血をお願いしているとのことだ。

 

Vancouver Animal Blood Services

住所:1590 W 4th Ave., Vancouver
メール:This email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it.

 

(取材 大島多紀子)

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