♪.盛り沢山の内容で聴衆を魅了
コンサートは全員起立しての「オー・カナダ」で幕を開けた。ブラスバンド部の顧問である阿部一博先生の指揮のもと、49人の生徒が奏でる音楽が会場いっぱいに溢れる。コンサート前半の半ば頃、ノースバンクーバー在住の作曲家マイケル・コンウェイ・ベーカー氏が加わり、自作の「リメンバランス」という曲をピアノ演奏した。バンクーバー・ユース・オーケストラのメンバーのレイ・ソン・ジン・ハン氏がフレンチホーンで参加、ダンススタジオから2人名のダンサーも参加して情緒豊かな美しい曲を音と踊りで披露した。また、チャイコフスキーの序曲「1812年」をコミカルにアレンジし、鳩時計の音のような効果音を入れたり、指揮をとる阿部先生が水鉄砲を持ち出して撃つ真似をしたりと、楽しい演出で会場を盛り上げた。
後半には、地元、サザランド高校の生徒もオーケストラに参加して2曲演奏。折りしも2週間の春休みの真っ最中ということもあって参加人数は少なめであったが、捜真女学校の生徒ともに息の合った演奏をした。続いて、東京ディズニーランドのエレクトリカルパレードで使われるメインテーマやディズニー映画の曲のメドレーでは、阿部先生はミッキーマウスの格好、生徒たちはディズニーキャラクターのカチューシャをつけての演奏で聴衆を楽しませた。
また、デューク・エリントンのジャズナンバーやジブリアニメのテーマのメドレー、「銀河鉄道999」のテーマ曲ではそれぞれの楽器のソロも披露し喝采を浴びていた。全演奏が終わると会場はスタンディングオベーションで沸き、それに応えてアンコールを2曲演奏した。他にも、日本の伝統的な音楽である雅楽が、オーケストラで美しい旋律となって演奏されたのも興味深かったし、多くの人にとってなじみの深い曲や幅広いタイプの曲で構成されたコンサートは、飽きさせず楽しい内容だった。
♫.音楽を通しての文化交流
捜真女学校は中高一貫校であり、今回中学1年生から高校1年生の生徒が顧問の阿部先生と副顧問の宮田あゆみ先生と共にバンクーバーを訪れた。2010年に続いて今回が2回目の訪問となる。このコンサートに先立って、バンクーバー仏教会で演奏した他、ワシントン州のブレインにある小学校で現地の生徒たちと折り紙などをして遊んだり、演奏も披露した。以前、ブレインにある高校から生徒たちが日本を訪れて捜真女学校とも交流を持つ機会があったので、今回はそのお返しという意味でアメリカ訪問を織り込んだということだ。生徒たちは全員ホームステイを体験。「受け入れる家族の方々もよくしてくれて、すぐにうちとけていったようです。中学1年生の子たちも随分英語を話すようになったようですよ」と阿部先生。また、聴衆の反応については「こちらの人たちは楽しんで聞いてくれている様子をはっきりと表してくれるのが嬉しいですね。それが生徒たちにとっても自信につながるようです」と言う。演奏会だけでなく観光や、地元の学校の生徒との交流、レコーディングスタジオを見学し実際にレコーディングをさせてもらうなど、充実したプログラムについては「こうしたことを経験させるためにも、生徒たちを連れてきているといえますね。違う文化に触れるということはとても素晴らしいことですから」と語る。生徒たちにとっても忘れがたい良い思い出となったに違いない。
(取材 大島多紀子)