「震災の実態を見た、聞いて来た」・・・純なナマの報告には説得力がある
「キズナ強化プロジェクト」は、学校単位での公募によって派遣が決定される。茨城県では3校が決まり、バンクーバーへは竜ヶ崎第一高校が決定。同校内での応募者の中から1年生12名、2年生12名の24名が選抜、派遣された。英語と日本語でプロジェクターを使いながら、学校、日本文化の紹介、そして、被災者の体験や復興状況を一人ひとりがリポートした。
茨城市は東京から45km、竜ヶ崎第一高校はいわゆる進学校だが、スポーツも盛んだ。午前中4時間、午後2時間の授業、弁当持参のランチのこと、掃除の義務があることなど、日本の高校ならではの行事、習慣などを紹介。また、日本文化については、歳時記にちなんだ行事紹介のほか、現代の日本文化、原宿ファッション、人気漫画、ポップカルチャー、AKB48など同世代の関心事には会場からも感嘆の声が上がっていた。
震災については、一人ひとりが東北3県の現場に出向き、仮設住宅や学校などを訪問し、インタビューをした内容をていねいに紹介した。津波の大きさ、速度などを図や身近なことに置き換えながら説明。原子力発電所の事故は人災であることを率直に述べ、これはカナダでもきっと活かせる事例であることを力説していた。非難場所や仮設住宅での不自由な生活体験、肉親を失った人のことなど、胸に迫るスピーチであった。そして、カナダからはもちろん、世界各国からの支援もあり、少しずつだが復興に向かっていることを報告した。こうした話を聞き、日本語学校の内藤邦彦教諭は、「今まで私たちも震災について勉強してきたが、今回の発表で新たな事実も知った。ニュースにはない現場での体験は人生にきっと役立つときがあると思う」と感想を述べていた。
カナダにあった古き良き日本文化に驚いた
創立107年になるバンクーバー日本語学校、日系人会館の全館を見学した生徒たちは、教室の壁に貼られた作品を見たり、図書室での蔵書を見ながら、「あ、なつかしい!読んだことある」とか、「字は日本の子より上手」など口々に感心しきり。
ランチは竜ヶ崎第一高校の生徒と日本語学校の生徒、保護者、関係者が向かい合って座るように設定されていて、互いの関心事の質問に花が咲いていた。頃はよしと、古い日系人社会を知る人として副理事長の水田治司氏がパウエルストリートの日本人街のことや移民してきた日系人の歴史、ここには古い日本の姿が時計が止まったように残っていること、さらに、カナダは多様な国の文化の集合体であることなどを紹介した。
きっと、また会える。
迎えのバスが来ているにもかかわらず、なかなか離れられない。記念撮影やメール交換、友情の絆はしっかりと結ばれ、再会を誓い合っていた。
(取材 笹川守)