着任早々の岡田誠司総領事が出席
満席の会場には、この日着任したばかりの岡田誠司総領事ご夫妻の姿があった。
冒頭で岡田氏が「今朝、東京から着任しました」と挨拶すると、場内から歓迎の拍手が沸き起こった。バンクーバーで最初の文化イベントに出席した岡田氏は、この公演への参加登録者が会場の客席数を超える300人、さらに100人のキャンセル待ちがあったことを述べ、『鉄太鼓』のダグ・マスハラ氏、『ちび太鼓』の本間志のぶ氏ら開催協力者に感謝の言葉を述べた。
和太鼓奏者アート・リー氏
1993年、カリフォルニア州で和太鼓を始め、翌年、鬼太鼓座(おんでこざ)に入団したアート・リー氏は、2001年ソロ奏者として初めて日本政府より芸術ビザを取得。2005年には最も権威ある『東京国際和太鼓コンテスト』にて大太鼓部門最優秀賞を受賞した。
「和太鼓を初めて見たとき、武術や舞踊を取り入れた動きにとても感動しました。ビジュアルの芸術ですね。深い音色も魅力です」と流暢な日本語で穏やかに話す。
トカラとは“遠くから”を意味する造語で、グループは2004年に結成された。異文化を持つメンバーで構成されたトカラは長野県飯田市を拠点に、毎年数回に渡るワールドツアーを決行。演奏活動の傍ら、後進への指導、イベントなどを手がけている。
舞台と観客が一体となったクライマックス
ロビーでは『鉄太鼓』のメンバーらが津波被害者援助のためのTシャツとトカラのDVDを販売し、『ちび太鼓』がオープニングを飾った。
真っ暗な舞台に黒と紫の衣装を着けたトカラのメンバーが登場すると、客席から歓声が沸いた。ツアータイトル『Kazatoshi』は今年、太鼓歴20周年を迎えるアート・リー氏と、来年10周年を迎えるトカラを祝うもので、2年間で世界12か国を回る予定。
驚異的なスピードとパワー、中国武術、舞踊の流れるような動作を取り入れた振り付けに、観客は引き寄せられていく。『秩父屋台囃子』などの伝統曲から、トカラの代表曲『渚物語』『波頭の響き』など全9曲を披露。一曲終わるたびにファンの間から拍手と歓声が沸く。手拍子とともに舞台と観客が一体となって迎えたクライマックスの後は、スタンディングオベーション。威勢の良い『ぶちあわせ太鼓』でアンコールに応えた。
終演後、「すごい」「アメージング」の声が聞かれ、UBC終身名誉教授のジョン・ハウズ氏も「エネルギーがあって、見ていて美しい」と感想を述べた。
(取材 ルイーズ阿久沢)