ドビュッシーとショパン
大学院生用の寮を運営し、国際文化交流やリサーチ発表を行うUBCのセント・ジョンズ・カレッジでは、音楽学部とアクセス&ダイバーシティー課との共催で『Beyond the Screen: Disability and the Arts』を開催する。
障がいを持つ演奏家の教育、コンクールへの影響、大学として出来ることは何かなど、5回に渡るシリーズで講義や議論、ワークショップが行われる。
辻井さんはこの企画の一環としてリサイタルを行うほか、出席者とのディスカッションにも参加予定。
「ドビュッシーとショパンは僕の心に通じるものがあります」と話す辻井さんは、このリサイタルでドビュッシーの『2つのアラベスク』『ベルガマスク組曲』『版画』『喜びの島』、ショパンの『華麗なる大円舞曲』『スケルツォ2番 変ロ短調 作品31』『幻想ポロネーズ変イ長調作品61より』『英雄ポロネーズ』を演奏する。
作曲家としても注目
全盲で生まれた辻井さんは音に対して鋭い感覚を示し、4歳からピアノを始めた。95年、7歳で全日本盲学生音楽コンクールの1位になり、97年にはモスクワ音楽院大ホールの記念コンサートに出演。2009年にアメリカで行われた『第13回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール』で日本人として初の優勝(金メダル)を果たした。
2011年に上野学園大学演奏家コースを卒業後、現在はピアニストとして国際的に演奏活動を行う一方、映画『神様のカルテ』のテーマ曲を皮切りに、ドラマや映画音楽を手がける若手作曲家としても注目を集めている。
優れた聴覚と美しい旋律
「私は彼の持つ、フレーズの繊細なニュアンスや絶妙なタイミングを聞くと、彼の優れた聴覚が最も美しい旋律を常に追求しているからではないかと思っています。個人的には、彼がヴァン•クライバーン国際ピアノコンクールで弾いたリストのハンガリアン•ラプソディー2番の演奏がとてもエキサイティングで、“この曲はこうあるべき!最高!”という印象が忘れられません」とUBC音楽学部博士課程ピアノ専攻の本間ちひろさん。
「ピュアな音色、優れた芸術性と表現力。彼の音楽は非常に美しい。まさに日本のヒーローです」とピアニストでUBC教授のサラ・デイビス・ビュクナー博士も絶賛する。
辻井伸行さんからのメッセージ
「カナダは2011年のエドモントン(オーケストラとの共演)、今年1月のウィニペグ(オーケストラとの共演及びリサイタル)に続いて3度目になります。カナダのお客様は音楽にとても集中していて、楽章の間や、曲の後の余韻が消えるまでじっと耳を傾けてくださるのがわかります。演奏もやりがいがあります。
コンサートのある3月10日の夜は、日本時間では11日の午後になります。あの震災からちょうど2年、不幸にして亡くなられた方、被災地で頑張っている方、国内外から支援の手を差し伸べてくださっている方、そうした方々への思いをこめて演奏したいと思います」
(取材 ルイーズ阿久沢)
公 演 情 報
3月10日、7:30PM 開演
UBC Roy Barnett Recital Hall (6361 Memorial Road、Vancouvr BC)
問い合わせはSt. John Collegeのホームページから.
http://stjohns.ubc.ca/2013/01/tsujii
※チケットは完売だがウエイトリスト受付中