モーグルの全日本チーム選手 バンクーバーで自主練習

リステルバンクーバー・ホテルで、上遠野リステルカナダ社副社長を交えてインタビューに臨んだ４人

上遠野：
それでは期待の若手、四方選手からお願いします。

四方：
得意なエアーで一際目立つことができれば、技術全体を向上させる次のステップに繋げられるかな、と考えています。

上遠野：
他の選手の皆さんから見て、四方選手の印象は？

伊藤：
彼がまだ小学生だった頃から一緒に滑ってきたので、同じ全日本チームとなり嬉しいです。もともと静かなんですよ、彼。一緒にいると、こちらまで落ち着ける空気感がありますね。エアーは本当にすごいなあ、と感心しながら見ています。

上野：
彼はジャンプが得意で、普段は静かだけど、滑りは元気一杯な所もいいですね。

上村：
その昔「上手いねー」と声をかけた少年が、大きく強くなって、こうして日本代表となり、次の世代が育ってきている、というのを見れるのは嬉しいですね。

上遠野：
着実に結果を出している伊藤選手、お願いします。

伊藤：
３姉妹揃ってモーグルで活躍しています。練習もほとんど一緒なので、普通の姉妹以上に強い仲間意識があります。試合で成績を残したいという気持ちは人一倍強いので、本番では100％発揮できるようになってきたかなと思っています。

四方：
伊藤さんは僕と同じ雪国以外の出身で、分かり合える部分が多いです。いつも笑顔で、それがモチベーションと成績アップにつながっていると思います。

上野：
自分の力を把握しベストを尽くすことができ、どんなコースを滑っても、ミスをしない。精神力が強い選手ですね。

上村：
彼女は練習に対してすごく真面目なんです。「今日はこれをやります」と課題を設定してこなしていく。悪かったところも把握し、練習していく。そうやって着実に前に進む姿勢が、本人の成長に繋がっていると思います。

上遠野：
次に、誰にも負けない高い技術を誇る上野選手、お願いします。

上野：
モーグルを始めたのは15歳の時、長野五輪の後です。今回で11シーズン目になり、得意なのはカービングターンです。

四方：
小さい頃にコーチから「上野選手のターンは世界一」と聞いていました。僕は上野さんと10歳年が離れていて、その時すごいなあと思っていた上野さんと、同じチームにいるのが夢のようです。

伊藤：
上野さんと私はチームでは同期ですが、大会の表彰台に上がったのは彼のほうが先でした。技術の上手さが結果につながると、私の中でのモデルとさせてもらっています。

上村：
彼のようにカービングターンがきっちりできている選手は、ワールドカップの中でもそんなにいないと思います。コースの上から下まで、板を横滑りさせずに彼が滑っているのを見ると、「ああ、このコブでもこういうターンができるんだ」と、刺激をもらえます。

上遠野：
最後にチームになくてはならない存在の上村選手、お願いします。

上村：
バンクーバー五輪後、約一年間の休養から選手として復帰して以来、少しずつですが滑りの調子も上がってきている所です。休養中に再確認できたことは、他人と比べてではなく、自分の中でやっぱりモーグルが一番得意なんだな、ということでした。

四方：
上村さんはすでに自分のスタイルも確立していて、楽しみながら競技しているという、僕のはるか先のレベル。絶対ネガティブな発言をしないんです。そういう所から、強さと優しさが出来上がっているのかな、と思います。

伊藤：
上村さんを一言で表現すると、努力する天才。私が同じことをやっても、同じ結果は出せないなって感じます。自分の滑りに自信を持っているというか、揺るがないものをずっと貫いてきているからだと思います。そんな上村さんの影響力は、私だけでなくチーム全体に行き渡っています。

上野：
長い間、同じ長野県の後輩として一緒に滑ってきましたが、チームの中での上村さんは、周囲に気を配れる選手という印象があり、スキー以外でもいろいろ勉強させてもらっています。

上遠野：
バンクーバーの印象と、これからの抱負について

四方：
五輪があったゲレンデで、トップの選手と一緒に練習できてよかったです。北米戦は若手選手も大勢出場する大会で、一番成績を上げにくいと言われていますが、その中で自分が勝っていけるようにしたいです。

伊藤：
サイプレスのコースに立った初日は、五輪の時の自分を見る思いで感慨深いものがありました。再びここに来れたのは本当に良かったと思っています。北米戦は２年ほど完敗しているので、ここを制することができたら、次に繋がるぞという気持ちで、ワールドカップで優勝するのを目標にしていきます。

上野：
実は初めての海外がバンクーバーでした。好きな街で、リラックスした気分で、いい練習しています。海も山も近いし、日本食もあるし。ワールドカップ、世界選手権に向けていい滑りができるようにしていきたいです。

上村：
私がモーグルに出会ったのはウィスラーでした。毎年のようにここに来ていたはずが、バンクーバー五輪を最後に途切れてしまったのは、私の中にあった「ウィスラーでモーグルに出会い、バンクーバーでメダルを取り、引退」というシナリオが３年前に消えてしまったこともあったんでしょうね。全日本の選手として、ここにまた来れたことには何か縁のようなものを感じます。
北米戦の前に、ここで練習するのは初めての試みで、いいところが増える滑りになればいいなと思っています。

上遠野：
来年のソチ五輪を念頭に、バンクーバー新報の読者にメッセージを。

四方：
五輪は多くの人にモーグルを見てもらういい機会なので、是非応援して下さい。

伊藤：
３年前の五輪でこの地で活躍した選手が、その後の４年間でどう成長したかをソチで楽しんでくれればいいな、と願ってます。

上野：
男子モーグルもみんなに感動を与えられる滑りを目指すので、応援して下さい。

上村：
五輪の時に多くの人から応援してもらったのと同じぐらい、今回も励ましの声をいただきました。五輪のことを覚えてもらっていて嬉しいなと思うと同時に、これからもモーグルを応援してもらえたらなと願っています。

上遠野：
東日本大震災、福島第一原発事故の影響で開催できなかったワールドカップが、猪苗代で来月三年ぶりに開催されます。ほぼ毎年猪苗代で行われてきたこの大会は14回目。ワールドカップ成功は、震災や原発事故からの復興を目指す福島の大きな力となります。また日本選手の活躍は、日本の人々に新たな感動と希望を与えることになると思います。皆さんの活躍を期待しています。今日はありがとうございました。

来年のソチ五輪の出場をかけた北米戦が三週間にわたり開催された後，ソチ、猪苗代でのワールドカップ、欧州での世界選手権大会と選手たちの挑戦は続く。それぞれの思いを胸に、世代を超えて絆を深めている日本チーム。頑張れ日本！

カービングターンの技術は世界一と評される上野選手の滑り（写真　矢田部裕）