2019年12月12日 第50号

バンクーバーがこの冬一番の寒さに見舞われた12月1日。グランドにはサッカーボールを追いかける子どもたちの元気な姿があった。その中心に現在北米で活躍する日本人プロサッカー選手たちがいた。

ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市フォーティス・スポーツ&ヘルスで開催された「Sea to Skyサッカークリニック2019」。元MLSバンクーバー・ホワイトキャップス小林大悟選手(現USLバーミンガム・リージョンFC)、NWSLシカゴ・レッドスターズ永里優季選手、MLSトロントFC遠藤翼選手が参加。子どもたちと一緒にシーズン中とは違う楽しい時間を過ごしたようだ。

 

参加した子どもたちと小林、永里、遠藤3選手と一緒に記念撮影

 

「楽しそうな子どもたちの姿を見るのが楽しかった」

 サッカークリニックには男子女子合わせて38人が参加。8歳から13歳までを対象に、前半はグランドでサッカーの基礎練習とプロ3選手を交えて試合形式の実戦練習。休憩をはさんで後半は質疑応答が行われた。

 試合は年齢別に分かれて対戦。各チームに永里選手か遠藤選手が加わり、小林選手が審判を務めた。子どもたちはゴールを決めると永里選手や遠藤選手とハイタッチ。今にも雪が降りだしそうな寒空の下でボールを追いかける子どもたちの真剣な表情と選手たちの笑顔が弾けた。

 「みんな本気でやってくれて楽しかったです」と小林選手。永里選手は「自分も楽しかったし、楽しそうにしているみんなを見ているのも楽しかった」と笑顔を見せた。遠藤選手も同様に、3選手とも子どもたちがサッカーを楽しんでいることを喜んだ。

 小林選手はバンクーバーでは2回目。今回は、アメリカのロサンゼルスやラスベガスで一緒にやっている遠藤選手と、元なでしこジャパンの永里選手を誘っての開催。イベントをオーガナイズし、質疑応答で司会も務めた福世えりなさんは、今回の成功を機にこれからも続けていきたいと語った。

サッカーがうまくなるための秘訣はサッカーノート

 質疑応答では選手たちへ、子どもたちや保護者からさまざまな質問が飛び出した。日本を飛び出して海外でサッカーをする意義や体調管理、日本を離れて得られたものなど、海外でサッカーをやっている日本人選手たちだからこそ聞きたいことがたくさんある。

 でもやっぱり気になるのは、「どうしたらサッカーがうまくなるのか?」だ。「どうしたらプロになれますか?」の質問に小林選手は誰でもできるヒントをくれた。

 それが「サッカーノート」。自分のプレーについて気づいたことを書きとめるのだという。「ノートをつけたらプロになれるのか、と思うでしょ?」と小林選手。でもサッカーノートには大事なことがいっぱい詰まっていると語りかける。試合の後、自分の課題を自分の言葉で書く。そして自分の課題と向き合う。これを継続する。これが「プロになるためのシンプルだけど基本」とアドバイスした。

 永里選手も、遠藤選手も、はやりサッカーノートをずっと以前からつけているのだと明かした。サッカーのこと、成功したプレー、失敗したプレー、試合の結果、反省などなど、サッカーに限らず日常で感じたことなども書き綴っていると教えてくれた。

大好きな町バンクーバーで恩返しができれば

 3人3様にバンクーバーとは関わりがある。小林選手は2013年にホワイトキャップス選手として1年間プレーした。永里選手は2015年FIFA女子W杯で日本代表としてカナダを転戦、バンクーバーは決勝の舞台だった。遠藤選手はトロントFCとしてバンクーバーで戦っている。

 永里選手はバンクーバーには「ほろ苦い思い出もありますけど」と笑って、「こういう機会をいただいた縁もあると思うので、引き続き機会があればやっていきたい」と女子プレーヤーにとってうれしい言葉をくれた。

 遠藤選手は質疑応答の後に子どもたちに囲まれていた。トロントFCは過去4年で3度MLSカップ決勝に進み、2017年は優勝、今季は惜しくもシアトル・サウンダーズFCに敗れた。その決勝の舞台に立っていた遠藤選手。カナダでサッカーをする日系の子どもたちのあこがれの的だ。遠藤選手はカナダのサッカー人気と日本でのMLS人気を上げることに貢献できればうれしいし、「バンクーバーに来た時には応援してほしいです」と語った。

 そしてバンクーバーは「2013年にプレーさせてもらって、大好きな町」と語る小林選手。サッカーを通して恩返しするために「今後もこういうイベントができればいいなと思っています」と笑った。

 北米でプロサッカー選手として活躍する3選手。日本人プレーヤーであることは常に意識しているという。男子も女子もプロリーグがある北米サッカーで日本人選手としてピッチの内外で貢献できればという熱い思いを胸に秘めていた。

(取材 三島直美 / 写真 斉藤光一)

 

左から、遠藤選手、永里選手、小林選手

 

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