2019年11月28日 第48号

11月16日、BCIT Student Athletic Centre (Burnaby Campus)で、第20回佐藤カップ空手道大会が開催された。20周年という節目を迎える今回の参加者数は約350名。日頃の練習の成果を発揮するため、カナダはもちろん、アメリカ、日本、ネパール、インドなどから選手たちが集結した。午前に武器を用いた古武道と形、午後に組手が行われた。20周年記念の今大会は来賓も豪華であった。令和元年度外務大臣表彰を受賞された出村文男さんと、リッチモンドの少林寺で少林拳を教えるVen. Shi Yanhongさんが招待された。出村さんは米国空手界の先駆者的存在といえる人物。現在は、カリフォルニアで身体障害者の方々に空手を教えている。Shiさんは教え子と共に少林拳の演武を披露。迫力のあるパフォーマンスで、会場を沸かせた。

 

各試合は6つのコートで行われた

 

 “Sato Sensei” (佐藤先生)佐藤会カナダの代表である佐藤義輝さんのことを、教え子たちはこう呼ぶ。常日頃から「勝つことが全てではない」と、佐藤さんは生徒たちに教えている。“Coach”ではなく“Sensei”という呼び名は、その教えを表しているようだ。空手が世界的に周知されるようになってから、その競技人口は増えた。 競技者も男性だけでなく、女性、そして子供へと広がっていった。そういった時代の流れの中で現れるようになったのが、“Coach”である。つまり、勝利するというゴールにこだわり、指導する人だ。空手を競技として捉えるならそれはもちろん良いことであるが、勝ち負けにだけ固執してしまう指導になりがちである。その一方で佐藤さんは、礼儀や精神面に重きを置いて日々稽古をつけている。空手を通して子供たちが自立心を養い、将来社会でリーダーを担うような人間になってほしいと願うからだ。すなわち、精神的にタフで、周りから信頼、尊敬されるような強い人である。そんな佐藤さんの思いもあってか、実際、躾や教育のために子供に空手を習わせたがる親が増えたという。また、不登校児が空手を通じて精神力を鍛え、社会に復帰していくという例もあるそうだ。

 「競技なので勝ち負けが付くのは避けられない。だからこそ、勝った後の振る舞いが重要。勝ったからといって、威張りおごった態度を取るのは良くない。空手を通して自分に自信がついただけでなく、謙虚でいることの大切さを学ぶことができた」と、大会に来ていた佐藤会の生徒の一人が語ってくれた。日本で教師間による「いじめ」が報道されたことは、記憶に新しい。そのショックで不登校になった児童もいるそうだ。学校や教師と直接関わる生徒たちにとっては、信頼を落とす裏切り行為であったとも取れるだろう。教育の在り方が問われている中、空手がその一端を担い、子供たちの健全な精神を育むことに期待したい。

(取材 Koki Mizuta)

 

左より、佐藤派糸東流国際連合事務局 Rick Whiteさん、佐藤会カナダ代表 佐藤義輝さん、来賓 出村文男さん、少林拳演武・指導者 Ven. Shi Yanhongさん、大会ディレクター Andreas Kuntzeさん

 

行儀よく出番を待つ子供たち

 

繰り広げられる熱い戦い

 

試合後、お互いを称え合う選手

 

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