2019年11月28日 第48号

11月17日、薄っすらと雪化粧が始まったウィスラーで、ベアフットビストロ(リステルホスピタリティーグループ)主催による第9回牡蠣の早あけ世界大会が開催されました。

 

日本代表の栗原奏成さん(左)と優勝者のマイク・オズボーンさん(右)(写真提供 YUSHiiN)

 

 これから本格的なスキーシーズンを迎えるウィスラーの束の間の休息期間を盛り上げようと、10日間に渡り行われるワインと食の祭典「コーノコピア」最終日の目玉イベント。今年は例年に増して約千人もの来場者が訪れ、BC産の新鮮な牡蠣、24種のワイン、3種類のブリューワリー、そしてベアフットビストロによる創作料理と、盛り沢山の食を堪能しました。牡蠣の次に目玉となっているカナディアンカクテル・ブラッディシーザーバトルはウォッカ、ジン、ラム、日本酒などをベースにした10種類の創作ブラッディシーザーを試飲し、お気に入りのカクテルに投票する楽しい参加型イベントで年々人気が高まっています。

 牡蠣の提供者は、バンクーバー北西の沖合にあるリード島で牡蠣養殖を12年間家族で営むソーミルベイ社。美味しさの秘密はまず第一に「作り手」にあると言う社長のスティーブン・ポーコックさん自慢の牡蠣は、サステイナビリティーを意識しながら氷河を源とするミネラル豊富な冷たい海水で育ったもの。今大会の為に全てチャリティーで、1万5千個の牡蠣が現地から直送されました。

 そして、何といってもイベントを最大に盛り上げるのは世界から招待された20名のシャッカー(牡蠣あけ師)が繰り広げる壮絶な牡蠣早あけバトル! 提供された3種類の牡蠣をそれぞれ10個、合計30個剥いて競い合います。単に早さだけでなく、剥いたオイスターの外見、殻の破片や砂などの混入物が入っていないか、殻や身の状態と食べやすさ、など細かく審査されます。今年は、カナダ、日本、アメリカ、デンマーク、アイルランド、ドミニカ共和国から競技者が集結。日本代表は昨年に続き、10年のシャッカー歴を持つ栗原奏成さんが参戦しました。

 牡蠣の早あけ大会は世界各地で行われていますが、BC産の牡蠣の認知度は年々向上していて、栗原さんは毎年このウィスラー大会を目標に掲げているそうです。少しでも早く牡蠣を剥く為にと、栗原さんと製品開発グループKAMADOが共同開発したプロフェッショナル用オイスターナイフ、コバリオンを持参。コバリオンとは、東北大学教授によって人工関節向けに開発された特許素材で、ステンレスの1.5倍の強度を持ち、両端に殻用と貝柱用の刃を設置したオリジナルデザインで、今後は海外展開も視野に入れているそう。

 そんな熱い姿勢で挑んだ栗原さんですが、惜しくも決勝進出ならず。決勝戦の舞台に上がったファイナリスト4名は、なんと全員カナダ人という展開になりました。決勝は予選に増して緊迫した雰囲気の中、お互いの健闘を祈るかのように拳を合わせて皆配置につきます。最後の勝負のスタートが切られると、殻や牡蠣のしぶきがステージ前に飛び散りながら、シャッカー達は自分の手元一点を見つめ牡蠣を次々に剥いていきます。

 MCの熱烈な解説、DJの音楽と来場客の喝采で会場は白熱状態になり、まるで何かのスポーツ観戦をしているかのよう。栄光の1位に輝いたバンクーバーのロドニーズ・オイスターハウスのマイク・オズボーンさんは、今年既に2つのカナダ大会で優勝している実力者。毎日仕事で900〜1200個の牡蠣を剥いているお陰だと、賞金5千ドルと銀色に輝くトロフィーを手に満面の笑みを浮かべて喜びを語っていました。

 また、リステルホスピタリティー副社長の上遠野和彦氏は、「BC州産の生牡蠣の美味しさを広めたい、スキーシーズン以外でも楽しめるウィスラーの新しい魅力を発信したいという思いでスタートしたこのイベントも、今年で9年目となりました。こだわりを持って牡蠣づくりをされていて、このイベントの第一回目から生牡蠣を提供いただいているソーミルベイ社には心から敬意を表すと共に、ご協賛頂いたBC州のワイナリーや、ご参加くださっている地元の皆様のご支援に厚く感謝申し上げます。いよいよ10周年を迎える来年は、皆様のご期待に応えられますように企画していきます」と、早くも来年に向けて熱を入れています。

 食べて、飲んで、踊って、静かな晩秋のウィスラーの夜を盛大に盛り上げる今年の牡蠣の早あけ世界大会の収益金3万4200ドルは、ウィスラー・ブラッコム基金へと寄付され、ウィスラーヘルスケアセンターの改善に充てられる予定です。来年10周年を迎えるこの大会、次はどんな壮絶な牡蠣バトルが繰り広げられるのか、華やかな食の祭典と共に楽しんでみてはいかがでしょうか。

(記事提供 MINA)

 

大会会場の様子(写真提供 Joern Rohde)

 

10種類の創作ブラッディシーザー (写真提供 Joern Rohde)

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。