2019年9月5日 第36号

今年も第6回レガシーベースボール大会開催で新朝日チームのシーズンが幕を開けた。戦前のバンクーバーに存在した日系野球チーム「朝日」に敬意を表して毎年9月の第1月曜日にバンクーバー市ナナイモパークで開催されるレガシーゲーム。今年は9月2日、まだわずかに残る夏の日差しが降り注ぐバンクーバーで快音と歓声がグラウンドに響いた。

 

レガシーゲームに参加した選手やコーチたち。9月2日バンクーバー市ナナイモパーク

 

レガシーゲーム2019は遠征混合チームで対決

 レガシーゲーム2019はエミコ・エンドウ元会長の始球式で始まった。今年3月に日本遠征に参加した選手たちを中心に、過去に遠征に参加した選手たちと混合でチームを作り、Asahiのロゴが入った白地のユニフォームを着たチームと黒地ユニフォームチームに分かれて戦った。

 試合は、今年の遠征に参加した選手が多かった黒チームが4−1で勝利。日本遠征の余韻をそのままに半年でさらに成長した選手たちが躍動した。

 アサヒ・ベースボール・アソシエーションのジョン・ウォン会長は「こうして野球ができることを感謝したい」とあいさつした。

 アソシエーション副会長で遠征チームを率いた福村十三郎監督は、レガシーゲームが行われるこの日が実は特別な日だったことが分かったと語った。戦前の朝日チームが最後に戦ったのが1941年9月第1月曜日レーバーデーだったという。偶然とはいえ、「何か不思議なものを感じる」と縁に感謝した。

 今年の新朝日には約130人が登録。この日は年齢別チームによる親善試合も行われ、グラウンドでは “Asahi”のロゴ入りユニフォームを着た選手たちが一日中白球を追いかけた。

 

日本遠征で学んだ野球への姿勢と日本文化

 この日プレーした選手たちの多くが今年3月の日本遠征に参加した。横浜、彦根で親善試合をしたほか、さまざまな文化イベントも経験した。

 その一人ワイリー・ウォーターズ選手は曾祖父が戦前の朝日軍で活躍した土井健一選手で、今回の遠征に特別なものを感じたという。彦根ではやはり朝日軍の子孫で野球をしている選手と対戦するという歴史的な機会があり、改めて朝日との関係を実感したと語った。彦根では「すごく歓迎してもらいました」と笑った。

 チームは、野球以外でも東京ドームでMLB鈴木一朗選手が出場した試合や甲子園で高校野球を観戦したり、川崎では現在読売ジャイアンツで活躍するバンクーバー出身スコット・マシソン選手と話をするなどした。

 マシソン選手からは、日本のプロ野球で野球に対する姿勢と努力、そして敬意を学んだとアドバイスを受けたという。これは朝日の信念そのものと福村監督。日本で学んだ野球文化をバンクーバーで選手たち自身が伝授していってくれるとうれしいと語った。

 2019年遠征では残念ながら負け越したが、次回2021年遠征に向けて2020年春から始動するという。チーム作りだけでなく、資金集めなど、準備に時間がかかるため「1年前から準備して次回の遠征に備えたいと今から考えています」と語った。

 選手たちの活躍やアソシエーションの活動はホームページ、フェイスブックに掲載されている。

 

新朝日チーム
 2014年のレガシーゲームをきっかけに創設された野球チーム。最年少は7歳。性別、国籍を問わず加入できる。以降2年に一度日本遠征を実施。13〜16歳のメンバーで構成されたチームが日本で野球を通じた交流を図っている。

バンクーバー朝日軍
 戦前1914年から1941年までバンクーバーに存在した日系人野球チーム。頭脳とフェアプレーの精神は差別時代のバンクーバーで日系以外のファンも魅了した。1941年12月真珠湾攻撃を機にカナダ政府の日系人強制移動政策のためチームは解散。二度と復活することはなかったが、2003年カナダ野球殿堂入りを果たした。2005年BCスポーツ殿堂入り。今では伝説のチームとして語り継がれている。
HP: https://www.asahibaseball.com/
Facebook: https://www.facebook.com/asahi.baseball.vancouver/

(取材 三島直美)

 

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これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。