2019年5月2日 第18号

スティーブストン仏教会で4月21日、釈迦の誕生を祝う花祭り法要が執り行われ、若い人たちによるパフォーマンスが祝いの場を盛り上げた。

 

お経を読む生田真見開教使(写真中央)と開教使補の皆さん

 

 花祭りは、4月8日と伝えられる釈迦の誕生日を祝う行事。灌仏会(かんぶつえ)とも呼ばれ、花を供え、小さな釈迦の像に甘茶をかける儀式を行う。それは釈迦の誕生時、天に龍が現れて甘い香りの雨を注いだという伝説に由来している。

 

ゲストスピーカーが「本願」を解説

 この日、スティーブストン仏教会のお堂には約50名が集い、住職の生田真見開教使が法要を日英両語で進行。開教使補4人も加わり、5人が立ち姿勢でお経を読み上げながら、時折り紙片を手離していった。ひらひらと舞い落ちる紙片は花びらを模した儀式用のものだ。

 米国カリフォルニア州のバークレー仏教会から迎えたゲスト、桑原浄信開教使が法話を担当し、浄土真宗本願寺派の教育機関である中央仏教学院学長が学生へ語った「偉くなって卒業するのではなく、自分の愚かさを見つけて卒業してください」の言葉を引用し「己を知る」ことの重要さを解説。煩悩にまみれた人間を決して見捨てることなく包み込む阿弥陀如来に対して、深い感謝の出てくる生き方を説いた。

 

音楽で楽しく華やかに

 花祭り後半で登場したのは仏教会の日曜学校に参加する子どもたち。童謡の歌唱とお遊戯で楽しく会を演出した。そしてゴージャスな民族衣装で登場したのが19歳のクルーシェン阿久沢成人(なるひと)さん。カザフスタンの二弦の琵琶を演奏しながら、シベリアの春の歌をモンゴル独特のスロートシンギング(ホーミー)という歌唱法で聞かせてくれた。それは低いうなり声と口笛のような音を同時に放つもの。しかもそれぞれが違う音階を出しており、実際に聞くと不思議な思いでいっぱいになる。「説明するのは難しいのですが、喉と口とを別々に使って出す感じです。ユーチューブの映像を手本に歌唱法や琵琶の奏法を習得し、衣装もインターネットを通じて自分で購入しました」(成人さん)。普段聞くことのできない民族芸能を堂々と披露した姿に、参加者から大きな賛辞の拍手が送られた。次に17歳の庄司蛍乃佳(ほのか)さんがハープの演奏を行うと、夢のような世界が広がった。一昨年、蛍乃佳さんのハープのメキシコ大会出場にあたり、経費支援のためのチャリティーコンサートが仏教会の「日本語プレイグループ宝島」主催で行われ、その後蛍乃佳さんは順調に結果を出し、今年2月にニューヨークカーネギーホールでのコンサートに出演、9月からのマギル大学音楽科進学も決まった。報告を聞いた仏教会の人々は喜び、演奏後、次々と蛍乃佳さんに声をかけていた。こうして釈迦の誕生祝いの行事は、若い命の花開く場として明るいエネルギーを放っていた。

(取材 平野香利)

 

子どもたちも真剣に釈迦像に甘茶を注いだ

 

日曜学校の子どもたちが元気いっぱい童謡を披露

 

スロートシンギング(ホーミー)を交えながらモンゴルの歌を琵琶の演奏とともに披露した、なるひと阿久沢クルーシェンさん。昨年の『祭りスタータレントサーチ(バンクーバー新報提供)』では約60組の応募の中からファイナルに選出されて演奏した。

 

「もっと練習を積んで、世界の人に自分の伝えたい音楽を奏でられるようになりたい」と庄司蛍乃佳さん

 

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