2019年4月4日 第14号
日加ヘルスケア協会(日加ヘルス)による座談会が、3月28日、バンクーバー市にあるMOSAICのコミュニティースペースで開かれた。今回は、ICBCのロード・セイフティー・コーディネーターのトム・ウェブスターさんが、シニアが運転する際に気をつけたいこと、免許更新や路上試験などについて説明、約20人の参加者が熱心に話を聞いた。(メディアスポンサー‥バンクーバー新報)
今年度の座談会は、バンクーバーとバーナビーの境にオフィスを持つMOSAICにて行われるとのこと
瞑想で心を鎮める
座談会はいつものように、瞑想からスタート。日加ヘルスの理事、宮地昭彦さんがリードして、ゆっくりと呼吸をしながら1から10まで心の中で数えるという瞑想を行った。この数息法(すそくほう)は、数を数えることに集中することで雑念が起きにくいというものだ。
シニアの運転で気をつけたいこと
トム・ウェブスターさんによるセミナーでは、日加ヘルスの理事であるアンダーソン佐久間雅子さんが通訳を務めた。最近は道路の交通量も増えてきていたり、複雑な交通パターンがある場所や、歩行者や自転車も多く通る道などもあるなど、誰であっても運転時には気を遣うことが多いものだ。特にシニアの場合、視野が狭まったり聴力が低くなることで周囲へ注意を払うことが難しくなったり、判断力や反射神経の低下などが考えられるので、これまで以上に慎重に運転することが大切だ。まずは自分の運転能力について冷静に判断し、状況によっては運転する頻度を減らしたり、夜間の運転は控えるようにするなど調整したい。
80歳以上のドライバーは2年ごとに、医師が作成するメディカルレポート(健康診断書)を提出する必要がある。それによって、さらなる身体検査を要請されたり、ICBCによるEnhanced Road Assessment(ERA)という路上試験を受けるように言われることもある。ERAでは、最初に20分運転した後、試験官が問題点や注意点を指摘、再び20分の路上試験をおこなって、それらの点が改善されているかどうかを見る。ERAを受ける準備として、ICBCのドライビングガイドに目を通しておいたり、運転練習をしておきたい。運転歴が長くなると運転のクセというものが誰しもついてくるものなので、試験前には少なくとも1回くらいはドライビングインストラクターにレッスンをお願いするのも良い。なお、ERAは無料で受けられる。この路上試験で査定されるのは、ハンドル操作、スピード制御、周囲の観察、4ウェイストップなどでの優先順位の判断、車間距離など。ERAの結果はRoad Safety BCに送られ、運転可能、条件付きで可能、要再テスト、運転不可といった結果が書面で送られてくる。
車に代わる移動手段
車の運転を止めようと考えているなら、それに代わる交通手段を事前に探っておきたい。公共交通機関、タクシー、徒歩、スクーターを利用する、またはボランティアドライバーを派遣する団体に依頼するなど。買い物に関しては、多くの店で宅配サービスがあるので、利用するのもいいだろう。運転を止めることにした場合、運転免許証に代わる身分証明書、BCIDを申請しよう。
よく街中でも見かける電動車イスは、免許証や車両登録、保険の必要がない。歩道、遊歩道、横断歩道など人が歩くことのできる所で使用可能だが、車道を走ることは禁じられている。電動自転車はモーターのついた2輪または3輪の自転車で、やはり免許証、登録、保険は必要ないが16歳以上でなくては使用できない。ヘルメットをかぶることが義務付けられており、基本的に車道を走らなくてはならない。
歩行者を巻き込む事故は、気候が変わり日が短くなってくる秋と冬に増加する。暗い夜道を歩く際には、黒っぽい服装ではなく目立つ明るい色の服を着用したり、レフレクターというライトを受けて反射するものを付けておくことが奨励される。また、歩行者を巻き込む事故の69%は交差点で発生している。横断歩道の信号が青であっても、ショルダーチェック(肩越しに振り返って後方を確認)をするなど、周囲に注意を払いながら渡るようにしたい。同様に、運転をする際にも、右折や左折時に車だけでなく歩行者にも注意するようにしよう。
シニアには運転歴も長い優良ドライバーも多いだろう。しかし加齢による身体能力の衰えは誰にでも訪れるものだ。そんな変化にも柔軟に対応しつつ上手に車とつきあっていくことが大切だろう。
(取材 大島多紀子)
講師を務めたトム・ウェブスターさん。参加者からの質問にも丁寧に答えていた