2019年4月4日 第14号

4月7日から13日まで若者のための映画祭『Reel to Reel、R2R』がバンクーバーで開催される。今回日本からは『まく子』という映画が参加する。映画は毎日つまらなくて大人になりたくない少年と、なんでも撒き散らすことが好きな不思議な少女との出会い、せつない初恋、家族との交流などを描く。現代の若者に伝わるものがあるこの映画を手がけた鶴岡監督に、映画祭に先駆けて話を聞いた。

 

まく子 2019 ©日活

 

 この映画を観ていてとても印象に残ったのは、綺麗でなおかつ素朴な映像です。監督が特にこだわって撮ったシーンはありますか?

 映画の中盤、「常盤城」という城跡で、主人公サトシがコズエに心情を吐露し、コズエが「どうして撒くのが楽しいか分かった」というシーンは、私にとっても映画にとっても重要なシーンだったので、役者とも丁寧に芝居を作り、大事に撮りました。

 通常のアニメでなく、砂のアートが何度か出てきたのがオリジナルな感じがしました。アートは監督のアイディアですか?

 砂絵アニメーションを映画に取り入れようと思ったのは、もともと私自身が、今作で砂絵アニメを手がけたアニメーターの佐藤美代さんのつくる砂絵アニメが大好きだったからです。佐藤さんに参加してもらえて、作品の強度が増したと感じています。

 主人公が「大人になりたくない」理由に、自分の周りに、インスパイアされる良い大人がいないと話していました。これは原作にありましたか、それとも監督の脚本からきた言葉ですか?

 これは原作にも書かれているセリフです。原作者の西加奈子さんが、現代の子どもたちに対して抱いている思いが、このセリフに反映されています。

 『小さな永遠を大きな永遠に変えないと…』『小さな永遠はずっと僕の中にある』という言葉からテーマは『初恋』だと思うのですが、映画のタイトル『まく子』の意味とテーマとの接点を教えてください。

 タイトルの『まく子』は、撒く子ども、撒くのが大好きなコズエを指しています。コズエはいろんなものを撒くことに夢中になりますが、その理由として「落ちていくからキレイ」だと言います。つまり彼女は「永遠ではないものが美しい」と言っています。生まれたり、死んだり、出会ったり、別れたりというこの映画のテーマが、この「撒く」というアクションに集約されているのです。 

 これから映画を観るバンクーバーの人々にメッセージを一言お願いします。

 バンクーバーで上映していただけて本当にうれしいです。この映画は、少年と少女の出会いと交流を通じ、愛することや信じることという、普遍的だけれども現代社会で疎かにされがちな大切なことを伝えてくれると思います。楽しんでご覧いただけるとうれしいです。   映画はVanCity にて4月12日(金)12PMと4月13日(土)1:45 PMに上映されるのでお見逃しなく。

(取材 Jenna Park) 

 

撮影時の鶴岡監督 2019©日活

 

 

父親役の草彅剛(右)2019 ©日活

 

 

若手俳優の新音(にのん)2019 ©日活

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。