2019年2月21日 第8号
国内の優れた鉄道旅行の企画商品を表彰する2018度の「鉄旅(てつたび)オブザイヤー」の授賞式が鉄道博物館(さいたま市)で2月6日に開かれ、震災や豪雨の被害を受けた地域を訪れて復興を応援するツアーが上位にそろい踏みした。11年7月の福島・新潟豪雨で一部区間が不通となっているJR東日本只見線で、トロッコ列車での結婚式に参列して盛り上げる旅行商品がグランプリ、東日本大震災の大きな被害を受けた東北地方で観光列車から復興への応援に感謝する花火を観賞するツアーが準グランプリに選ばれた。
鉄道博物館に展示された新幹線車両の前に立つ「鉄旅オブザイヤー」受賞者ら=2月6日午後、さいたま市
一般消費者から募るベストアマチュア賞には、熊本地震で被災した熊本県を訪れて一部区間の不通が続く南阿蘇鉄道のトロッコ列車に乗り、復興を応援する駿台観光&外語ビジネス専門学校(大阪府豊中市)の芝谷沙那さん(20歳)の企画を選んだ。
賞は鉄旅オブザイヤー実行委員会が主催し、JR旅客6社や日本民営鉄道協会、日本旅行業協会などが後援しており、18年度で8回目。鉄道に詳しいホリプロの南田裕介マネージャーや、元共同通信社ニューヨーク特派員の大塚圭一郎・共同通信社福岡支社編集部次長ら計13人・団体の外部審査員が最終選考した。
グランプリは福島市などを貸し切りバスで出発し、JR東日本のトロッコ列車「びゅうコースター風っこ」で結婚式を挙げるカップルを祝福する読売旅行などが企画した日帰りツアー。只見線は豪雨で橋桁が流されるなど大きな被害を受けて会津川口(福島県金山町)ー只見(同県只見町)の約28キロが不通になっており、1139人の参加者を送り込んで観光を盛り上げたのが評価された。
準グランプリは、東京から東北新幹線で往復して東北地方を訪れるJTBメディアリテーリングの商品。JR東日本八戸線で観光列車「リゾートあすなろ」の貸し切り列車に乗り、岩手県洋野町で車窓から花火を楽しんだ。また、震災で大きな被害を受けた岩手県の第三セクター、三陸鉄道のレトロ車両に乗った。
JRグループと自治体が手掛ける大型観光企画「デスティネーションキャンペーン(DC)」開催地を訪れるツアーを対象にしたDC賞には、西日本豪雨の被害が出た島根、鳥取両県を山陰DC開催中の昨年9月に訪れたクラブツーリズムの企画が選ばれた。JR西日本の新型観光列車「あめつち」や、伯備線の岡山と出雲市(島根県出雲市)を結ぶ特急「やくも」が最後の牙城となった国鉄時代製造の車両381系といった多種多様な列車を満喫できる内容で、授賞式では大塚審査員の「良質なツアーを催行することで、中国地方の西日本豪雨からの回復を後押しした社会的意義も絶大です」というコメントが紹介された。
審査員特別賞は、JR北海道の特急用ディーゼル車両キハ183の初期型車両を改造した「旭山動物園号」を、昨年3月の引退間近の時期に貸し切り運行したクラブツーリズムのツアー。受賞経験がない旅行会社を対象としたルーキー賞には、日光夏の花火に合わせて栃木県を訪問し、東武鉄道の蒸気機関車(SL)列車「SL大樹」に乗車する東武トップツアーズの商品が選出された。
鉄旅オブザイヤーは東日本大震災で落ち込んだ観光を盛り上げようと11年度から毎年実施されており、16年度にベストアマチュア賞が加わった。
(記事提供 共同通信社福岡支社編集部次長・大塚圭一郎さん)