2018年12月20日 第51号

12月9日、企友会主催の第16回日系ビジネスアワードとクリスマスパーティーが、バンクーバー市のコースト・コール・ハーバー・ホテルで開催された。羽鳥隆在バンクーバー日本国総領事夫妻や石川征幸領事をはじめとする、約80人が出席、今年のアワード受賞者を祝うと共に、出席者同士の活発な交流を楽しんだ。

 

企友会副会長の谷口明夫さん

 

日系ビジネスアワードについて

 今回、司会進行を務めたのは、日本でアナウンサーとして活躍している田中久美子さん。開会に際し企友会会長の澤田泰代さんが挨拶し、2018年度の企友会主催のイベントについて総括した。特に2017年から始まった会員限定イベント「バンクーバー寺子屋(通称ばんてら)」は2年目となり、さらに充実した内容となったと話した。今年は「BOLDな日系社会を作ろう」というテーマのもと5回開催、それぞれの参加者が自分ができることを考え発表するなど、活発な意見交換が行われたという。

 日系ビジネスアワードの目的は、バンクーバー地区における日系ビジネス関係者に励みと模範となっている人を紹介すること、功績があった人をねぎらうこと、このアワードをきっかけにして日系ビジネス全体のより一層の発展を願うというものだ。受賞者の選定には企友会現会長と理事2人、過去の会長経験者2人の計5人と、バンクーバー新報社の津田佐江子社主がオブザーバーとして加わり、公平な観点から審査をしている。

 今年は以下の人たちに日系ビジネスアワードが贈られた。

 

企友会日系アワード大賞 田村徳樹さん

 会の内外を問わず、BC州内における事業で大きな功績を残し、日系社会に貢献している人に贈られる。昨年同賞を受賞した白木正孝さんがプレゼンターを務めた。

 Japan Consulting Corporation/Japadog社長の田村さんは、青山学院大学経済学部卒業後、いったん就職するも半年で退職。独立起業を試みるもうまくいかなかった。その後リクルート社に入社、約3年間営業職を勤める。営業の仕事は楽しかったが、30歳を目前にし、人生で一番ワクワクすることをやろうと決意、2005年にワーキングホリデーでバンクーバーに妻とやってきた。英語が分からない、知り合いがいないという中でたくさんの人からサポートを得て、カナダに来て3カ月後にジャパドッグの屋台を立ち上げることができた。2009年に屋台の2号店をオープン、2010年には3号店と、初のレストランをロブソンストリートにオープンした。2018年現在バンクーバー近郊でレストラン2店舗、屋台10店舗、アメリカ・カリフォルニア州1店舗の全13店を経営している。1人でも多くの人たちにホットドッグを通して夢と幸せ、ワクワクを届けたいというジャパドッグのミッションの実現のために頑張っているという。2009年には企友会ビジネスアワード特別賞を受賞している。

 田村さんはスピーチで、今回の受賞は自分一人の力ではできなかったことだと述べた。そして「本当にたくさんの方から、『応援しているよ』といった声をたくさんいただきました。本当にありがたかったです。いつか必ずバンクーバーを代表する会社にしていこうと何度も心に誓いました」と語った。当初、妻と2人で始めた事業が今や約150人のスタッフを持つ会社に成長。みんなと一緒に大企業に成長し、北米を代表する会社にしていきたい、もっと世界中の人々に夢を与えられるような会社にしていきたいと意欲を語った。

 

企友会新人賞 荒木大輔さん

 企友会会員の中から目覚ましい活躍をしている人に贈られる。新たにビジネスを立ち上げたり、新規事業を運営するなど創意工夫・企画等を含めて選考される。プレゼンターは昨年の受賞者である繁野充弘さんと松本真子さん。

 ARA Professional Travel&Support代表取締役の荒木さんは、専修大学法学部卒業後、1994年にワーキングホリデーで来加。1996年、メープル・ファン・ツアーズ・バンフ支店の日本語ガイドとなる。1999年に同社名古屋支店へ異動、中京・北陸地区の旅行代理店とのコネクションを作った。2008年にバンクーバー本社へ異動、セクションマネージャーとして勤務。2012年、カナダ旅行オリジナルツアーを専門とするARA Professional Travel&Supportを設立。現在、個人旅行のお客様を中心に、大手ではできないユニークなツアーを次々に展開している。長年勤めた旅行会社から独立後、こつこつと着実にビジネスを大きくし、コミュニティーからも信頼を得ていることから今回の新人賞受賞となった。

 受賞スピーチで荒木さんは、カナダに来た当初、まさか自分が起業することになるとは思ってもいなかったと語った。そして、20数年にわたる旅行業界での経験を積み、この度、企友会ビジネスアワードを受賞するに至ったのは、周りの人たちの支えによるものが大きいと話した。特に、メープル・ファン・ツアーズのビル別所社長の名前を挙げて「この方がいなければ今の自分はいなかった」と、授賞式に参加していた別所さんへの感謝の言葉を伝えた。

 

日系社会功労賞 松野洋子さん

 会の内外を問わず、BC州において長期にわたり日系社会に貢献した人を対象に選出。

 日本舞踊西川流師範であり、彩月会を主宰する松野さんは、4歳から踊りを始め、西川流二代家元西川鯉三郎氏に師事し、1962年に苗字内「西川佳洋」となり、その後、師範となった。カナダに移住後、1976年より日系人を対象に、日本の舞踊の古典、民謡、盆踊りと幅広く教え始め、カナダで日本の伝統芸能の精神や文化を伝え、日本文化の認識向上に努めてきた。2011年に彩月会を発足、主宰。40年以上にわたるパウエル祭への踊りでの参加と盆踊り指導、総領事館監修のタッチオブジャパンにも25年間参加してきた。自身の着物を無償で貸し出し、学校や企業、団体の国際文化交流としての着物体験にも協力している。2016年には、日系プレース・コミュニティー・アワード日本文化賞を受賞。近年は踊りと着物ファッションショーのコラボレーションにも積極的に挑戦している。

 受賞に際し松野さんは、「子供の頃より習い始めました好きな踊り一筋に生きてきただけですのに、このような賞をいただけるとは思ってもいませんでした。とてもうれしいです」と述べた。会場には、彩月会で松野さんが踊りを指導するお弟子さんたちが、あでやかな着物姿でお祝いに来ていた。そして「これからもお弟子さんたちと一緒に、仲良く楽しく踊りをやっていきたいと思ってます」と語った。

 

楽しい歓談のひととき

 授賞式後、羽鳥隆総領事が挨拶に立ち、「いま日本は、どんどん若者が内向きになって、日本国内でのんびり暮らせればいいなと考える人が多くなっている中で、海外に進出しチャレンジをして、この地に根ざしたビジネスをしておられることは大変素晴らしいと思いました」と述べた。そして会場に集った人たちのますますの健勝と活躍を祈念して乾杯の音頭を取った。

 その後に続く歓談の時間には、バンクーバーを拠点に活動するシンガーソングライターの吉野耕平さんがギターの弾き語りが披露した。幼少期から日本、ブラジル、メキシコ、カナダに住んだ経験のあるグローバルな音楽家の吉野さんは、英語や日本語のバラエティあふれる歌で会場のムードを盛り上げた。

 その後は、お待ちかねのドアプライズと50/50当選者の発表。ホテル宿泊券やカナックスの試合観戦などの豪華賞品の当選者に歓声が上がった。最後は、企友会副会長の谷口明夫さんが「企友会のイベントは、会員の支援と協力があってこそのものです。今後ともよろしくお願いします」と挨拶し、華やかな宴を締めくくった。

(取材 大島多紀子)

 

司会進行を務めた田中久美子さん

 

羽鳥隆 在バンクーバー日本国総領事

 

日系ビジネスアワードを受賞した田村徳樹さん(左)と、昨年同賞を受賞した白木正孝さん

 

左から、企友会新人賞を受賞した荒木大輔さん、昨年同賞を受賞した繁野充弘さん、松本真子さん

 

日系社会功労賞を受賞した松野洋子さん(右)と企友会会長の澤田泰代さん

 

現在アルバム制作中という本格派アーティスト、吉野耕平さん

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。