健康と幸せを願って
JCCAの敬老会は、日系コミュニティの基盤を作ってきた日系シニアへの敬意と感謝の気持ちを込めて行っている恒例行事。参加者の申し込みの受付は常勤のスタッフを持たないJCCAに代わって隣組が引き受けている。
当日、会場の大ホールに用意されたテーブルは23。開始前から、ボランティアメンバーがシニアたちに声をかけながらお茶を注いで回っていた。ゲリー・マトソンさんの司会で会が幕開けし、JCCA会長の西村ロンさんのあいさつでは、今年の干支である辰年生まれの人物を紹介しながら、龍の勢いを持って元気にとメッセージが送られた。伊藤秀樹在バンクーバー日本国総領事は、昨年の震災後の日系コミュニティからの多大な支援に対して感謝の意を述べた後、被災地の復興の進展への願いのほか、クリスティ・クラークBC州首相の訪日予定に触れ、さらなる日加の歴史的、経済的、文化的交流の発展を望む旨を語った。そして「皆さんの健康と繁栄と幸せを願って」の言葉で乾杯。その後はフジヤ特製のボリュームたっぷりのおせち弁当に舌鼓を打ちながらの歓談の時間となった。

 

集いも暮らしも楽しんでいる参加者の皆さん
歓談中、参加者に話を聞いた。新さくら荘に住む上坂和枝さんは「毎年この会を楽しみにしています。新さくら荘の暮らしには何の不満もありません。ひとりで倒れたりしていないかとこの人(隣に着席の須田礼子さん)と毎日一回声をかけ合うようにしているんですよ。こちらに入居前に独り暮らしをしていた頃は、一度ドアにロックをしても心配で何度も確認していたんですけど、今は気楽なものです」と元気に語ってくれた。94歳の今川辰次さんは「うちのやつがあちらに行って(他界して)、私が日系ホームに入って2年目になります。この会は『行きましょう』とスタッフの人に手を引かれてやってきました」と穏やかな笑顔で語ってくれた。インドネシア出身のフランシス・デ・シンさんは昨年のハロウィーンの時期に日系ホームに入居。「ご飯がおいしくヘルシー。安心して暮らせてうれしい」とにっこり。

多彩な余興で年始を明るく盛り上げて

ランチと歓談を楽しんだ後は、敬老会恒例、体操の時間。藤嶋ケイさんが次々と実演して皆をリードしていく。右手で鼻を、左手で耳をつまんで、掛け声に合わせて手を入れ替える運動など、「○○さん、手が反対ですよ!」と時折喝を入れながら楽しくきびきびと進めていく。どんどん高度な動きになっていき、頭の中がこんがらがっておかしな動きをしては笑いがこみ上げて…会場がそんな笑い声で包まれ、大いにヒートアップしたところで、一転、落ち着いた古典芸能の世界へ。花柳流の前田ジーンさんが赤い着物で北島三郎の『年輪』を披露。続いて藤間流の藤間左由(コリーン・ランキ)さんが『老松』の演目をきりりと舞い上げた。そして『旅の夜風』ほかを熱唱し、自慢の歌声を披露したのは秋田谷リックさん。その後、舞台に登場したのは股旅姿に身を包んだ隣組うずしお歌謡クラブの面々である。歌唱の合間のせりふ回しも慣れたもので、「次郎長親分!」「勘太郎!」と人情味あふれる演技が会場の笑いを誘った。

年長者を敬う心を形に

場が和んだ後には、景品贈呈の時間に。参加者最年長101歳の神谷次郎さんをはじめとする数人に手渡されたプレゼントは個人や企業から寄付によって用意されたものである。その後は、桑原モコさんの伴奏とモコさん率いるコーラスグループ「ウインズ」メンバーのリードのもと、会場全体で『春よこい』『ふるさと』『花』を歌唱。西村ロンさんのあいさつで会を締めくくった。
「元気でね」「また今度ね」と会場を去る人たちと言葉を交わしながら、はつらつと片付けを行う運営メンバーとボランティアの姿に、記者は誰もが大切にされるコミュニティを支える力を見た思いがした。


(取材 平野香利)

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