2018年6月14日 第24号

5月31日、バンクーバー交響楽団(VSO)で18年間音楽監督を務めたブラムウェル・トービー氏(64)を見送るガラ・コンサートがブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー市ダウンタウンのオーフィアム・シアターで開かれた。

世界的ピアニスト、ジョン・キムラ・パーカー氏など、トービー氏と交流のあったソリストが友情出演。トービー氏のこれまでの貢献や、才能と魅力が大きくアピールされたガラコンサートであった。

 

団員やソリストたちから感謝と祝福を受けたVSO音楽監督ブラムウェル・トービー氏(中央) (写真提供 VSO)

 

18年間の貢献

 「大変だったこともうれしかったことも含め、18年はあっという間でした」と、開演前に語ったトービー氏。

 その仕事のひとつに、2011年、シーモア通りに新設したVSO音楽院(VSO School of Music)がある。当時の社長ジェフ・アレクサンダー氏とともに、オーフィアム・シアターの隣にVSO団員が教える音楽学校を作りたいという構想を実現させた。同時に、バンクーバー市、州政府および連邦政府による『ダウンタウン活性化計画』にも貢献したわけである。

 

特別な音楽家

 「トービー氏とは1990年代に知り合いました。VSOの音楽監督に就任したときは、とてもうれしかったです。期待通り、オーケストラの音、レパートリー、技術面、音楽面での可能性を最高レベルに導いてくれました。高度の音楽性と寛容な性格で、私にとって特別な音楽家でもあります。故郷バンクーバーに戻り彼の指揮で演奏することは、毎回大きな喜びでした」とピアニストのジョン・キムラ・パーカー氏。

 この日はガーシュインの『ヘ調の協奏曲』でジャズ風にリズムを刻み、カリスマ性たっぷりに聴衆を魅了した。

 

才能と魅力をアピール

 ベテラン・オペラ歌手トレーシー・ダール(ソプラノ)、ジュディス・フォースト(メゾソプラノ)の巧みな歌と演技、デヴィッド・ポムロイ(テノール)がプッチーニの『誰も寝てはならぬ』を熱唱するなど、トービー氏と交流のあった豪華なソリストたち。アシスタント指揮者を務めたタニア・ミラー、ゴードン・ジェラルドの指揮、愛娘による歌とバイオリンのソロ演奏など、彼が育てあげた世界がそこにあった。

 自らもピアノを奏で、ユーモアたっぷりのトークで舞台を盛り上げる姿に、あらためて多才な音楽家トービー氏の魅力がアピールされた夜だった。

 

“人との和”を象徴

 終演後、VSO終身名誉コンサートマスターの長井明さんは次のように述べた。

 「3時間15分に及んだ長蛇の歓送ガラ・コンサートは、トービー氏ならではの“人との和”を象徴した頭脳明晰なショーでしたね。作曲家でもある彼は作曲家兼指揮者であったバーンスタインをメンターとして尊敬していました。バーンスタインのオペラ『キャンディード』で始まり、最後に“人との和”を3人の歌手で歌い上げた幕には感動しました。彼が育てた指揮者や、彼と共に歩んできたソリストたちが集まっての一夜。音楽観念と頭脳を持ち合わせた人の成長の無限さを観た18年でありました」

 VSO名誉指揮者となったトービー氏。今後はゲストとしての再演が期待される。 VSOは来シーズンよりオランダ出身のオットー・タウスク氏を新音楽監督に、創立100周年を迎える。

(取材 ルイーズ阿久沢)

 

地元ファン待望のピアニスト、ジョン・キムラ・パーカー氏が友情出演(写真提供 VSO)

 

VSO音楽院のパイアット・ホールでスピーチするブラムウェル・トービー氏

 

 

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