2018年6月7日 第23号

5月27日、グラッドストーン日本語学園の第47回卒業式並びに学芸会が、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系文化センター・博物館で行われた。1階大ホールに400脚の椅子を用意していても足らず、立ち見の人も多くいた。第1部は、幼稚園から小学2年A組・基礎科の学芸会、第2部が小学科、中学科、高等科の卒業式、第3部が小学2年B組から高等科上級の学芸会、と3部構成。大勢の観客を前にした舞台の上で、日ごろ練習に励んだ歌や遊戯、劇を元気いっぱいに披露した学芸会に、ハラハラ・ドキドキの保護者たち。また、卒業する生徒たちのスピーチにホロリ、感無量の保護者たちだった。

 

晴れ姿の高等科・中学科・小学科の卒業生

 

きっと思い出す。忘れない…「贈る言葉」を胸に巣立っていく

 岡井朝子在バンクーバー日本国総領事は、卒業のお祝いの言葉にと、3つのお願いを贈った。「まず1つ目のお願いは、せっかく日本の文化、言葉を学んだのだから日本への関心、興味をこれからも持ち続け、日本の良さ、日本らしさを世界にどんどん発信してほしいということ。2つ目のお願いは、気候変動、大規模災害、テロとの闘いなど、地球規模の問題について、自分に何ができるかということに想いを寄せてほしいということ。そして3つ目のお願いは、『何かをなしとげる人になってほしいということ』。そのためには、情熱が重要。私が尊敬する、日本人で初めて国連難民高等弁務官を務めた緒方貞子氏も、『クールな頭と熱い心を持て』というイギリスの格言を常に口にしていた。この3つのお願いを祝辞に代えさせていただく」と述べた。卒業生たちの心の奥底にきっと届いたに違いない。

 

卒業生たちがこぞって言った…「がんばってよかった!」と

 今年、56名が卒業した。卒業生の言葉は、「現地校と日本語学園の宿題やテスト勉強、部活動をかかえ、何度も日本語を勉強するのを止めようかと思った。そのたびに、お母さんや先生になだめられたり、励ましてもらったりで、なんとか今日を迎えられました。ほんとうにがんばってよかったと思います」と、流暢な日本語で喜びを述べていた。聞いていた保護者にとどまらず、多くの人が、目頭を押さえていた。また、「バイリンガルであること、日本語を話すだけでなく、読み書きにも自信が持てるようになったこと、日本の文化についても現地の人にも紹介できるように、ここグラッドストーン日本語学園で学べたことを誇りに思います」と胸を張る姿は、頼もしさにあふれていた。

 

情熱を消さずに、続けることで、必ず成果がある

 グラッドストーン日本語学園は、学園長の村上陽子さんが、1971年に寺子屋スタイルで始めた。2000年にここ日系センターに移り、現在、全校生徒数約450名を数える。「今年、56名の生徒が巣立ちますが、毎年ほんとうにひなが巣立っていくような感覚におそわれます。私に情熱の続く限り、生徒と共に人生を歩みたいと思います」と、卒業式前のインタビューで村上陽子学園長が熱く語っていた。

 そして、いよいよ卒業式最後の謝辞の言葉を述べるとき、村上学園長の声は、震え、つまり、感無量のスピーチであった。生徒たちに贈った言葉は、『出会いについて』であった。「人との出会い。友達と出会って学び続けたことは、きっと宝物になりますよ。また、知らないことに出会う、本との出会いで、物の見方や考え方を深めてほしい。そして、新しいことに挑戦し、達成する自分との出会いです。この3つの出会いの大切さを忘れずに、これからの人生を歩み続けてください」と、一言、一言噛みしめるように語りかけていた。

 

すべての舞台が、生徒の手作りの学芸会

 学園での勉強の後に、稽古を重ねた歌や劇、ダンス。小道具も手作り、司会や劇のナレーションも生徒たちがおこなう舞台は、見る者を『ほっこり』させるもの。保護者たちは、我が子の晴れ姿の撮影に身を乗り出し、大忙しだった。 

 最後に毎年恒例となっている『ソーラン節』の踊りには、生徒、先生、有志の保護者も参加し、汗だくになるほどの迫力ある踊りを披露し、会場を熱狂させた。フィナーレの演目は、『花は咲く』。大合唱のなかで幕が下りた。

(取材 笹川守)

 

幼稚園〜小学科2年A組・基礎科クラス出演者勢揃い。「小さな世界」を歌と手話で!

 

幼稚園〜小学科2年A組・基礎科クラス出演者勢揃い。「小さな世界」を歌と手話で!

 

謝辞を述べるグラッドストーン日本語学園・村上陽子学園長

 

祝辞を述べる岡井朝子在バンクーバー日本国総領事

 

 

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