2018年5月24日 第21号

5月10 日、在バンクーバー日本国総領事公邸で、日加コー・オプ・プログラム(CJCP)で日本に向かう学生たちの壮行会が催された。このプログラムはカナダの大学でコー・オプ・プログラムを取り、日本でインターンとして就業を希望する学生に職をあっせんするもの。1991 年に開始以来これまでに千人以上が参加している。

 

日本での就業を前に期待でいっぱいの参加者たち。岡井朝子在バンクーバー日本国総領事(前列左端)と共に記念撮影

 

日本での貴重な経験を

 今年は53 人が日本の企業で4〜12 カ月間働く。日本での就業に先立ち、CJCPの事務局があるブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)で4日間のトレーニングが行われ、その修了書が一人ひとりに手渡された。CJCP のディレクターのひとりであるジュリー・ウォルクリさんは冒頭のあいさつで、これまでに50 社を超える日本の企業が学生たちを受け入れてきたと述べた。そして、これまでの参加者は、その経験を生かしてグローバルな活躍をしており、このプログラムの実績の高さを表していると話した。続いて、フランク・ティエンレン・ワンさんとサラ・ベン レジェブさんが参加者を代表して日本語でスピーチ、日本の企業の一員として働くことに対する期待と共に、日本の文化や人々との触れ合いを楽しみにしていることを話した。

 岡井朝子在バンクーバー日本国総領事は、優秀なカナダの学生たちが日本の企業の発展に貢献することを喜ばしく思うとし、日本でまたとない経験を積んでほしいと激励した。また、CJCP を高く評価する岡井総領事は、この壮行会にカナダで事業を展開する民間の企業5社と公的機関1社から代表者を招いた。さらに、多くの日本企業にこのプログラムの良さを知ってもらいたいとの考えからだ。壮行会に出席した企業の中には、過去のCJCP 参加者と仕事をしているというところもあり、その技能の高さと日本での就業経験がカナダの日系企業にも大いに生かされていることがうかがわれた。

 

期待にあふれる参加者たち

 初めて日本に行くというサラ・ベン レジェブさんは、アニメを通して日本に興味を持ち、4年前から日本語を学び始めた。紫式部の作品にも興味を持っているという。「一生懸命仕事をして、たくさんのことを学び、良い経験を積みたいです。歴史、自然、食べ物といった日本の文化に触れることも楽しみです」と話す。

 フランク・ティエンレン・ワンさんは、幼少時、鳥取県に6年住んだことがあるという。日本で働くことで、もっと日本語能力を高めたいと思っているそうだ。「さまざまな会議に出席したり、優秀な科学者や技術者などにも出会って良い関係を作りたいです。上司から与えられる仕事以外にもいろいろな技術を身につけることができたらいいと思います」。将来に向けて、いろいろな可能性を探っていきたいと意欲的だ。

 また、昨年度に参加したキエラ・ウォーレンさんは、「カナダとは企業文化が随分と違いましたが、そういう点も興味深かったです」と話す。会社の課外活動でも他の社員と共に楽しむことができたという。今後はバイオテクノロジー産業での就職を希望しているとのこと。CJCP については、「バイオテクノロジーや文系の分野も今後増えていけばいいと思います」と話した。同じく昨年度の参加者であるエドワード・イーハン・ホアンさんは、日本語能力試験のN1を取得しているので、日本語でのやり取りも苦労を感じなかったという。また、「日本の文化などについても、ある程度の知識を持っていたので、違いに戸惑うということもなく、初日からスムーズに職場にとけこめたと思う」と話す。日本での職業経験は得難い貴重な体験だったというエドワードさんは、今年UBC を卒業、ソフトウェア開発の仕事に携わるということだ。

 

CJCP に関する周知を広げたい

 岡井総領事はCJ CP について、「優秀な理工系の学生が日本の企業でインターンとして働き、その知見を提供すると共に、日本を理解し架け橋になってくれる素晴らしいプログラム」と評価。日本の企業にとっても、異なる文化と接する良い機会だ。「これまでに50 社を超える企業が受け入れているそうですが、この数がもっと増えていくように協力したいと思っています」。「安倍首相政権のもと、高度外国人材を日本にもっと受け入れるという方針が出ています。(CJCP は)その候補者たちがインターンとして日本で働くというもの。企業にとっても、将来的にこうした人材をどのように取り入れるか、海外の大卒や大学在学中の人の技能のレベルを理解し、国際感覚を磨く上で大変良いプログラムだと思います」と語った。

 CJCP のプログラムアシスタントである根本優子さんによると、CJCP のもともとの成り立ちが、理工系の学生が日本での職務経験を積むものであったことと、こうした職種では日本語能力の高さがあまり問われないということで、理工系に偏る傾向があるとのことだ。20 年以上、継続して受け入れている企業や、複数人の学生を採用する企業もある。「優秀な人材が多いと思うので、企業でその能力を発揮し役に立っていることを、企業側としても実感し継続して採用してくれると思うとうれしいですね」。外国人が少ない地域のある企業では、カナダからの学生が1 人でも入ることで、その場のコミュニケーションが英語になることがとても貴重で、自社の社員教育にもつながる、という感想が寄せられたという。学生だけでなく企業側にとっても、大きく成長する機会を提供する有意義なプログラムといえそうだ。

(取材 大島多紀子)

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。