2018年4月19日 第16号
雨まじりの休日、ポートムーディ旧市街のギャラリービストロ(2411 Clark Street)はひときわ活気にあふれていた。そこで行われていたのは写真展「ワンフォト、ワンソート(one photo, one thought)」のオープニングイベント。その場を熱くしていたのは何だったのか。
写真展に作品を出展した(写真左から)マイケル・ボクソール(Michael C. Boxall)さん、松本守隆さん、 後藤えむさん、サミー高橋さん、マイク平田さん、ノブ・カワグチさん、中村真人さん (那須則子さんは欠席)
写真の投稿仲間が集まって
写真作品を寄せたのは、サミー高橋さん、中村真人さん、那須則子さん、マイク平田さん、松本守隆さん、ノブ・カワグチさん、マイケル・ボクソールさん、後藤えむさんの8人。皆、後藤さんが運営する月刊ウェブマガジン「クレイドル・アワ・スピリット(Cradle Our Spirit!)」の「一写入魂」のコーナーに写真を投稿してきた仲間だ。
大事にしているものは何か
作品を通して「カリフォルニアの抜けるような青い空とビビッドな色彩の世界を楽しんでもらいたい」と高橋さん。再開発で今はもう見られない温もりのあふれた「大好きだったガスタウン」。後藤さんはその思い出が詰まった作品を展示した。空の青を映したディアレイクと赤いカヤック——身近に広がる自然の色彩をカワグチさんは大事に作品に収めた。大きな枝振りの見事なサクラの花、その大木に登った無邪気な少女の姿を写し込んだのは那須さん。5千メートル級の山登りに挑んできた平田さんは、ヒマラヤ山脈を背にした洗濯姿の女性を絶妙な構図で捉えた。アジア美術の教授だった松本さんの視点は、スペインの国立美術館で学芸員の話を真剣に聴く子供たちの姿に注がれた。建物の写真の周りに階段とはしごの写真を配したボクソールさんの作品を、上ると見るか、下りると見るか。日頃スポーツの報道撮影に奔走する中村さんは、季節の花に当たる日の光、花を訪れる虫の素早く微細な動き、その数百分の1秒にある珠玉の瞬間を捉えた。
作品に、作者に迫った参加者たちの声
「私は絵描きなので、写真の一瞬を切り取るという芸術に非常に興味があります」と語る会田由紀さんは、作品を生み出すプロセスを出展者から熱心に聞き出していた。依田麻友美さんはバンクーバー地域で撮影された豊かな自然、ゆったりと時の流れる作品から「今いるこの場所に一層愛着が感じられてきました」と感想を語っていた。
独自の視点と創意工夫で作品を生み出した情熱的な8人のカメラマン、そして彼らに共鳴する感性豊かな仲間たち。写真を囲み、互いの可能性と世界の可能性にフォーカスした参加者たちの熱い交流の時はまたたく間に過ぎた。そしてこの場を収めた写真が、また次なる人々をインスパイアしていきそうだ。
(取材 平野香利 写真提供 中村"Manto"真人さん)
こうした写真を撮影する中村真人さんの姿も参加者の刺激に
出展者たちの話から多くの学びがあったと語る会田由紀さん
イベント冒頭を音楽で盛り上げたベルナード・ブーランガー(Bernard Boulangar)さん
イベントを楽しむ依田麻友美さん(写真左)と樺沢絵美さん(写真右)
オープニングイベントには50人以上の人たちが足を運んだ