2018年4月12日 第15号
あいにくの小雨だった4月8日、「第2回リッチモンド・チェリーブロッサム・フェスティバル」がブリティッシュ・コロンビア州リッチモンド市のギャリー・ポイント・パークで開催された。出足は心配されたが、なんのなんの、今が見頃の満開の桜が呼び込んだのか、時間を追うごとに花見の人達が集まりだした。昼近くになると弁当などのフードコーナーには長蛇の列。さまざまなイベント会場には、テントを張り、雨天対策も万全だった。桜の品種は“あけぼの”。スティーブストンの海と小雨煙る空に、可憐な桜色が不思議な調和を見せていた。この桜の木々は、2000年から和歌山県人会が毎年植え続け、今年で256本に。すべてが満開となって来園者を迎えていた。
インスタ映えする場所は、そこここに
「和」のこころ
スティーブストンは、日本人のカナダ移民の始まりの場。1888年(明治21年)、和歌山県日高郡三尾村の漁師、工野儀兵衛が初めて足を踏み入れ、「フレイザー河の河口には鮭が湧いている!」といって同郷の漁師を呼び寄せたのだった。その後、スティーブストンの街も発展し、1953年に和歌山県と姉妹都市に。また、2015年3月27日には、和歌山県人会創立50周年を機に、リッチモンド市が、その日を「BC州和歌山県人会DAY」と正式に命名。多くの交流が行われている。この桜まつりにもリッチモンド市がさまざまな支援を行っており、この日、マルコム・ブロディ市長をはじめ、市スタッフも参加し花見を楽しんでいた。また、岡井朝子在バンクーバー日本国総領事も挨拶に立った。
日本の別名の「和」と和歌山の「和」を合わせて、ハーモナイズされた桜まつり。さまざまな言語が飛び交い、各種のイベントに和テイストが紹介されていて、さながら、“草の根”の日本外交のようであった。
各種のイベントに地元ボランティアたちが
なかでもスティーブストン日本語学校の先生や父兄は、きものの着付け、ゆかたときもののワークショップ、茶道、書道、華道、桜の折り紙などを文字通り手取り足取り教え、それぞれ固有の日本語を英語に直したり、解説したり…。長蛇の列をなす人たちへの対応で大忙し。和歌山県人会の盆栽展や日本のなつかしい歌や、踊りあり。尺八とお琴のハーモニー、そして和太鼓のとどろきに会場は、さらに盛り上がり、ジャグラーの芸にお腹を抱えて笑うなか、いつしか雨もやんでいた。ランチは、フィッシュ&チップス、ワッフル、ジャパドッグなどの他、日本料理のお弁当、いずれも今人気のフード、ここも長蛇の列。用意されていたテントの中のテーブルで舌鼓。雨がやんだあとは、桜の下のバーベキューテーブルで“お花見”ピクニック。また、いま大流行の「インスタグラム」の背景にスティーブストンの桜は、格好の場。さまざまなポーズをとっての撮影会が、ほうぼうの桜の木の前で行われていた。こうした来園者の喜びの姿や声に、ボランティアのひとりは、「私もうれしい!」と共鳴しあう大盛況の一日となっていた。
(取材 笹川守)
ゆかたときもののワークショップ。スティーブストン日本語学校の生徒と先生、父兄たち
日本のなつかしい曲にあわせて優美に踊る姿にうっとり
茶道や書道のコーナーも千客万来
マルコム・ブロディ市長(右から4人目)を中心にリッチモンド市役所のスタッフたち
挨拶をする岡井朝子在バンクーバー日本国総領事