2018年3月22日 第12号
3月7日、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系文化センター・博物館 <松の間> で、『終活』セミナー(メディアスポンサー:バンクーバー新報)が開催された。最近、日本でよく耳にするようになった『終活』というこの言葉、人生の終末を迎えて、「自らの人生の総括をし、さらに、残された遺族に迷惑をかけないよう可能な限りの準備をしておきましょう」、ということから生まれた言葉。BC州には遺産相続に関することや、尊厳介護などの個人意思を尊重するための法律があり、個人の尊厳が保護されている。そのために、生前に必要書類、遺言を作成しておく必要がある。 そのお手伝いをする専門家『ノータリー・パブリック』の眞鍋恭子さんによる『終活』セミナーが開催された。また、不動産売却に関する個別カウンセリングをリアルターの松浦加代子さんが協力。仕事上体験したリアルな事案を紹介した。集まった参加者は、我が身の現状に照らし合わせながら聞き入っていた。
熱心に聞き入る参加者たち
あなたの意思をより確かに伝え置くためのBC州の公正証書(概略)
レプレゼンテーションアグリーメント(セクション7)
任意代理人契約書(標準能力)
POA(パワーオブアトーニーまたは任意後見人契約証書)を作成する法的能力がない場合でも、保険金や請求書の支払い、医療処置の方法や決定、年金などの受け取りと入金、パーソナルケアや弁護士を雇い裁判を申し立てるなど、この任意代理人を通じて実行できる。ただし、不動産の売買、名義変更、未成年者への養育費の支払い、役員代理はできない。
レプレゼンテーションアグリーメント(セクション9)
任意代理人契約書(広範囲における能力)
前記セクション7の標準能力を持つ代理人よりも、重要な決定権や実行力のある代理人の契約書。たとえば、アルツハイマー病と診断され、判断能力の低下や認知症が進行する可能性のある場合など、医療処置や薬剤投与の指示の実行を委任、延命策や妊娠中絶、ショック療法の拒否なども含まれる。財務や法務に関する指示はできない。
パワーオブアトーニー/任意後見人契約証書
任意後見人契約書は、財務や法務を法的に執行できる重要な書類。将来、判断能力が不十分になった場合に備え、自分の銀行口座からの引き下ろしや、法務に関することなどを支援をしてもらうために結ぶ契約。家族、親類、ノータリーの専門家などとの契約をしておく必要がある。
アドバンスディレクティブ/事前ヘルスケア指示書
個人の尊厳を重視し、医療処置、治療、介護を希望する、または、しないを指示した書類。ヘルスケアのみに適応。この指示書は、代理人を指定するものではない。本人が判断能力を失った場合に効力を発揮する。
遺言書
遺産相続は、親族間でトラブルになることが多いので、しっかりとした遺言書を残す必要がある。遺言書は、基本的には遺産を相続する者や、遺産の分配方法を自由に決めることができ、強力な効力を持つ。しかし、遺言でもできないこともあり、また、書き方や認証の仕方によっては無効となる場合もある。遺言書は個人で書くこともできるが、より正確に、トラブルにならないよう記しておくためには、ノータリーパブリック、弁護士を通して作成するのが望ましい。
なお、BC州では、日本のような「遺産相続税」の制度はないが、2万5千ドル以上の遺産がある場合は、裁判所での検証手続きが必要。その検認手続き費が200ドル、検認費が、例えば5万ドルの遺産の場合で150ドル、100万ドルの遺産の場合で1万3450ドル必要となる。 遺産相続は、個人によってさまざまな事情もあり、専門家に気軽に相談することが最上の手段である。
・問い合わせ・
眞鍋恭子(kyoko Manabe)
ノータリーパブリック www.senjunotary.ca
電話:604-454-8222
メール:This email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it.
住所:500-171 West Esplanade, North Vancouver, BC V7M 3J9
*最初のカウンセリングは、1時間無料。
(遺言や生前に必要な書類を前提の方のみ)
*『終活ノート』の書き方などの相談も受けられる。
(取材 笹川守)
ノータリーパブリックの眞鍋恭子さん(左)とシニア世代を応援するリアルターの松浦加代子さん(右)