2018年3月1日 第9号

「皆さん、深呼吸をして元気に発表してください」会の冒頭、岡本香織さん(JALTA副会長)の呼びかけに、子供たちから「はーい!」と元気な声が返ってきた。2月18日に開催し、130人の来場者を迎えたJALTA日本語教育振興会主催のお話発表会(メディアスポンサー:バンクーバー新報)(会場バンクーバー日本語学校並びに日系人会館ホール)は、日本語で人と交わる喜びが伝わってくるエネルギーに満ちた会だった。

 

参加者全員で記念撮影

 

「一番大好きな人はおばあちゃん」

 1974年に設立されたJALTA日本語教育振興会の目的は、日本語教育の振興、日本語教師の育成、日本語教材の開発。今回が20回目となったお話発表会は、日本語教育の振興がねらいだ。発表者として参加したのは、グレーターバンクーバーの12の日本語学校の小学科、基礎科、中・高等科からの28人。自分の好きなこと、中でも家族やペットのことを書いた作文の暗唱発表が多かった。

 「愛犬のミニー」という題で「(生まれた時の愛犬は)母が両手に乗るくらいの大きさだったと教えてくれました。私はそれが見たくてたまりません」と語ったのは金梨奈さん。兄弟でお菓子の取り合いをした時のコメディドラマのような顛末を、声の調子や表情で豊かに表現したのは菅原帆那さん。帆那さんに発表を終えての感想を聞くと「楽しかった。またこういう発表をしてみたい」と頼もしい答えが返ってきた。「ある時、お医者とおじいちゃんの通訳を頼まれたので、僕は張り切って通訳の仕事をがんばりました」と発表したのは、おじいちゃんが大好きな菅原晃司君。家族に話を聞くと、晃司君の普段の口ぶりも「おじいちゃんそっくり」とのこと。また玉城勇君が「一番大好きな人はおばあちゃん」と語るなど、まさに日本語が祖父や祖母との大事なコミュニケーションのツールとなっていることがうかがえる。

 

言葉ができること

 会の最後に挨拶をしたJALTA会長のベイリー智子さんは、オリンピックで金メダルを取った羽生結弦選手が親日家のフィギュアスケーター、ジェイソン・ブラウンさんから日本語で祝福のメッセージを受け取り、英語での言葉よりもはるかにうれしく思ったというエピソードを例に「言葉は人を幸せにします」と伝え、「この発表の機会が人生の輝く1ページになることを確信しています」と締めくくった。閉会後は、劇団「座・だいこん」による早口ことばがテーマの短いショーが披露された。

 発表後の安堵と充実感に満ちた表情の子供たち、その肩に触れ、よくがんばったと声をかける教師や親たちのうれしそうな顔が印象的だった。

(取材 平野香利)

 

菅原帆那さんは「東京ばなな」のタイトルで楽しいストーリーを発表

 

「おじいちゃんは僕の日本語の先生です」と菅原晃司君

 

 

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