2018年1月1日 第1号
日系の文化団体としてコミュニティに貢献している、日系センター・博物館、隣組、日加ヘルスケア協会の代表者の方々に、2017年を振り返っての感想と2018年の展望について話を聞いた。
日系文化センター・博物館理事長五明明子さん
日系文化センター・博物館理事長 五明明子さん
● 2017年を振り返って
「まず印象に残っていることは、5月5日に世界的に活躍されているカレン五明氏のバイオリンコンサートを実現できたことです。ここのホールは決して良い音響設備ではないのですが、それをものともせず素晴らしい演奏をしていただきました。次に、5月20日から9月3日まで、博物館で日本の誇れる文化である着物の展示を行ったことです(Kimono Culture)。ビクトリアから原馬仁美氏をお迎えして監修していただき、着物について何も知らない方にも、着物に興味がある方にも楽しんでいただける展示やワークショップを行い、延べ6千人弱の来場者を迎えることができました。また、9月2、3日の第5回日系祭りは、2日間延べ約1万3千人と、今まで以上に来場者が多く、成功を収めたと思っています。9月23日には、日系コミュニティアワードと晩餐会がありました。受賞される方がもちろん主体であるのと同時に、日系センターの運営経費のファンドレイジングの一環として位置づけられています。2017年は日系人強制収容75周年でしたので、それをテーマとしました。日系人の方たちにもその趣旨に賛同していただけたものと思っています。それに関連した展示『Hastings Park 1942』が、日系博物館で9月30日から1月14日まで行われています(10月末時点での来場者650人)」
● 2018年の展望
「一番大きな計画は博物館の拡張です。2016年12月に唐沢良子さんから百万ドルの寄付をいただき、それを元に政府から50万ドルの補助金が下りることになり、総額150万ドルを博物館拡張及び運営にあてられる見込みとなりました。まずは博物館の横にあるオフィススペースを2階に移動し、そこを博物館として拡張していきます。現在、2階の廊下に日系人の歴史のパネルを貼ってあるのですが、それらを常設展示するスペースを作りたいと思っています。さらに、企画展を行うスペース、アーカイブ収納やリサーチのためのスペースを作りたいという要望やアイディアがありますが、現在細かい点を詰めているところです。オフィスの移転は今年1月から始め、春頃には終わる予定です。拡張工事そのものは今年秋から始め、2019年春頃までには終わる目標で計画を立てています。
日系センターでは、教育プログラムも充実してきました。いろいろな学校から生徒が来て、日本文化の体験をしてもらうというプログラムも人気です。多様化する需要に応えるために、文化、教育、博物館のプログラムの担当者と、年間を通して行われるさまざまなイベントの担当者を分けることになりました。柔軟に対応できる体制づくりをして、これまで以上に魅力的な日本の文化や日系の歴史について発信していきたいと思っています。
そして、日系センターのウェブサイトを充実させ、もっと使いやすくしていきますので、ぜひご覧ください。日系センターの利用についてや、新しいプログラムのご希望などがございましたら、下記までご連絡ください。最後に、日系文化センター・博物館はおおぜいのボランティアの皆さんのご協力と、コミュニティのサポートを得て存続しております。本年もどうぞよろしくお願い致します」
住所 6688 Southoaks Cres., Burnaby
電話 604-777-7000
ウェブ http://centre.nikkeiplace.org/
メール This email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it.
隣組臨時事務局長ハイディ浜野さん
隣組のみなさん。左から柿沼久美さん、隣組臨時事務局長の浜野ハイディさん、長谷川朋子さん、田中法子さん
● 2017年を振り返って
「毎年参加しているパウエル祭では、前年を上回る結果を出せました。また、ライトハウスプログラムという、初期の認知症の方や体が少し弱いというシニアの方向けのプログラムを、過去1年半くらいは助成金で運営していました。このプログラムに参加して、外交的になったとか、健康状態等が非常に良くなったと好評でしたので、助成金が受けられなくなってしまった今も、隣組が運営する形で継続しています。月曜日は午後のみ、水曜日は10時〜15時です(ランチ込)。大体、12〜13人くらいが参加していて、ボランティアが10人くらい入ってますので、マンツーマンに近いですね。内容は、アート、歌を歌ったり、軽い体操をしたりしてます。また、リッチモンド方面へのお弁当宅配を再開しました。このサービスは現在、バンクーバーとリッチモンドで行っています。
隣組ではボランティアの力が頼りです。ボランティアの定着を目指すことや、高齢化してきていますので、世代交代をどうやっていくかが課題ですね」
● 2018年の展望
「新しい計画として、リーチアウトというテーマがあります。バンクーバー市外のシニアの方に、人気のあるプログラムやサービスを提供できないかというものです。交通手段の問題があって、こちらのほうへ来ていただけない方もいらっしゃいますので、こちらから需要のあるところに行ければいいと思い、模索しているところです。そのためには寄付を募ったり、ファンドレイジングを計画することが必要になると思います。
会員さんが特に関心をお持ちなのは、健康と認知症予防といったテーマです。健康関連と住宅など生活に関係したことに特化したセミナーを年に10回行っていますので、引き続き継続していきたいです。このセミナーには会員以外の方も参加できます。また、健康に関するエクササイズ、転倒防止といったシニアの健康維持に役立つプログラムを紹介していきたいですね。そして、会員向けに無料で提供している電話友達や訪問のサービスにも、力を入れたいです。
ファンドレイジングは力を入れたいのですが、リソースが少ない、スタッフが足りないという課題があります。隣組は、グラスルーツで地道にやってきている感じなんですね。隣組って何をやっているの? と思う人も多いかもしれませんが、たくさんの方にここに来ていただき、私たちのやっている活動を見ていただきたいです。そして、会員になればいろいろといい点があるな、と感じていただいたり、ボランティアに興味を持っていただけたらうれしいです。会員になるといろいろな特典があります。本やDVDは借り放題、プログラムやセミナーの参加費も会員割引がありますし、お誕生日会やクリスマスパーティーなどの企画も。会員になるのに年齢制限などはありません。
私は副理事長として6年の任期を終了したのですが、専任の事務局長が辞職したため臨時として務めています。隣組を利用するみなさんが、安全に施設を使えるようにすることが大切ですし、スタッフにとっても仕事がしやすい環境を整えることが必要と思っています。こうした環境を改善して、次の人に事務局長の仕事をバトンタッチするのが私の目標です」
住所 101-42 W. 8th Ave., Vancouver
電話 604-687-2172
ウェブ tonarigumi.ca
ウェブサイトから問い合わせできる
日加ヘルスケア協会理事長 田中朝絵医師副理事長 上遠野和彦さん
日加ヘルスケア協会理事長の田中朝絵医師(右)と副理事長の上遠野和彦さん
● 2017年を振り返って
「日加ヘルスケア協会(以下、日加ヘルス)は、日本人や日系人が、BC州で利用可能な医療・健康サービスを十分活用し、予防的健康管理に役立つ知識を身につけて健康を増進し、疾病を予防する援助を目的とした、ボランティアを基本形態とした団体です。2004年12月にBC州登録公益法人として設立され、2006年1月に非営利慈善団体となって以来、10周年を迎えました。2016年秋に健康ハンドブックを出版し、販売・配布してまいりました。このハンドブックの内容は、MSP(BC州の医療保険)への加入の仕方、ファミリードクターの探し方、ファーマケア(薬などの保険)についての説明と、巻末は医療用語の辞書となっています。2017年11月には、在バンクーバー日本国総領事館の協力を得て、カナダの医療システムについて事例を出してお話するというワークショップを行いました。また、隣組や桜楓会とも協力してセミナーなども行っています。
日加ヘルスの現在の会員数は約70人で、定期的な活動として『座談会』と『歩こう会』というものがあります。歩こう会はほぼ毎月開催され、普段皆さんがあまり行かないところを紹介し、歩いた後にはおいしいレストランでの食事会もあり、雨天の場合は、ショッピングモール内を歩くなど工夫されています。これまで、PNE内のモミジガーデンやイタリアンガーデン、ノースショアのライトハウスパークなどに行きました。こうした活動は基本的には会員対象ですが、会員の紹介でゲストとして1回までは参加可能となっています。2017年の座談会は終活、指圧と中医学、チェアーヨガ、骨粗しょう症予防、歯と健康、コグニサイズ(認知症予防の運動)、バリアフリーの家づくりなどといったテーマを取り上げました。座談会の始めに、20〜30分ほど、マインドフルネス瞑想の時間を設けていますが、これを目当てにいらっしゃる方も多いようです」
● 2018年の展望
「日系シニアズ・ヘルスケア&住宅協会と協力してセミナーなどを行う予定です。シニアの方たちが、将来に向けての準備として、どういうことをしたらいいかといったトピックを取り上げていくつもりです。日本人の方に多いのは、もうこれ以上1人では暮らしていけないというギリギリの状態になってから動き出すというパターン。そうならないためにもシニアの将来プラニングは大切なんです。将来の不安を解消するためには、早めに真剣に老後の生活設計に向き合う必要があります。それから、セント・ジョン・アンビュランスと協力して、ファーストエイドのコースを開く予定です。これは通訳付きの1日コースで、認定証が授与されます。このコースは人気があり、会員以外の人も多く申し込んでいます。
会員の方はシニアの割合が高いのですが、年齢やバックグランドは問わず、必要な情報を提供することを心がけています。日加ヘルスのウェブサイトの他に、フェイスブックも始めました。これによってより広い世代とつながることを期待しています。また、他団体との横の連携という点も強化したいと思います。カナダに住む日本人の方たちが求めているものが少しずつ変わっていく中で、常に必要とされる情報を届けることができたらと思います」
日加ヘルスケア協会 連絡先
住所 1300 Robson St., Vancouver
電話 604-833-0266
ウェブ www.nikkahealth.org
ウェブサイトからメールで問い合わせできる
(取材 大島多紀子)