2017年11月30日 第48号
昨季バンクーバー・ホワイトキャップスFCで活躍したJ1サンフレッチェ広島の工藤壮人選手が12月にバンクーバーに帰ってくる。昨年好評だったサッカー教室を今年も開催する。 バンクーバーには1年足らずしか滞在しなかったが、ホワイトキャップスファンから愛され、日系コミュニティから親しまれた工藤選手。「またバンクーバーに帰って来たい」という思いが強かったという。サッカー教室開催を前に話を聞いた。
キャップスとしてMLS初先発。相手のペナルティを誘ったプレーでキャップスがPKを決め勝利に貢献した。2016年3月26日ヒューストン・ダイナモ戦、BCプレース
■また開催したいと思っていた
昨年のサッカー教室はMLS(メジャーリーグサッカー)シーズン終了後、元ホワイトキャップスの小林大悟選手(ニューイングランド・レボリューション)と共に指導した。開催は1回で7歳から12歳が対象。まずは工藤選手、小林選手が、サッカーを始めたきっかけや挫折した経験などを交えて約10分の自己紹介をした後、保護者も含めての質疑応答。それから実技指導となった。
実技では、工藤選手はフォワードとして、小林選手はミッドフィルダーとして、どういうことを意識しながらプレーしているかなどを伝えた。目的はあくまでもサッカーを楽しいと感じてもらうこと。技術的な向上よりも「ボールを蹴る楽しさとかを分かってもらえたかなっていう感触はありましたね」。
そんな子供たちのキラキラした目を見て、「今年もやりたいと思った」という。「プロの選手と触れ合いながらサッカーを教えてもらえる機会が少ないということも聞いていましたし、昨年のイベントが終わった瞬間から今年もやりたいなって思っていました」。
昨年は手探りだったが、今年は2回目。開催日を3日に増やし、年齢別に内容も変えて「もう少し込み入った、前回よりはちょっと技術的なことも含めて教えられるかなって思っています」と工藤選手。今年をきっかけに、これからも継続していけるような何か形になればいいとも期待を込めた。
■バンクーバーとの縁を大切に
今回のバンクーバー訪問はサッカー教室開催も楽しみにしているが、何よりも本人が「バンクーバーに帰って来たかった」というのが本音だという。
バンクーバーではサッカー以外でも「いろいろな人と出会いたい」と思い、日系コミュニティに積極的に参加し、時間があればイベントに顔を出し、人々との交流を楽しんだ。そういうこともあり、バンクーバーを離れても「また来てください」と声を掛けてもらえると喜んでいる。
ホワイトキャップスの選手とも交流を続けている。もちろん選手たちやチームの動向も気になる。ホワイトキャップス時代はわずか1シーズンだったが、初の海外で、初めて大けがをし、初めてレギュラーの座が保障されない、いろんな意味で、もがいた激動の1年だった。それでも「内容の濃い1年だったし、確実に、僕にとってプラスになったなって思っています」と振り返った。
そうでなければバンクーバーに帰って来たいとは思わないだろう。「今年5月頃にはあれ(大けが)から1年かぁって思いましたもんね」と笑える余裕があった。海外でもがいた1年は、J1に復帰した今季にも生きている。
■来年こそは爆発できるように
昨年末の電撃移籍で、今年はJ1サンフレッチェ広島でプレーした。過去5年で3度優勝したチームは今季、開幕当初から苦戦した。
白星がつかめず、シーズン中盤に監督が交代するという事態にまで悪化。「チームも、僕も、流れをうまく変えることができなかった」と、振り返った。
個人的には開幕当初は「僕自身は手ごたえをつかみながらやってたんですが」と語ったが、シーズンが進むにつれ試合への出場機会が減り、「試合になかなか絡めなかった」と、歯がゆい思いが募った1年だった。
なんとなく昨季のホワイトキャップスと被るところがある。「今年は、はまってない感じがあるんで、サッカーだけでなく、人間的にも、ひとつ成長するというか、我慢のしどころと思っていますね」と前を向いた。昨年、この地で得た教訓でもあった。
「去年のバンクーバーもそうですけど、日本に帰ってきても、今年悔しい思いがたまっているので、だからこそ来年は爆発できるようにやっていきたいと思っています」。
その前に、雨が多い12月のバンクーバーで、サッカーを通して子供たちと日系の人々との触れ合いを楽しみにしている。
(取材 三島直美 / 写真 斉藤光一)
ケガのため試合には出場できなかったが、元キャップス小林大悟選手(ニューイングランド・レボリューション:当時)と試合後に。2016年6月18日BCプレース