2017年11月16日 第46号

第58回海外日系人大会が10月23日から25日まで、東京で行われた。同大会では以下の大会宣言が採択された。

TOKYO 2020に向け日系社会は日本との新たな連携を提案します

私たち、第58回海外日系人大会(2017年10月23日〜25日開催)に世界各地から参集した日系人は、『TOKYO 2020に向け日系パワーを結集!』を総合テーマに3日間にわたり討議し、以下の7項目からなる決議を本大会の成果として宣言いたします。

  

1・日系社会との連携に関する日本政府の取り組みに一層期待します

 本年3月に外務大臣の下に「中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会」が設置され5月に報告書が提出されました。海外移住審議会が2000年12月に最終意見を提出して以来17年ぶりの日系社会に関する提言でした。日本政府が、日系社会の変容について認識し、改めて日本と海外日系社会の在り方について向きあったものと感謝します。同報告書は、中南米日系社会を念頭においたものですが、これまで「移住」の延長線上でとらえられてきた日系人・日系社会の重要性を再確認し、「協力」から「連携」へ比重を移すべきであるとの考え方に大いに賛同いたします。1・地域で日系社会が築いた信頼を継承し発展させる、2・若い日系社会のリーダーたちとの絆を深める、3・日系人が誇りを持てる日本をつくる取り組みを通じて絆を強化する、の3つの基本的な考え方は、中南米のみならず北米、アジア、ヨーロッパの日系社会と日本の関係緊密化の共通基盤となります。日本国内に在住する日系人子弟の教育に力を入れることも欠かせません。いまこそ「連携」をキーワードとした幅広い取り組みが全世界の日系人・日系社会との関係において進められることを期待します。

 

2・東京オリンピック・パラリンピックに向け、スポーツの新たな連携を提案します

 昨年、世界最大の日系社会を擁するブラジルで、リオデジャネイロ・オリンピック、パラリンピックが開催され、五輪旗の東京へのバトンタッチに全世界が注目しました。TOKYO 2020は、日本と日系社会が様々な分野で連携を深めるチャンスです。

 中南米日系社会は、スポーツを通じて次世代へ文化の継承を促し団結を図ってきた伝統があり、南北アメリカ大陸の日系人が横断的な親睦を図る「国際日系親善スポーツ大会」も2018年のチリ大会で23回を数えます。またスポーツの世界では早くから日本の指導者が中南米に渡り、日系人の選手を育てたり、その国の競技レベルを飛躍的に向上させたりした実績が数多くあります。こうした歴史と実績を踏まえ、国民体育大会やインターハイなど日本国内の大きな競技大会に、海外日系人の参加を可能とする制度を新設するよう提案します。日本の地方自治体と各国の県人会など日系団体との交流を促す副次的な効果も期待できます。また、国際化に向けた農業の在り方の提言、対日観光を増やすための提言など、TOKYO 2020に向け、日系社会は日本のために新たな連携を提案していきます。

 

3・海外日系社会は引き続き日本の文化発信に努めます

 日本政府が海外に開設する日本の情報発信基地「ジャパンハウス」がブラジルのサンパウロに本年5月にオープンしました。先の有識者懇談会の「報告書」では中南米だけでも日系社会の主要行事は年間200件以上にのぼり、参加者数は延べ200万人以上に達すると報告されています。今や、日系人の行う日本祭り等のイベントの来場者の多くは非日系人であり、主催し組織する側でも多くの非日系人が活躍しています。移住一世世代より受け継いだ伝統を独自に発展させ継承してきた日本文化と、現在の日本が発信したい最新の日本文化の双方において、日系社会はその発信の役割を担うことが可能です。海外日系社会はクールジャパンの魅力も各国社会・国民に発信し続けます。

 

4・日本のビジネス戦略や国際協力に日系人の活用を求めます

 居住国の言語や文化を身につけ、多文化が共生する社会で生きてきた日系人は、居住国の政治、経済、教育等、社会のあらゆる分野に進出すると同時に、それぞれの業種で、また日系人同士で、幅広い人的ネットワークを構築しています。また1990年代から顕著になった日本へのデカセギ現象による新たな人の往来は、居住国社会において日本に対するより詳しい知識や興味を掘り起こしたと言えます。

 日系人が日本文化を背景とした新たなビジネスにチャレンジし、居住国や日本に限らず世界各地で豊かな経験を生かして活躍している例も数多く見られます。日本企業の海外ビジネス展開や日本政府による国際協力において、高度人材としての日系人の総合的な能力を積極的に評価し活用するよう望みます。さらに日本企業が日系団体を含む現地の社会貢献に力を入れるなど、日本と日系社会がWIN・WINの関係となる連携がさらに進むことを期待します。

 

5・TOKYO 2020へ向け、日系ユースは新たなネットワークを構築し、日本との架け橋になります

 私たち日系ユースにとって「TOKYO 2020」は、母国において日本への注目が高まると同時に自身の日系人としての資質を生かし、そのアイデンティティを世界に発信する良い機会と捉えています。

 日系人として生まれ育った私たちは、母国と日本、両方の文化の相違点と共通点を認識しており、お互いの特徴を生かし架け橋となることができます。我々ユース世代がまず取り組むべきことは、我々自身のネットワークを構築することであると考えます。先輩方が、移住先国で取り組んできた、相撲、運動会、野球などのスポーツは、次の世代へ日本文化の継承を促すものでした。それは、国際日系親善スポーツ大会や、パンアメリカン日系人大会等に結実しました。インターネット社会で展開される「TOKYO 2020」は、日系人としての意識を持たない若い世代に日系人としての意識、日本への興味を喚起し、非日系も含めネットワークに取り込んでいくことが可能です。日系ユースは、2020に向けた日系社会との連携の一案として、世界で日系ユース・ネットワークの構築に努め、独自の「TOKYO 2020」を発信します。

 

6・日系四世への新たな在留資格付与に十分な配慮を。また重国籍の容認を求めます

 日本政府が、日系四世世代にワーキングホリデーを念頭に置いた新たな在留資格の付与を検討されていることを歓迎します。若い世代が自らの目で日本社会を体験すること、および日本社会が海外日系人の存在について認識を深めることの意義は大きいと考えます。同時に日本政府が日本語能力を受け入れ条件としていることに理解を示します。単に少子高齢化による労働力不足を補うためだけに、単純労働作業に埋没してしまう事態は避けなければなりません。期間は3年とすることが検討されているようですが、日本と居住国との架け橋となる人材育成に資する制度設計を望みます。また、ドイツ、イタリア、スペインといった移住者送出国が取っている重国籍容認制度は、移住先国との間の若い世代の移動やルーツ意識の喚起に貢献しているという報告があります。健全なアイデンティティを持つことを助けるため、出生国や居住国の国籍を保持したままで、日本国民として認めるよう重国籍の道を開くことを政府に求めます。

 

7・来年のハワイ移住150周年に日系社会のレガシーを再確認し次の世代へ繋ぎます

 2018年は、明治維新から150周年にあたり、ハワイへ最初の集団移住が行われた日本の海外移住150周年でもあります。これを記念して第59回海外日系人大会はハワイで開催されます。

 多くの日系人のレガシー(歴史的遺産)が残るハワイでの開催が、各国で日系レガシーが再認識され次世代へ引き継がれる良い契機になると同時に、日本と海外日系社会間、そして海外日系社会間の連携を深める有意義な大会となることを期待します。そのためにも各地の海外日系人、特に若い世代の一層の参加を望みます。

以上

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。