2017年11月16日 第46号

リメンバランスデーの11月11日、バンクーバー市のスタンレーパークにある日系カナダ人戦没者慰霊碑の前で、戦没者追悼式典が開催された。

 

日系カナダ人戦没者慰霊碑

 

 式典が開始された午前10時40分には、退役軍人やその家族、関係者が慰霊碑を取り囲むように参列した。

 司会進行は、曽祖父が第一次世界大戦に従軍したという日系四世のジャスティン・オルトさん。はじめにNAV(National Anthem Volunteer)コーラスによる「O Canada」が合唱され、バンクーバー日系人合同教会の坐間豊牧師がスピーチを行った。2分間の黙とうのあと、トランペットの吹奏に続きバグパイプによる哀歌が演奏され、アイリーン・キタムラさんとデビッド・ミツイさんの朗読があった。

 そして岡井朝子在バンクーバー日本国総領事をはじめ、16団体の代表による花輪の献花が行われ、式典の最後に「God Save The Queen」をNAVコーラスが唱歌した。

 約30分の式典が終わり小雨が降り出した頃には、参列者が次々とポピーのバッジを慰霊碑台に供え、祈りを捧げていた。

 午前11時半過ぎからは、同パーク内のクラブハウスでレセプションが開かれ、日系カナダ人兵士による戦時中の歴史などがスライドや写真で紹介された。

 

 第二次世界大戦に従軍した父親を持つ日系三世のデビッド・イワアサさん(69)は「父はカナダ軍兵士としてヨーロッパで戦い、数多くの辛い経験をしましたが、無事生きて帰ることができました。しかし戻ってから同じ日系カナダ人から『日本兵を殺せるか』と質問を受けたそうです。彼は『日本兵はカナダには来ないよ』と答えてかわしました。私は迫害を無くして弱者を守るため、最後の手段として戦うことも必要だと思います。もちろん、まず平和であるため戦争を避ける努力はしなければなりませんが」と言葉を選びながら、感慨深く語った。

 

 留学で日本から来ている柴田瑞みずき(20)さんは「大学の授業で、リメンバランスデーの式典のことを紹介されたので参加しました。もっとおごそかな内容だと思っていましたが、実際に見てみると和やかな雰囲気でした。いろいろな人種や年齢の人たちが集まっていたのも、自分のイメージとは違いました。今の日本については、朝鮮半島の問題もあって不安です。そんな中で憲法9条を変えようという動きもありますが、平和を守るために私は反対です」と話した。

 バンクーバー在住の大学生・饗あいば場源さん(18)は「ここに2年住んでいますが、今まで参加したことがなかったので今日は来てみました。ソーシャルスタディーの授業で、戦争をすることで軍需産業などが利益を得るような経済効果があることも学び、多くの人命が犠牲になって成り立つ社会構造はおかしいと思いますし、嫌なことです」と意見を述べた。

 日本から来た留学生の高橋れふあさん(19)は「リメンバランスデーもカナダ文化のひとつなので、戦争について考えるためにも参加しました。日本では毎日ニュースで北朝鮮問題が報道されていますが、日常化しすぎて『本当には起きないだろう』と考えている人が多いような気がします。両親が米軍に関係する仕事をしているため、もっとシリアスな状況にあると私は聞いているので、もっと真剣に考えるべきだと思います」と日本の現状についても語った。

 

献花団体リスト
◎日系カナダ退役軍人 第9部隊
◎S-20及び二世在郷軍人会
◎在バンクーバー日本国総領事館
◎全カナダ日系人協会(NAJC)
◎日系文化センター・博物館
◎RCMP 王立カナダ騎馬警察
◎バンクーバー市
◎バンクーバー市警察
◎バンクーバー市公園管理局
◎グレーターバンクーバー日系市民協会(JCCA)
◎バンクーバー日本語学校
◎BC浄土真宗仏教寺院
◎日系カナダ人キリスト教教会
◎金光教教会
◎生長の家
◎隣組
(敬称略・順不同)

(取材 古川 透)

 

花輪を献花する岡井朝子在バンクーバー日本国総領事

 

式典に参列した退役軍人や関係者

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。